「はい、これ。約束してたやつね。」
親友の市川奈央が、バーガーショップで美織に袋に入った物を手渡した。
「極寒冷地使用にちゃんとしといたって、お兄ちゃん言ってたよ。」
市川奈央が持って来たのは、美織が市川奈央の兄に頼んでいた、撮影用ドローンを改造したものだった。
「ほんと!?ありがと。お兄さん、ほんと凄いね。お父さんが普通より異常に寒いって言ってて。探索者は耐えられても、機械が耐えられない可能性があるって言ってたんだよね。」
せっかくスキルの為に配信の許可がおりたのに、撮影用ドローンが耐えられなくては意味がない。だから対応出来るよう改造出来ないかと、頼んでいたのだった。
上位の探索者は、耐性を得ることや、鍛錬による自身の肉体の強度を上げていること、また魔力を体内で練り上げることで、ある程度深部体温が下がることを防げるが、機械はそうはいかない。
暑過ぎても寒過ぎても動かなくなってしまうのだ。海外の探索者たちの中で、ダンチューバーをしている面々は、撮れ高の為にドローンを特殊改造している人もいる。
それを専門とした会社などもあるが、依織をして異常過ぎるとされる気温に耐えられる程の魔改造を施せるとなると、魔道具師のスキルレベルがかなり高くないと無理である。
市川奈央の兄、光博は、そんな熟練度の高い魔道具師の1人だ。大学生だが、既にあちこちの国からスカウトが来ているらしい。
依織の作った魔道具のメンテナンスも担当してくれており、本人的には美織と関わったことで、スキルレベルがガンガン上がっていくので、むしろ積極的に依頼して欲しいと言っているらしい。
「あ、でね。今回ダンジョンゴーレムの核を使わせてもらったでしょ?それで新たな機能が追加出来たって言ってたよ。」
「へえ、なに?」
「なんと!ダンジョンの壁をすり抜けるの!しかも美織と並走出来るスピードが出せるようになったんだって!いっつも美織が走ると置いてけぼりだったでしょ?」
普段美織がダッシュをすると、ドローンは後からついてくることになり、ドローンが追いつくまで討伐を待っていたのだが、これからはそれもなくなるというわけだ。
「壁をすり抜けて並走するとか、美織にしか出来ない配信が出来るようになるね!
あー、楽しみ!」
「確かに!そんなの人類史上初かも?ちょっとドローンのお披露目配信を先にやろうかなあ。壁の中を映せるとか面白そう!」
美織は嬉しそうにそう言った。
「あとね?自立型のゴーレムを手に入れたじゃない?なんかどうもそれとリンクしてるらしくて──ゴーレムを出してれば、ゴーレムを通じて美織のスキルをドローンが使えるようになりそうだから、1度試してみて欲しいんだって。」
「え?そうなの?ていうか、それってゴーレムも、私のスキルを使えるってこと?」
「お兄ちゃんいわく、ゴーレムって魔物特有の魔核以外に、体内に命令を与えて実行する為の、いわゆるコアって呼ばれるものが内臓されてるのは知ってる?」
「うん。生命のもとっていうか、そこに体内の魔力が込められてるんだよね?」
「うん。ゴーレムの核にもそれがあって、そこに書かれている、実行出来る命令を読み取るところから、ゴーレムの核を加工することになるらしいんだけど。」
市川奈央はそこまで言ってハンバーガーをぱくついた。
「その過程で使役者のスキルや身体能力をコピー……っていうのかな、出来る能力が備わってるタイプのやつだってことがわかったみたい。本人の劣化版になるみたいだけど。」
「使役者のスキルや身体能力をコピー……。」
「ゴーレムを人に近付けようっていう研究があるらしいんだけど、それのもとになった考えが、そういうタイプのゴーレムがいるからが始まりなんだって。つまり、ミニ美織ってことよね。それってすごくない!?」
「うん、そうだね、凄い。」
最初の頃にゴーレムがいたら、どれだけ楽だったろうな、と美織は考えながら言った。
自分が2人いるようなものだ。もちろん廉価版だと言うから、自分ほどの力は出せずとも、それでも今はちょこがいるが、基本ソロの自分からすると、ありがたい能力だった。
「ドローンは加工しちゃってるから、ゴーレムの更に劣化版の能力しか使えないみたいだけど、おかげでめちゃくちゃ丈夫に出来たってお兄ちゃん言ってたよ。美織の体が化け物なおかげだね!」
「化け物ってなによ〜。」
「へへへ。」
小突く真似をする美織に、頭をかばう真似をしながら市川奈央が笑う。
「ともかく、1度使って状態を見て欲しいってさ。調整する必要があるか確認したいからって。」
「わかった。配信で1度使ってみるよ。」
美織はそう言ってうなずいた。
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遅くなりました汗
あんなに暑かったのに、急に寒くなってびっくりです。
ころころ気温が変わられると、だるくなってしまってしんどい汗
ちょこには未だに敬語ですが、付き合いの長い市川奈央にはタメ口な美織。
ちょこに知られたらひと悶着あることでしょう笑
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