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第152話 ダンジョンコアの調査

「結界を壊す道具が尽く壊されただと!?」

 ダンジョン協会東京支部内は揺れていた。

「──ダンジョン協会内部に、内通者がいるということか。」


「このタイミングで世界中で同時にすべて壊されるなど、ありえないことです。それ以外考えられない。壁の内部にあった青い◆を、仮にダンジョンコアと呼称することを決め、調査を決めたタイミングでのこれです。」


「なんということだ……。ダンジョンは自発的に生まれたものではなかったということか?恣意的なものを感じるな。」


「現状調べられていない為わかりませんが、もし何者かが意図的にダンジョンを各国に設置したとなると、由々しき事態です。」

 会議室内が一斉にざわついた。


「今やダンジョンのない国は存在しない。そのすべてが何者かに握られているとなると、一斉にダンジョンブレイクする可能性は、夢物語ではありませんよ!」


「なんということだ……。これは最早我々だけの手に負えんぞ。」

「各国で足並み揃えて対応すべき、国家レベルの問題だ。」


「国はなんと?」

「結界を切る道具を再作成し、早々に調査するよう、とだけ……。」


「簡単に作れるくらいなら、こんなことになってはいない!」

「気楽に言ってくれますよね……。」

「命令するだけなんだから楽なもんですよ。そもそもの数が少なかったというのに。」


「──まだ1つだけ、残っています。」

「なんだと!?それはどこに!?」

「高坂依織の娘、高坂美織が持つ剣です。あれだけは破壊されずに残っていると、高坂依織より報告がありました。」


「“異界の門”に続き、彼女に協力を仰ぐ他ないのでは?」

「いや、高坂依織に行かせましょう、もともと彼の作った魔道具と聞いています。」


「高坂依織には、壊された道具の代わりを制作依頼している。“異界の門”に長年入っていたことで、結界を切る魔道具の素材の元を今持っているのは彼だけだからな。」


「素材だけ我々が送って、現地で作らせては?高坂依織にはダンジョンに入ってもらえばいい。」


「無理だ。その過程で奪われる可能性がある。結界を切る道具が、輸送過程でいくつも壊されているんだ。高坂美織の剣が無事だったのは、高坂依織が自宅に設置していたシールドのおかげと、高坂美織の実力あってこそだ。今のダンジョン協会に、それと同等の守りは存在しない。」


「ではSランク冒険者を護衛につけて──」

「貴重なSランク冒険者を、国から一斉に離脱させろと!?もし敵の目的がそれだったらどうする!」

 短気な調査部の部長がテーブルを拳で叩く。


「魔道具を造りたい国から、高ランク探索者をよこさせればいいのでは?我が国よりも多数のSランクを抱えているでしょう。」


「それは既に依頼済みです。ですが、完成した魔道具を引き取りにこさせるのが目的です。高坂依織の作り方で、“異界の門”の素材を使って結界を切る魔道具を作れる人間がいないらしいのです。現状、結界を切る魔道具を作れる素材を持ち、それを使いこなせるのが、高坂依織だけというわけです。」


 開発部の部長が資料を手にそう言った。

「武器を借りることは出来ないのですか?」

「血縁者しか使えない縛りを、高坂依織が設定して作成したらしいからそれは無理だ。」


「ではやはり、高坂美織に依頼するしかないか……。またしても高校生に……。」

 盛大に溜息をつく。会議に参加している全員が、それは同意見だった。


「ダンジョンコアと思わしき物の調査です。最悪ダンジョンブレイクの可能性もある。彼女だけでは危険です。護衛をつけましょう。せめてAランクを何名か。」


「そうだな……。そうするしかあるまい。ダンジョンコアの調査は急務だ。新たな魔道具が完成する前に、なんらかの事前調査は進めなくてはならないだろう。」


 結果として、Aランクの探索者を補佐にすえることで、美織にダンジョンコアの調査をさせることが決まった。


「──私が調査……?」

「ああ。本当ならお父さんもついて行きたいところだが、壊された分の魔道具を作れるのが、今はお父さんしかいないらしい。」


「お母さんには内緒にしないとだね。」

「……だな。俺が帰ってきたばかりなのに、美織をそんな危険な調査に向かわせるとなったら、お母さん卒倒しちまうよ。」


 依織は髪をかきあげて頭をおさえた。

「Aランク探索者が何名かサポートに回るらしいから、危険なことがあったらすぐに逃げてくるんだぞ。最悪ダンジョンブレイクが起きても、倒すことは可能だからな。」


「わかった。ピョコタンもいてくれるし、なんとかやってみるよ。」

 美織はこっくりとうなずいた。


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