「あっ、あああああっ!!」
「耐えるねえ。暗示かなにかでロックがかけられてるのかな?……プラス洗脳も軽くかけられてる、みたいだね。」
武藤智春は柊奈々に洗脳をかけながら、楽しげに笑っていた。
「まあ、楽しみの時間が長くなるだけだから、僕は一向に構わないけどね?」
ビクビクガクガク震える柊奈々の体を見ながら、洗脳の力を強めていく。洗脳のスキルは最悪廃人にしてしまうこともある、強力なスキルだ。強めたり弱めたりして、心身の耗弱を促すことで、読心スキルで心の中を読みやすくするのだ。
もちろん洗脳や暗示をかけられていない相手であれば、洗脳スキルだけで情報を引き出すことが可能なのだが、大抵の場合かならずそのどちらかが、もしくは両方がかけられていることが多いのだ。
個人が単独で悪事に手を染めるケースもなくはないが、大抵がいずれかの組織や、他国から送り込まれた人間であることが殆どで、そういった場合、当然命惜しさに裏切る前提で人を送り込んでいるということなのだろう。
また読心スキルだけでは、情報漏えいしないように暗示をかけられていたり、話した場合自死を選ぶように、あらかじめ他者から既に洗脳スキルを使われていた場合などは、心の中に入り込むことが難しい。
そのため洗脳スキル持ちの武藤智春に、それを緩めてもらう必要があるのだ。だが既にかけられた洗脳をとくことは難しい。
出来るのは、更なる洗脳で上書きをすることだけ。洗脳は状態異常とは異なる為、明確な解除方法がないのだ。そこは経験がものを言う。
ハッカーがホワイトハッカーとして転職することがあるように、趣味で洗脳スキルを磨いていた武藤智春が、スカウトされてこの仕事についているのも、時代というものかも知れなかった。
「あなたの出身地は?」
春山美樹が柊奈々の右横から頭に手のひらを当てつつ、頭を振る。
「なにも聞こえません。」
「暗示や洗脳に抵触しなさそうな単純な質問でも答えないね。⋯⋯そろそろ体から崩していこうかな。」
そう言って目を細めて笑う武藤智春に、またか、とでも言いたげに、呆れたような視線を向ける春山美樹。
「それが一番のお目当てなんですから、さっさとやってくださいよ。」
「そんな目で見ないで欲しいなあ。ここまでやって崩れないんだから、仕方がないじゃない?」
「わかってますよ。手順をじゅうぶんに踏んだのは理解していますから。」
「⋯⋯じゃ、探していこうか。」
そう言って、武藤智春は柊奈々の体を、何かを探るように人差し指の背でなぞっていく。そしてそれが、腰から尻の割れ目の直前あたりで大きな反応があった。
「見ーつけた☆」
ひときわ楽しそうにそう言うと、柊奈々の耳元に唇を寄せて、囁くように言う。
「洗脳の最中は、脳の感覚がバグるんだ。⋯⋯どういうことかって言うとね?すべてのリミッターが外れて、特に快感と痛みの感度がおかしくなる。こんな風に、ねっ!」
「あああああああああ!!」
柊奈々の腰から尻の割れ目のあたりを手のひらでなぞると、恐怖から逃れようとするかのような悲鳴を上げた。
「強すぎる快感と強すぎる痛みは、両極端だからこそ同一な刺激として、脳を焼く。痛みを与える為には体に傷を残すことになるから、調節が難しいんだけど、快感であれば触れなければ刺激を与えないから、止めたいところで自在にコントロールが可能だ。」
そう言いながら、腰を撫で続ける。
「イッてもイッてもイキたくなる病気の人を知っているかい?人間がもっとも死にたくなる瞬間はね。イッてもおさまらなくて、イキ続けなくてはならない時さ。どれだけイッても性欲がおさまらないだろう?実は快感こそがもっとも拷問に向いているんだ。君のかけ金を強制的にはずさせてもらうよ。」
苦痛と恐怖を叫ぶ声の中に、一瞬交じる快感を感じる声。だがその殆どが苦痛を訴える声だ。これこそが、武藤智春が聞きたかったもの。そして、かけ金を外すためのスイッチ。
全身が真っ赤になり、白目を向いて椅子にだらりともたれかかって天井を向いた柊奈々の頭に、春山美樹が手を触れる。
「あなたの出身地は?」
しばらく無言になる春山美樹。
「⋯⋯外れました。」
それは、読心によって、心の声が聞こえたという意味を示す言葉。
あなたの本名は?目的は?春山美樹が次々と柊奈々に質問をしていく。素直に心の声が聞こえている証拠だ。
「どうしましょう、武藤さん⋯⋯。」
「どうしたの?」
困惑したような表情を浮かべる春山美樹に、腰に手を当てて不思議そうに首を傾げる武藤智春。
「バンブリカなんて国⋯⋯。聞いたことがありません。この人はいったい、どこから来たんでしょうか⋯⋯。」
と春山美樹は呟いたのだった。
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