エミとアレックスは小屋に到着した。近くで見ると、その小屋はさらに荒れ果てているように見えた。窓は割れ、ドアは片側がぶら下がっており、屋根は崩れそうだった。

「ここに誰か住んでるのか？」アレックスは懐疑的にその構造を見ながら尋ねた。

「わからないけど、普通の人じゃないことは確かだね。」エミは腕を組みながら場所を見回した。

エミは慎重にドアを押して開けると、ギギッという音が静かな通りに響いた。中はほこりだらけで、クモの巣と壊れた家具が散乱していた。誰かがここに住んでいる様子はなかった。

「これ、冗談でしょ？」エミは周りを見渡しながら言った。「何もないじゃない。」

アレックスはかがんで床を観察した。最近引きずったような跡が部屋の隅に続いていた。

「誰かがここにいたけど、長いことはなさそうだ。」とアレックスは言った。

エミは苛立ちながら手を伸ばした。彼女の手のひらには小さな金色の光の球が現れ、部屋を温かい輝きで照らした。

「この魔法が照明以外に何か役立つか見てみよう。」エミは呟いた。

光は強くなり、球は床に向かって浮かび上がった。すると、床の隙間から微かな輝きが現れ、隠された罠を浮き彫りにした。

「アハ！ここで何かおかしなことが起きているのはわかってた。見て、アレックス。」

アレックスが近づくと、床が地下への入口を開けているのが見えた。

「ここに入るべきだと思うか…？」

「もちろん。」エミはすでに膝をついて、床板を持ち上げようとしていた。

「もし罠だったらどうする？」アレックスはその開口部を警戒しながら尋ねた。

「罠だとしても、調べる価値はあるわ。それに、面白いでしょ？」エミはアレックスを見ながらにっこりと笑った。その笑顔には、アレックスには選択肢がないことが示されていた。

仕方なく、アレックスはため息をつき、エミに続いて地下へ降りて行った。

見つけた洞窟は広く、壁に取り付けられた松明が灯っていた。空気は湿気を含んでおり、カビの匂いが漂っていたが、何よりも目を引いたのはその装飾だった。壁には奇妙なシンボルが刻まれており、奥には赤い光を発する祭壇があった。

「これは普通じゃない…」アレックスは呟いた。

「間違いなく、儀式の場所だね。あのシンボルを見て。」エミは壁のマークを指さして言った。「おそらく、ギルドで言ってたあの宗派のものだ。」

突然、足音が近づいてくるのが聞こえた。エミは光を消し、二人は近くの岩の陰に隠れた。

黒いローブを着た男たちと女たちのグループが洞窟に入ってきた。彼らの顔はシンプルなマスクで覆われており、数人の人々が縛られて鎖で繋がれているのが見えた。

「誘拐してる連中だ！」エミは拳を握りしめて囁いた。

「素晴らしい… それで、どうするつもりだ？」アレックスは低い声で尋ねた。エミが何か考えているのはわかっていた。

「簡単よ。止めるだけ。」エミは言った。

「もちろん…」

アレックスが何か反論する前に、エミはすでに光の魔法をチャージしていた。眩い閃光が洞窟を照らし、カルト信者たちを一瞬目くらましした。

「その人たちを今すぐ解放しなさい！」エミは決意を込めて叫びながら前進した。

アレックスは渋々、エミを強化する能力を発動した。彼女に向かって指を向け、速度と反射神経を強化

することに集中した。

「いつもこうやって、僕を巻き込むんだ…」アレックスは呟きながら、影から支援する準備を整えた。