数分間の戦闘で形勢が有利に傾き始めたかと思われた矢先、不意の出来事が彼らを襲った。アリアの影の生物が一瞬で消え去り、EMIの光魔法も同様に消滅した。突然の事態に、チーム全員が唖然とした。
「一体何が起きてるの?」EMIは混乱した声を上げた。その時、バンディットたちのリーダーが混乱の中から姿を現した。
彼の腕には、負傷して意識を失った女性が抱えられており、その顔には歪んだ満足そうな笑みが浮かんでいた。
「お前たち、本当にここで勝てるとでも思ったのか?」と、男は嘲笑しながら女性を地面に投げ捨てた。その仕草は、まるで彼女が物に過ぎないかのようだった。
EMIは歯を食いしばり、体が怒りで震えた。「お前なんて、ただの化け物だ!」
だが、魔法が使えない状況で、戦いは次第に厳しくなっていった。バンディットたちの数は圧倒的で、EMIはなおも肉体だけで戦おうとしたが、アリアとアレックスはより脆弱な立場に追い込まれていった。
アレックスはアリアを自分の背後に隠し、彼女に向かう攻撃を防ぎ続けた。その間も、彼の頭の中では必死に解決策を探し続けていた。そして、リーダーの手元に光るものを見つけたとき、何かが彼の目に止まった。それは、紫と黄色が入り混じるような不気味な輝きを放つ指輪だった。
「...あれは...」アレックスは目を細め、指輪を注視した。その指輪は、EMIやアリアの魔力を反射しているように見えた。
「純粋な魔力を無効化する抑制装置か...」と彼は低くつぶやき、結論にたどり着いた。指輪は純粋な魔力を無効化する能力を持っているようだが、完全に魔力に依存しない技術には影響しない可能性があった。
その考えから着想を得たアレックスは作戦を思いついた。彼はアリアの方へと少し振り返り、誰にも聞こえないように声を低くして話しかけた。
「アリア、俺を信じてくれ。」
「何を考えているの、アレックス?」アリアの声には緊張がにじんでいた。
「あの指輪は純粋な魔力しか無効化できないんだ。俺の能力は魔法じゃない。補助技術だ。それを使ってEMIの魔力を一時的に増幅すれば、指輪が耐えきれなくなって壊れるかもしれない。その間にリーダーを引きつけるから、君はあの男に近づいて指輪をはめた手を切り落としてくれ。」
アリアは戸惑いの色を見せたが、アレックスの目に宿る決意を見て、ついに強く頷いた。
「わかった。絶対に失敗しない。」
アレックスの指示を受け、2人は最後の希望を胸に戦場を再び駆け抜けた。
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アレックスは、まだバンディットたちと肉弾戦を繰り広げていたEMIに近づき、急いで作戦を説明した。最初は戸惑ったEMIだったが、状況の厳しさを悟り、渋々ながら頷いた。
「わかった。でも、死なないでよ、アレックス。」と、EMIは心配を隠そうとするように軽い口調で言ったが、その声には不安が滲んでいた。
アレックスはEMIの肩に手を置き、自分のサポート能力を最大限に発動させた。しかし、これまで以上に力を引き出すことは彼自身にも大きな負荷をかけた。淡い輝きがEMIを包み込み、彼女のエネルギーが急激に高まっていった。アレックスの限界を超える行為にもかかわらず、指輪がその魔力を抑え込む中、彼は全力で能力を増幅し続けた。
「EMI、今だ!」とアレックスが叫ぶと、EMIは力強い叫び声を上げながら、アレックスの増幅した魔力を解放した。その圧倒的なエネルギーが爆発的に広がり、リーダーの指輪は耐えきれず、火花を散らしながら震え始めた。
その間、リーダーが指輪の制御に必死になる隙をついて、アリアは影に溶け込むようにして接近した。彼女の手に握られた短剣は、わずかに残る魔力を帯び、微かな光を放っていた。
決定的な瞬間、アリアはリーダーの死角から飛びかかり、正確な動きで指輪をはめた手を切り落とした。リーダーは苦痛の叫び声を上げ、指輪が地面に落ちると同時に、強力なエネルギーの波が放たれ、残された魔力の抑制効果を完全に打ち消した。
指輪が破壊されると、EMIは完全に魔力を取り戻し、その青いオーラが強く輝いた。彼女は強力な魔法攻撃を放ち、残りのバンディットたちを一気に無力化した。
息を切らしながらも、アレックスは作戦が成功したことに安堵の表情を浮かべた。彼は埃と汗にまみれたアリアとEMIの方に振り返り、その姿が勝利の証であることを実感した。
「よくやった、み
んな。」と、疲れた笑みを浮かべながら言った。
だが、戦いはまだ完全に終わったわけではなかった。