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第41話 朝食のとき

 今日は十時に家を出るというので、俺は七時半に起きることになった。

 その時間まで想真が離してくれなくて、起きられなかったっていうのが正確なところだけど。


「まだ寝てようよ」


「無理だっての、掃除も洗濯も、メシだってつくんなきゃなんだから」


 そう言ってなんとか想真から逃れて俺は、寝室を出て自室で着替えた後、顔を洗いに洗面所へと向かった。

 今日の朝食はどうしよう。

 どうも事前にレシピを決めておくのが苦手で、冷蔵庫の中身を見て決めることが多かった。

 ご飯を炊かなかったから今日もパンだ。あ、買ってこないともう終わるな。

 それと温めるだけのハンバーグと、卵とベーコンでオムレツにしよう。それにカットキャベツ。昨日、パンはピザトーストにしたから今日は何がいいかな……

 スマホでレシピを調べつつ、俺は朝食の用意をする。

 今日は買い物に行かねえと。あとで何買うかメモしよう。

 レシピとにらめっこしつつ、俺は卵をゆでてたまごサラダを作る。焼いたトーストに挟んで、包丁で半分に切った。

 調べていたらホットサンドって出てきたけど、美味しそうだったなぁ。

 レシピ調べてると、色んな器具や材料が出てきて興味をそそられる。

 皿に料理をのせて運んでいると、想真が起きてきた。


「おはよう、俐月」


 眠そうだけど、ちゃんと服を着替えている。


「おはよう」


 俺は答えてコーヒーマシンにカフェオレをセットした。

 その間に想真は顔を洗いにいき、すぐに戻ってくる。


「今日はたまごサンド?」


「うん。あんまり材料がなかったから簡単になっちゃった」


「簡単じゃないでしょー。たまごゆでないとだし、焼いたりとかもしてるんだから」


 言われてみればそうか。


「確かにそうだな」


「うんうん。俐月、いろんな料理にチャレンジしててすごいよねー」


 また褒められて、悪い気はしない。でも恥ずかしくって俺は、あいまいに頷くしかできなかった。


「う、うん」


 それはそそくさとキッチンに戻り、飲み物とカップスープを用意して、食卓へと運んだ。

 今日も想真と一緒に朝食を食べる。

 当たり前で、でもずっと当たり前じゃなかったもの。

 向かい合って食卓に腰かけ、手を合わせる。


「いただきます」


 声を合わせて言い、俺はパンを掴んだ。

 まだ作れる料理、少ないんだよな。夕食は想真がいないこと、多くてなかなか作る機会がない。そうなると朝食メインになるけど、朝からがっつりは食べないからなぁ。


「なあ想真」


「うん、何?」


「ホットサンドメーカーって知ってる?」


「あぁ、うん。パンに具材挟んで焼くやつだよね」  


「そうそう。それつくる機械、買ってもいいかな」


 俺は想真の様子を伺いながら尋ねた。

 そうしたら朝食の選択肢が増えるし。

 すると想真は頷き言った。


「大丈夫だよー。月に渡してあるお金で足りる?」


 想真の言葉を聞いて、俺はほっとする。

 なんか人にオッケーもらうのって緊張するんだよな。


「金は足りるって。つうかちゃんと、いくら使ってるか報告してるじゃん」


 簡単に、ではあるけど俺は、想真に月にいくら食費でかかっているか報告している。

 想真に食費として月に十万を渡されているけど、使い切ったことは一度もない。物価が上がっているので、毎月半分近くは使っちゃうけど。余っていると伝えているのに想真は渡してくる金額を変えることはなかった。


「あのお金は食費や必要な物を買って大丈夫なお金だから、好きに使っていいよ」


「わかった、ありがとう、想真」


 あとでホットサンドメーカー調べてみよう。いや、駅前に家電量販店あったよな。ネットで頼むより店いって買った方が早いよな。

 考えてたら楽しくなってきた。


「あはは、そんなお礼いいって。それあったら俐月、ほかにも料理ができるようになるんでしょ?」


「うん。だからちょっと欲しいなって思って」


「大丈夫だよ。ホームベーカリーとか、欲しかったら言ってね」


 ホームベーカリーってあれだよな、パン焼くやつ。そっか。それあったら家でパン焼けるのか。そしたらパン、買いに行かなくて済むよな……


「ちょっと考える」


 俺はそう答えて、パンにかじりついた。 



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