「ご……なさ……ごめ……なさ……殺さないでぇ……」
生贄用の椅子に座らされても、まだ鳥頭はめそめそと泣いていた。
「これ、中ではM字開脚になって拘束されてるんだよな……」
ドン引きしながら、サラリーマンの猫多がつぶやく。
「そう、だと思う」
外からだとドアが閉まっていて、中はまったく見えないけれど。この中には、全裸でM字開脚をし両手足を拘束された状態の鳥頭がいる。
「しっかし、こんなところに隠し扉があるとはなぁ」
ロン毛で髭の筆川が、頭をボリボリと掻いた。隠し扉ではないが……。
しかし、コンクリート打ちっぱなしの薄灰色だけで構成された広い部屋の壁に一つだけぽつんと金属でできたドアノブがあるのは、なんだかすごく場違いな感じだ。
僕がドアノブを眺めていると、不意にそれに手が伸ばされ、ガチャガチャガチャ! と、ドアノブを何度か引いてドアを開けようと試みた男がいた。りんちゃんだ。
ドアは開かなかったけれど、
「やだぁ!! 殺さないでぇ~~~!!!」
中にいた鳥頭が怯えて取り乱した。
「ねぇ、なにやってんのヤンキーくん」
「いや……開くかなぁって思ってよォ」
「開くわけないじゃん」
呆れるホスト――屑山に、りんちゃんはムッとした顔一つ見せずに『そっか……うん、そうだよなァ』と納得したようにブツブツとひとり言を言っていた。
生贄用の椅子に生贄が座らされると、生贄のいる部屋――『生贄の間』と呼ぶことにしよう――は施錠されるのか。
いや、この部屋を最初に発見したとき、音を立ててひとりでに開いた。生贄が中に入るとき以外、常に施錠されているのかもしれない。
何はともあれ、拘束された生贄、開かない扉、鍵を持っているのはバリタチのみ。午後七時から翌朝午前六時まで生贄の間の扉を開けて生贄にどうこうできるのは、バリタチだけということだ。