目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

一日目:夜(~22:00)

一日目:夜(~22:00)①

 コンクリート打ちっぱなしの無機質な薄灰色の空間に囲まれて、時刻が分かるのは壁にかけられた丸いアナログ時計だけだ。


 今、時計の針は九時前を指している。



「あと一時間か。疲れたな……」

「うん」

 サラリーマン猫多の無意識に出た本音であろう言葉に、僕は短く返事した。







 そう、僕らはとても疲れていた。無理やりここに連れてこられ、いきなり始まった『バリタチ人狼デスゲーム』。


 無慈悲にも、参加を拒否したふくよかで丸刈りの男は殺され、今この広い部屋の中央にはらわたをぶちまけて横たわっている。


 そして、さっきの生贄投票で選ばれたツインテールの男――鳥頭は、全裸&M字開脚で両手足を拘束されて密室の小部屋『生贄の間』にいる。









「みなさーん! こっちに個室がありますよー!」

 声がして振り返ると、眼鏡をかけた学生の二階堂と大学生の宇佐霧がいた。



「ご丁寧にネームプレートが貼ってあるね」

 十個ある個室の扉には、一つ一つ僕らの名前が書かれたネームプレートが貼ってあった。


 目の前の扉には『黒崎 誠一郎くろさき せいいちろう』……僕の名前のネームプレートが貼ってあった。



「これ、剥がせるんすかねぇ」

「え、ちょっとま……」

 大学生の宇佐霧は、さっそく爪で僕のネームプレートをはがそうとする。


「爪が痛ぇ……」

 だが、断念したようだ。





 個室の扉にあるネームプレートは剥がせない。そうメモを取る宇佐霧を尻目に、僕はゆっくりとドアノブを回した。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?