部屋の内装は、ビジネスホテルみたいな感じだった。ただ一つ違うのは、窓がないということだ。打ちっぱなしのコンクリートに囲まれた、きれいに掃除された部屋の奥には、清潔なベッドが鎮座していた。その手前に、小さなサイドテーブルがある。
「あ、これかな?」
うさ耳ピエロマスクが言っていた、ベッド横にあるサイドテーブルのことだ。もしバリタチならこの中に『鍵の束』が、狩人なら『タブレット端末』が入っている。
宇佐霧は、サイドテーブルの引き出しを容赦なく開けようとした。
「待って待って待って!!」
ガコン! という音がしただけで、開かなかった。
「ここにダイアルがあります」
二階堂がサイドテーブルの下の方を覗き込んでいた。
「あ、ほんとだ」
よくそんなところ気づいたな。
「四桁の数字っすね。なんだろう……誕生日かな?」
「こらこら開けようとするな」
「おい! こっち来いよ!!」
いきなり部屋のドアが開いて、僕ら三人はびっくりして飛び上がりそうになった。
「ノックしてくださいよ~!」
二階堂がずれた眼鏡を直しながら、少し苛立ちの混じった声で言う。
「あ゛? 何回もノックしたのに開けなかったのはそっちだろ!」
ロン毛で髭の男――筆川は、呆れと少しのいら立ちが混じった様子で答えた。
何回もノックした? 全然、音なんて聞こえなかったぞ。