朝ご飯を食べに食堂へと向かうと、すでにりんちゃんと二階堂が一緒に食事をとっていた。
アッシュゴールドの髪にピアスをこれでもかと開けた両耳、キレやすい現代の若者代表(アラサー)の元ヤンりんちゃんと、黒髪に眼鏡でいっさい素材に手を加えていない真面目で見るからに優等生な二階堂くんの組み合わせは、とても奇妙に見えた。
「はよ出せや」
りんちゃんがキレ気味にそう言って、カップラーメンを啜ると、二階堂はおどおどした態度で小さい何か――お菓子の小袋か? を渡した。
「カッ、カツアゲ!!?」
思わず大きな声を出してしまい、二人が振り向いた。
「誠一郎、遅かったじゃねーか」
りんちゃんが僕を見て最初に口にしたのはこれだった。
「え?」
「メッセージ見たんじゃねェのかよ!」
何を言っているのか分からないという顔をして困惑していると、りんちゃんはお菓子の小袋を僕に見せた。
個包装のクッキーの小袋だ。昨日僕にくれた奴と同じやつ。彼が袋のうしろの面をこちらに向けると、油性マジックであれば二・三行文字が書きこめるスペースがあった。
現に、そこにはすでに文字が書いてあった。
『筆川はバリタチか狩人 引き出し触るの警戒』
なるほど。二人はこうやって情報を交換していたのか。
「お前なァ……。ほんまに何も知らないで来たんだな」
呆れて片手で頭を抱えるりんちゃんに
「ごめんって」
僕はちょっとうれしかった。嫌われていると思っていたから、今こうして普通に君と話せていることが。