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第50話 車もらったり、純金もらったり

 そういえば五十嵐五月の強みを忘れかけてはいたが、久々に思い出す出来事があった。


「五月……いや、五月さん。なんだいこれは?」


「メルセデス・ベンツです」


 現実はたまに非常識になるのなんとかしてほしい。


 俺の愛車の横に燦爛と光り輝くメルセデス•ベンツがあった。


 なにを言ってるのか分からねぇし、なんでこんなものがあるのか分からなかった。


 詳しく話を聞いたら、メルセデス•ベンツをおじさんから貰った物らしかった。


 どうも『一樹くんに走らせたらいつか人殺すので、免許取得頑張ってるんです』と飲み屋で話してたらポンッと渡してきたらしい……


「社長曰く、本当に使ってなくて腐らせてるだけだから。らしいので譲ってもらいました」


「怖いって……」


 他にもエピソードはある。


 二日前には純金の玉を持って帰ってきた事があった。


 五月によると、『バイト始めたいと思うんですけど、どれがおすすめですか?』とおじさんに聞いた結果、『これは私の金玉ダヨ。これでバイトしなくて済むネ』とか言い出して純金の玉を渡してきたらしい。


「この純金の玉とかどうするよ? なんかベタベタしてるし気持ち悪いんだけど」


「義妹さんにでも差し上げましょうか」



         ◇



「一応、確認。ウィンスタとかチックロックでフォローされてる有名人とか、関わりを持っている有名人を教えてくれるかな?」


「そうですね。直近ですと小栗旬乃介さんや、野球選手の不和倫太郎さんにご食事のお誘いを受けましたね」


 まだだ、まだ耐えれる。これは有名人同士の交流みたいなものだ。


「音楽家のクラリネットさんからピアノを譲り受けたり、不動産屋の社長から新築一軒家を貰ったり、ここ一カ月はそれくらいですかね」


 ピアノ……ああ、異常だよ。なんでこんな貢がられ体質なんだよ……


 でもそのピアノしらないぞ? 少なくとも俺の家には置かれて……


「新築一軒家!?」


 新築一軒家って、あの新築一軒家? えっ? なんそれ、新築一軒家ってなに? 新築一軒家ってそんなポンポン渡せる物だったっけ?


 理解を超えた現実に俺は強い偏頭痛を感じ、床から膝が崩れ落ちて、地に伏した。


 薄れゆく意識の中で、俺は悟った。これが現代社会の闇なのかと。


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