カフェの二階にある探偵事務所。入ると先程の四人組とヨボヨボのお婆さんがソファに座っていた。
「私の頼み事を聞いてくれないかね……?」
「んなぁ~。聞いたらなんか見返りとかあるんですか?」
そこの白銀髪の娘、図々しいな。
「もし私の願い事を聞いてもらえたらダイヤモンドを沢山くれてやるぞ」
「んなぁはっはっ! 交渉成立!」
探偵にさっきからムカつく娘の名前を聞くと、五十嵐芽衣と答えた。
ついでにその隣で紅茶を飲んでいるケモ耳は狐崎紗奈。羽をパタパタしながらフワフワと浮遊してる娘は鷲塩サツキ。
狐崎がお婆さんに疑問を投げかける。
「ダイヤモンドってなんですの?」
「ダイヤモンドは単一の元素からなる唯一の宝石で、通常約九十九%の炭素からできておるぞ。残りは、ダイヤモンドの本質的な化学組成ではない原子から成る一つ以上の微量元素を含んでいることがある。微量元素によっては、ダイヤモンドの色や結晶形状に影響を与える場合があるのじゃ」
お婆さん、ダイヤモンドに詳しすぎだろ。脳内に検索アプリでもつけてんのか?
「なるほど。それはすごいですわね」
「このダイヤモンドは私の孫が人工的に作ったんじゃが、その孫が行方不明になったんじゃ」
「行方不明……? それはまさか、行方が分からなくなったということですの……!?」
「そうなんじゃ……」
「そんな。行方が分からなくなったということは、どこにいるか分からないということになりませんの?」
「それが行方不明ということなんじゃ……」
「そんな。それでは最悪の場合、お孫さんは失踪したということもあり得るわけですわね!」
「だからそう言っとるじゃろう……」
「すみませんお婆さん。紗奈はこういう素直な子なの☆」
今、この空間で頼れるのは六花だけだな。鷲塩という子はずっと考えたまま、何も喋らないし。
「だが何故いなくなってしまったのか。おおよその目星はついておる……」
「目星? それはどんな星なのかしら? 火星の仲間なのかしら?」
お婆さんは狐崎の問いを無視して話を進め始める。
「私の孫は、人工物反対勢力に連れ去られたのじゃ……」
名前的に利権団体っぽい名称だ。
「人工物反対勢力ですわね。私も存じておりますわ」
「マジで!? 知ってるのお前!? 話を聞かせてくれ!」
「誰ですの貴方は? 別にいいですけど。確か、紅茶にかけると美味しくなるミルクだとか」
……六花でもいい。お婆さんでもいい。一回コイツ黙らせろ! 共感した僕がめちゃくちゃ恥ずかしい。『はえ~有名なんだ! じゃあ結構ヤバそうな組織なんだな!』じゃないんだって。
「なるほど。じゃあそれは多分違うやつじゃな」
お婆さんは何処か諦めたかの様に話を戻す。
「違うんですわね。なるほど」
「人工物反対勢力はこの世界の利権を握っている。言ってみればこの世界を裏で操っている黒幕というわけじゃな」
「ふむふむ、その幕は白ではなく黒というわけですわね」
狐崎黙っててくれないかなぁ。どうでもいい情報を流すな。
「分かったわ。つまり私たちが潜入して孫を連れ戻せばいいわけね!」
あっ、今日初めて鷲塩が喋った。
「孫をよろしく頼む……」
こうして俺たちの初仕事が始まった。