「わたくしは狐崎紗奈。知的好奇心旺盛ですの~。よろしくですわ~」
「お嬢様口調なんだな。よろしく」
「お嬢様口調……? それはつまり口調がお嬢様みたいということですの?」
もしかしたら狐崎は、無駄なところで引っかかる系のお嬢様なのかもしれない。
つまり、当たり障りのない会話をすればマトモな奴ってわけだな。
「そういうことだ。さて最後の一人は……」
「最後の一人? わたくしが最後の生き残りなのですか? 誰か~! 誰かいませんの~!」
……前言撤回。
マトモじゃねえわコイツ。話が通用しそうに見えて話が通じないタイプ。ペースに合わせてたらコッチが狂っちまう。
気を取り直して最後に話しかけるのは、『んなぁ』と言いながら日向ぼっこしている白銀髪娘。
大丈夫だよな? 変な能力持ちだったり、一目惚れ体質だったり、進次郎構文の使い手だったりしないよな? マトモだよな?
「よう。僕は二俣愛斗。これから一緒にお婆さんの孫を見つけるための仲間になる。よろしく」
「んなぁ。メイは探偵さんから聞いてるよー。よろしくお願いしますっ」
一人称メイ? かわい子ぶってんな。女受けしねえぞそれ、やめた方がいいぞ。そう思った。
『一人称は私かあたしにしようか』と言えば『なんで初対面にメイの一人称指摘されなきゃいけないんですかっ? バカなんですか?』と返されるのが目に見えているので指摘はしなかった。
◇
「人工物反対勢力のアジトは札幌のビルの中にある」
今日初めて喋った探偵が地図を取り出しながら説明を始める。
「ウチの盗聴能力によると4階の一室で拷問が行われているみたい」
六花は人工物反対勢力幹部の思考を盗聴。それによって孫の在り方が分かった。
ていうか六花の能力、ミステリー殺しにも程があるだろ。思考盗聴とか犯人すぐ見つかるやん。ミステリーのチート能力じゃん。
狐崎は自衛隊から武器を強奪していた。最初、何を言っているか分からなかった。
単独で自衛隊の武器庫に潜入して、盗んで帰ってくるって正気じゃねえ。正気じゃなかったなそういや狐崎は。
窃盗罪と諸々罪重ねてんな。これから僕も罪を重ね塗りするつもりだから、人のこと言えないのだけど。
そしてサツキは……
「ここが人工物反対勢力のビルよ! 思いっきしぶっ放しちゃいなさい!」
「OK」
飛行能力を活かしてビルに接近。しかも僕を乗せて。
僕はロケランを手に取り、四階へぶっ放した。