「別れましょう」
「そ、そうかぁ……」
「このお家も出ていきます。さようなら」
バタンッと玄関が閉まる音と共に六花が出てきて、こんなことを言い出した。
「追いかけなくていいのお兄ちゃん? 五月ちゃん、これから無理するつもりだけど?」
「ああ、分かってる。けどこればかりは本人の意思を尊重しないとなぁ」
その時、窓の外から割れんばかりの歓声が聞こえてきた。
◇モブ•クリスティーナ目線
五月親衛隊支部でくつろいでいると、ため息を吐いた重国さんが部屋に入ってきた。
「由々しき事態で候。過激派連中は今頃どんちゃん騒ぎだわ」
「重国さん、何があったのですか?」
重国さんに事の顛末を尋ねてみると、坊ちゃんと五月様が破局したという噂が流れているとのことだった。
それも、その噂は信憑性が高いのだそう。
私は自身の耳を疑った。先日、好きすぎて嫉妬してしまうと懺悔室に訪れた五月様が、自ら別れを言い渡したなんて。
もしかしたら私の助言に従って、その結果が破局という形になったのかもしれない。
五月様にとって坊ちゃんは、信頼出来る相手じゃなかったのだろうか……
五月様がそう判断したなら、私達が口出す事ではない。
次の相手に期待するとしようと、私の中で結論付けた。そんな時だった。
「決めたわ。あたし今から小坂一樹に突撃してくるで候!」
重国さんが予想斜め上の事を言い始めたのは。
◇
「あたしは小坂一樹と五十嵐五月をカップルにしたくて穏健派を作ったの! それで終わって納得できないで候!」
「五月様の坊ちゃんの中ではもう終わった話ですよおそらく」
「オカマの底力舐めんじゃないわよ! 終わった話を始まった話にしてくるで候!」
説得虚しく、重国さんは出ていってしまった。おそらく坊ちゃんに拒絶されるか、やんわり断られるだろうが、どうなることやら。