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第57話 授業参観

◇ここは八乙女女子学園。在校生としては三年生小坂六花や二年生五十嵐芽衣がいる。


「なあナレーション。八乙女女子学園はここで合ってるか?」


◇合っていますよ。


「そりゃあよかった」


◇それはいいとして、当たり前の様にナレーションに話しかけないでくださいね。


「善処するよ」


 俺は小坂一樹。訳あって我が妹、小坂六花の授業参観を観ることになった男である。



         ◇



 その訳とは、俺の親が仕事で来れなくなったという、なんともありきたりな理由だった。


 それで俺が駆り出されたってわけ。まあ、こっちとしても都合は良かったのでいいのだが。


 授業参観と言っても、ただ教室を居るだけだ。授業中は何も起きなかったし、何も異変は無かった。


 異変が起きたのは授業後だろうか。


「んなぁぁぁぁ! 君がお姉ちゃんの初めてを奪ったんだんだぁ! んなぁ、万死に値する……万死に値するぅッ!」


 教室を出ると、泣き喚きながら俺の左腕にがぶりつく少女に出くわした。


「芽衣ちゃんどうしたの☆! 急に走りだして☆!」


「どうしたもこうしたも! んなぁの敵はここにいたんだ!」



         ◇



「な、なんだと!? 五月に妹が居たのか!? しかも我が妹、六花と同級生だし」


「気づいてなかったの?」


 青天の霹靂、灯台下暗し。五月の兄弟は身近に居たのだ。


「なるほど、確かに言われてみれば五月に似て可愛いなぁ」


「んなぁ? お姉ちゃんの方がかわいいもん!」


「そうだねぇ。君のお姉ちゃんの方がかわいいねぇ」


「なんかムカつきますねぇ」


◇その後、お姉ちゃんは可愛いか、可愛くないかの討論になる。


◇というわけで小坂一樹VS五十嵐芽衣。ディベート対決始まります。



「お姉ちゃんは可愛いか。可愛くないかで勝負しましょう」


「了解。んじゃあ俺が可愛い派で」


「んなぁ。芽衣が可愛い派だよ?」


「ほ~う?」


「んなぁぁ?」



◇ジャンケンの末、五十嵐芽衣が可愛い派。小坂一樹が可愛くない派になった。


「まず、五月は可愛いというよりか綺麗だと思うんだ」


「いやいやいや、綺麗なのは事実ですけど、芽衣のお姉ちゃんは可愛いですよ」


「そうだな。俺は五月が可愛いという主張も受け入れる」


「んなぁ、君は可愛くない派なんだよね?」


「ぶっちゃけどっちでも一向に構わん」


 というか、俺はこんな茶番をするためにこの高校に来たわけではない。


 俺の目的はあの男に会いにいくためだった。


 八乙女翔太。俺の元師匠である。最近、詐欺師だと分かった。とは言っても確固たる証拠はないのだが。


 そして、五十嵐親衛隊の実権を握っている男でもある。

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