「……あの」
「はい♡どうしたで候?」
「今更ながら名前聞いてなかったなって。君の名は?」
「あたしはマリオ•重国。あなたと五月ちゃんとの仲を取り持つキューピットよ!」
俺は今、商店街でオカマと邂逅していた。
◇数分前
ディベートを通して芽衣の誤解を解いた後、八乙女翔太に関して知ってる情報は無いか聞き込みをしていたが、成果は芳しくなかった。
そんなわけで現在、聞き込み範囲を広げるため商店街を活歩していると、何やら妙な集団が道を占拠している。
「難問だぞオカマ!」
3×3=に手足が生えてる存在が『数字の距離と答えは!』とオカマに問いた。オカマは18と答えた。
すると3が『答えは9に決まってるだろ』と言った。
オカマはそれを『3×3+(189+34√29)^(1/3)+(189ー34√29)^(1/3) {(3321+203√249)/18}^(1/3)+{(3321ー203√249)/18}^(1/3)』と叫んで、文字どうり数字達を一蹴。
オカマ曰く、答えは18になったらしい。
◇
「なんの用だよ。対して関わりないだろ俺ら。あとさっきの茶番なに?」
「あたしはあなた達の仲を取り持つキューピッドよ」
話が噛み合わない相手ほど厄介な事はない。
ていうか、目の前に居るのは五月親衛隊の幹部。もしかしたら奴について知ってるかもしれない。
「そんなキューピッドに聞きたいことが一つある」
「なにで候」
「八乙女翔太について聞きたい。恋愛導き師について。個人的な恨みがあるんだ」
「過激派トップのことかしら?」
八乙女翔太が過激派トップ……?
五月親衛隊に関わっているのかとも思ったが、それよりその組織のトップだなんて。
『その様子だとただならぬ因縁がありそうね』オカマがそう言った。
八乙女翔太は俺の命を狙うため、トップになったらしい。理由は五十嵐五月の名声が欲しくなって邪魔だから。
名声か……五月の人脈やインフルエンサー能力のことだろうか?
五月の名声については正直、全く興味がない。ただ、五月本人が好きなだけ。
潰す敵が明確になった瞬間だった。
◇
『別居したい?』
『はい』
『別にいいんだけど、どうして?』
『頭を冷やすため、滝に打たれてきます。今すぐにでも一樹くんと子作りしたくなってるので。なので一旦別れましょう』
◇
「あたしはあなた達のキューピッドで候。さあ、別れた理由を言いなさい。さもなくば、南北の往復ビンタをかますわよ」
(別に別れたわけじゃないって、言えねえなぁ)