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第58話 オカマ

「……あの」


「はい♡どうしたで候?」


「今更ながら名前聞いてなかったなって。君の名は?」


「あたしはマリオ•重国。あなたと五月ちゃんとの仲を取り持つキューピットよ!」


 俺は今、商店街でオカマと邂逅していた。



◇数分前



 ディベートを通して芽衣の誤解を解いた後、八乙女翔太に関して知ってる情報は無いか聞き込みをしていたが、成果は芳しくなかった。


 そんなわけで現在、聞き込み範囲を広げるため商店街を活歩していると、何やら妙な集団が道を占拠している。


「難問だぞオカマ!」


 3×3=に手足が生えてる存在が『数字の距離と答えは!』とオカマに問いた。オカマは18と答えた。


 すると3が『答えは9に決まってるだろ』と言った。


 オカマはそれを『3×3+(189+34√29)^(1/3)+(189ー34√29)^(1/3) {(3321+203√249)/18}^(1/3)+{(3321ー203√249)/18}^(1/3)』と叫んで、文字どうり数字達を一蹴。


 オカマ曰く、答えは18になったらしい。



         ◇



「なんの用だよ。対して関わりないだろ俺ら。あとさっきの茶番なに?」


「あたしはあなた達の仲を取り持つキューピッドよ」


 話が噛み合わない相手ほど厄介な事はない。


 ていうか、目の前に居るのは五月親衛隊の幹部。もしかしたら奴について知ってるかもしれない。


「そんなキューピッドに聞きたいことが一つある」


「なにで候」


「八乙女翔太について聞きたい。恋愛導き師について。個人的な恨みがあるんだ」


「過激派トップのことかしら?」


 八乙女翔太が過激派トップ……?


 五月親衛隊に関わっているのかとも思ったが、それよりその組織のトップだなんて。


『その様子だとただならぬ因縁がありそうね』オカマがそう言った。


 八乙女翔太は俺の命を狙うため、トップになったらしい。理由は五十嵐五月の名声が欲しくなって邪魔だから。


 名声か……五月の人脈やインフルエンサー能力のことだろうか?


 五月の名声については正直、全く興味がない。ただ、五月本人が好きなだけ。


 潰す敵が明確になった瞬間だった。



          ◇



『別居したい?』


『はい』


『別にいいんだけど、どうして?』


『頭を冷やすため、滝に打たれてきます。今すぐにでも一樹くんと子作りしたくなってるので。なので一旦別れましょう』



         ◇



「あたしはあなた達のキューピッドで候。さあ、別れた理由を言いなさい。さもなくば、南北の往復ビンタをかますわよ」


(別に別れたわけじゃないって、言えねえなぁ)

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