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15.〈ルキアのもう一つの秘密〉

 ルキアさんは、僕にある秘密を話し始めた。夜空に浮かび上がっている、月の光に照らされた……この場所で。


「俺は、同性愛者でもあるんだ」


「同性愛者?」


 僕は、意味を知らないため、首を傾げた。そんな僕を見たルキアさんは、一から意味を教えてくれた。


「あぁ。同性愛者というのは簡単に言うと、男が男を好きになること。そして、その反対も然り。女性が女性を好きになる。恋愛対象としてな」


「そんなこと、あるんだな」


「俺も気づいたときは、驚きを隠せなかった」


「いつからなんだ?」


 僕は、ルキアさんに問いかけると、包み隠さず話し始めた。


「あれは、俺が十歳の頃だな。それこそ、〈モーリス〉に遊びに行った時のこと。姉とはぐれたことがあって、不安になりながらも前を歩いていると、俺と歳の近い子が泣きじゃくっていてな。声をかけると、迷子だって。俺とその子は、手を繋いで姉と、その子の家族を探して歩いたんだ。夕暮れ時に、その子のがやっと見つかって、意外と楽しかった日が終わるんだなと、思いながらその子の手を離した瞬間。その子は俺に、。それが、初恋だったな。無口で、だ」


「……」


(それ、俺じゃないか?)


「ん? どうしたんだ?」


 幼い頃の記憶をたどっていると、ルキアさんに顔を覗き込まれた。僕は咄嗟に、『はぁ?』と声を出してしまった。


「やっぱり、気持ち悪いよな。姉からは「気にしなくてもいい」と受け入れてくれたんだが、他の連中は違った。「同性愛者なんて、はぐれ者」と言う奴もいるし、「同性を好きになるなんて、気持ち悪い」「汚らわしい」と言う奴もいる。お前も……。クロイ殿も、そう思うんだろう?」


「いや。別に何とも思わないが? 恋愛なんて、自由じゃないのか? そもそも、誰がそう決めたんだ? 例え、異性が好きだろうが、同性が好きであろうが、ルキアさんの人生に関係あるのか?」


 僕は、思ったことを口に出すと、ルキアさんは呆然と、僕の顔を見つめた。


「ク、クロイ殿?」


「他の人に何を言われようとも、ルキアさんはルキアさんだ。少なくとも、僕やルキアさんのお姉さんは、そう思う。僕も、散々〈勇者様〉と言われて、比べられてきたが、今はもうそんなことを考えなくて済む。まぁ、故郷に残ってれば、この考え方はしなかっただろうが。僕は僕で、ルキアさんはルキアさんだ。それだけは言っておく」


「……ハハッ。本当に、クロイ殿は真面目だな」


 ルキアさんはそう言うと、涙を流し始めた。僕は咄嗟に、ズボンのポケットに入っていたハンカチを差し出し、それを受け取ったルキアさんは、声を震わせながら『すまない』と言った。


。ルキアさんは、何も悪くないのだからな」


 僕は、彼が泣き止むまで、夜空を見上げながら頭を撫で続けた。







───あの時のお礼として。



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