ルキアさんは、僕にある秘密を話し始めた。夜空に浮かび上がっている、月の光に照らされた……この場所で。
「俺は、同性愛者でもあるんだ」
「同性愛者?」
僕は、意味を知らないため、首を傾げた。そんな僕を見たルキアさんは、一から意味を教えてくれた。
「あぁ。同性愛者というのは簡単に言うと、男が男を好きになること。そして、その反対も然り。女性が女性を好きになる。恋愛対象としてな」
「そんなこと、あるんだな」
「俺も気づいたときは、驚きを隠せなかった」
「いつからなんだ?」
僕は、ルキアさんに問いかけると、包み隠さず話し始めた。
「あれは、俺が十歳の頃だな。それこそ、〈モーリス〉に遊びに行った時のこと。姉とはぐれたことがあって、不安になりながらも前を歩いていると、俺と歳の近い子が泣きじゃくっていてな。声をかけると、迷子だって。俺とその子は、手を繋いで姉と、その子の家族を探して歩いたんだ。夕暮れ時に、その子の
「……」
(それ、俺じゃないか?)
「ん? どうしたんだ?」
幼い頃の記憶をたどっていると、ルキアさんに顔を覗き込まれた。僕は咄嗟に、『はぁ?』と声を出してしまった。
「やっぱり、気持ち悪いよな。姉からは「気にしなくてもいい」と受け入れてくれたんだが、他の連中は違った。「同性愛者なんて、はぐれ者」と言う奴もいるし、「同性を好きになるなんて、気持ち悪い」「汚らわしい」と言う奴もいる。お前も……。クロイ殿も、そう思うんだろう?」
「いや。別に何とも思わないが? 恋愛なんて、自由じゃないのか? そもそも、誰がそう決めたんだ? 例え、異性が好きだろうが、同性が好きであろうが、ルキアさんの人生に関係あるのか?」
僕は、思ったことを口に出すと、ルキアさんは呆然と、僕の顔を見つめた。
「ク、クロイ殿?」
「他の人に何を言われようとも、ルキアさんはルキアさんだ。少なくとも、僕やルキアさんのお姉さんは、そう思う。僕も、散々〈勇者様〉と言われて、比べられてきたが、今はもうそんなことを考えなくて済む。まぁ、故郷に残ってれば、この考え方はしなかっただろうが。僕は僕で、ルキアさんはルキアさんだ。それだけは言っておく」
「……ハハッ。本当に、クロイ殿は真面目だな」
ルキアさんはそう言うと、涙を流し始めた。僕は咄嗟に、ズボンのポケットに入っていたハンカチを差し出し、それを受け取ったルキアさんは、声を震わせながら『すまない』と言った。
「
僕は、彼が泣き止むまで、夜空を見上げながら頭を撫で続けた。
───あの時のお礼として。