昨晩。ルキアさんの秘密を知った僕は、過去に彼と出会っていることを思い出した。
(そういえば、あの時。祖母ちゃんと一緒に来ていたな。あれが、ルキアさんだったなんてな……。でも、今考えると、ルキアさんの初恋相手が、僕になるわけ、か?)
裏庭で、朝早くから剣を素振りしながら、考えていた。
(本人に今、言うべきではない気がするな)
「へぇ~。面白いね。人間って」
朝陽を浴びながら、ガーデンチェアーに座り、子供らしくない姿勢で優雅に、紅茶を嗜んでいるシエルがクスクスと笑った。そんなシエルを横目で見て、小さく息を吐いた。
「ふぅ……。心の声聞いたな?」
「悪いかい?」
「僕は気にしないが、ルキアさんには言うなよ。この感じだと、昨晩のことも知っているのだろう?」
「勿論だとも!! あたしは、
シエルはそう言うと、再び紅茶に口を付けた。
(シエルが不眠症だったのは、今日初めて聞いたな。僕はまだ、シエルのことも知らないのだな)
知らないことだらけの自分に、少しだけ嫌気を差したが、出逢ったばかりの相手のことだと割り切り、額に流れる汗を左手でぬぐった。
そして、ルキアさんも起きてきたところで、僕たちは客室に戻り、ルモンドの悪事を世間に知らしめる計画を企て始めた。
「さてと、ルモンド王の悪事を捌こうではないか」
「今年こそ、ルモンドがこの街を歩き、女を娶る行事だ。俺以外にも、奥さんを奪われた奴らも存在する。それも、騎士団の中にもいるんだ」
「それじゃあ、被害が拡大しているわけだな」
ルキアさんは頷き、僕は被害を治める方法を考え始めた。
「被害を拡大しないようにしたいな」
「じゃあ、クロイが女装すればいいじゃない?」
シエルは突然、変なことを言い出した。
「はぁ!?」
「クロイが女装して、ルモンド王の好みになって、娶られるとこまで行く。そこで、正体をばらして、被害に遭った人たちを巻き込んで、世間に悪事をばらし、彼の人生は終了。例え、武力行使してきたとしても、君たち二人の力を合わせれば、何とかなると思うよ?」
(何故。僕が、女装を……)
心の中で思っていると、ルキアさんはじーっと僕の顔を見つめてきた。
「な、なんだ?」
「クロイ殿。ぜひ、女装を」
「はぁ!?」
ルキアさんも、シエルの案に乗っかってきたのだ。
「ルキア君も、クロイが女装するのが楽しみなんだね!」
「面白そうだなと。クロイ殿の女装姿。早く見てみたいな?」
「だってさ。そうとなれば、クロイ?」
ルキアさんとシエルは、目を輝かせながら、こちらを見てくる。僕は目線を逸らしながら、二人の着せ替え人形となったのであった。