ルモンド王の悪事を世間に晒すために、何故かシエルの案により、僕が女装することとなってしまった。
「これで、いいんじゃないかな!!」
「愛らしいな!」
「なっ!? 僕は男だッ!!」
「事実だが?」
ルキアさんは真面目そうに、僕を褒め始めた。恥じらいが半分と屈辱感半分で、顔を左手で覆った。
「君たち……相性合いそうだね。色んな意味で」
シエルは面白半分で言ってきたが、僕は聞く耳を持たなかった。
「ルモンドは、上品な女性が好みだ。それに、スタイルもこだわる。でも、クロイ殿のスタイルはルモンドにとって効果抜群だ。後は、喋り方と身のこなし方が重要になる」
「あ、それに関しては大丈夫だと思うよ?」
「まぁ……」
「〈勇者〉だからか?」
ルキアさんの問いに、僕は頷いた。
「王様の前では、こんな喋り方はだめだからな。作法も何とか身についている」
「そうか。確かに当たり前か」
「そういえばさ、クロイ。君、自分が〈勇者〉だというの教えたみたいだね? あの勝負、意味なかったじゃないか!」
シエルは僕に頬を膨らませ、怒ってきたが、どの道バレるのは時間の問題だったことをシエルに教えた。
「〈エクスカリバー〉を引き抜いてしまった以上、バレるのは時間の問題だ。それに、ルキアさんだけ秘密をばらすのは、僕的に嫌だからな。だから敢えて、教えたんだ。別に、ルキアさんならばらしても、何とも思わないしな」
「クロイ殿……」
ルキアさんは、僕の顔をまじまじと見つめ、僕は目線を逸らした。
「あたしの前で、いちゃつくのやめてもらっていいかな? 握りつぶすよ?」
「いちゃついていない。そんな事よりも、ルモンド王の恒例行事は何時だ?」
「明日だ」
胸ポケットから小さな手帳を開き、僕とシエルに教えてくれた。
「明日か……。それまで、被害に遭った方に、知らせないといけないな」
「騎士団の方は俺に任せてくれ。後は、そちらに任せる。で、いいか?」
「勿論だとも! じゃあ、早速。街に出ようか!」
僕とシエルは、グローリア帝国の街の中を歩き回り、ルモンド王に娶られ、被害に遭われた家族の方々に、このことを知らせると共に、明日。計画を実行することに了承及び、協力してくれることを誓ってもらった。
例え、神を信仰する国だとしても、ルモンド王の行いには、神も頭を抱えているだろう。だから、これはいい機会になる。
そして、ユーベルであった、貴族らの正体。魔王との関係性を知れる機会も。
「これは、神の裁き。という事にでもするかい?」
突然。街の中で休憩していると、シエルにそう話しかけられた。
「まぁ、そうだな?」
「〈勇者・クロイ〉という神にかい?」
「変なことを言うな。僕は神じゃない。ただの〈勇者〉という役目を背負った、
僕は平然に答えると、シエルは何かを考えるように、下を俯いた。
「シエル?」
「君には、神と正反対の性格だもんね。〈勇者〉としての性格も」
「どういう事だ?」
「そのままの意味さ。まだ、自分の心に気づいていないみたいだから、この回答はノーコメントとして扱わせて貰うよ。この件も終わって、旅を重ねると共に、気づいてくるはずだよ。本当に〈勇者〉としての生き方を続けてもいいか……ね?」
シエルの言葉に、毎回狂わされていく気がする。だが、今の僕は〈勇者〉としての生き方をするだけ。それは変わらない。
「僕は、このまま生きていくつもりだ。未来よりも、今を」
「そうかい。まぁ、楽しみにしておくよ。君の本性が現れる。
「……あぁ。さて、次に行くぞ」
僕は、シエルに手を差し伸べ、シエルは僕の手を握り、互いにはぐれないように、再び街の中を歩いたのであった。