〈スノーバーグ〉に辿り着いた僕たちは、女王陛下であるプリムラ・メイールと出逢い、プリムラ女王陛下に抱き着かれ、挙句の果てには頬擦りをされてしまったシエルは、悲鳴を上げ気絶し、人見知りを発揮したプリムラ女王陛下と、対話することとなった。
「ここだとあれなので……あそこでお話を、し、しませんか?」
プリムラ女王陛下は、僕の後ろを指さした。振り向くと、小さな氷で造られた
「分かった」
僕は、シエルを抱えながら、その店に足を運んだ。中に入ると、全ての家具が氷で造られていた。
「神秘的だな」
「心が安らぐ……そうだろう。クロイ?」
「あぁ」
相変わらず、騎士団の服装のままでいるルキア。だが、外よりも暖かさを感じる。火を扱うものがないのにも関わらず。僕は、ルキアの外套を脱ぎ、返した。
「もういいのか?」
「寒くないからな」
「それだったら良いが、いつでも温めてやるからな?」
「その時は頼む」
(ルキアの体温は、丁度良いからな)
「うわぁ~」
気絶していたはずのシエルが目を覚まし、変な表情で僕を見てきた。
「なんだ?」
「いや。なんでも、ない。うん。というか降ろして」
シエルが暴れる前に、シエルを氷の床へと降ろした。
「シエルちゃん!!」
「まだいたのかい。プリムラ。まぁ、良いけどさ……」
「えへへ。シエルちゃんも起きましたので、こちらにどうぞ」
プリムラに個室へと案内された僕たち。天井には、氷のシャンデリアが飾られていた。
「プリムラ女王陛下様。どうして、あの場所にいらっしゃったのですか?」
「バーナさん。
「女王陛下なのにか?」
「ただの【お飾り】ですよ。女王陛下というのは、好きでなったわけではありませんので。この店は、自分の身分を隠した上で、作り上げた宿屋なのです。先代の王が私の母にお手付きをし、生まれたのが私で、唯一氷魔法を扱える存在となった私は、三番目ですが、この国を治めることとなったのです」
(三番目か……)
「プリムラ様、お言葉ですが。後のご兄弟はどちらへ?」
ルキアは、少し難しそうな表情で、プリムラに問いかけたが、プリムラは静かに目を閉じ、首を左右に振った。
「お兄さま方は、この国から追放されてしまわれたのです」
「は?」
「驚かれても、しょうがないことなのです。お兄さま方は、〈破戒の魔王〉に愛されなかったから」
(一体どういうことだ? それに、シエルの顔色も怪しくなってきたな)
僕の膝に座っているシエルの手が、震えていることに気づいた僕は、顔を覗かせると、顔色が悪いことにも気づいた。
「シエル?」
「平気さ」
「〈破戒の魔王〉は、この国にある洞窟に封印されていますが、私が物心がついた時には、一度封印が解かれて、この国は崩壊寸前まで来ていましたが、私が女王の力が覚醒し、氷魔法で封印したのです。そして、その封印を解いたのは、一番目のお兄さまで、二番目のお兄さまも加担したとされ、国外追放されてしまったのです」
「そうだったのか」
「ですので、今お兄さま方は何処にいるのか、分からない状態なのです」
(一番目の兄が封印を解き、加担したと思われたに二番目の兄も、追放か。魔王に愛されなかったというのは、誰かの「噓」であり、その誰かが、プリムラを女王陛下として王座に座らせたかった。というのが、考えが過ぎるな)
「最初は、辛かったですが、シエルちゃんと出逢ってから……」
「プリムラ。もうやめて。昔話は聞きたくもないし、話したくもない。あたしは、部屋に戻る。二階の端でいいよね?」
「う、うん」
「クロイ、少し寝てるから。何かあったら起こしてくれてもいいから。じゃあね」
シエルはそう言うと、眠たそうに眼を擦りながら、二階へと向かった。
「シエル……?」
「今は、そっとしておきましょう」
「そうだな」
僕は、シエルを追いかけることせず、バーナさんに言われた通り、今はそっとしておくことにしたのであった。