目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

26.〈プリムラ・メイール〉

 〈スノーバーグ〉に辿り着いた僕たちは、女王陛下であるプリムラ・メイールと出逢い、プリムラ女王陛下に抱き着かれ、挙句の果てには頬擦りをされてしまったシエルは、悲鳴を上げ気絶し、人見知りを発揮したプリムラ女王陛下と、対話することとなった。


「ここだとあれなので……あそこでお話を、し、しませんか?」


 プリムラ女王陛下は、僕の後ろを指さした。振り向くと、小さな氷で造られた


「分かった」


 僕は、シエルを抱えながら、その店に足を運んだ。中に入ると、全ての家具が氷で造られていた。


「神秘的だな」


「心が安らぐ……そうだろう。クロイ?」


「あぁ」


 相変わらず、騎士団の服装のままでいるルキア。だが、外よりも暖かさを感じる。火を扱うものがないのにも関わらず。僕は、ルキアの外套を脱ぎ、返した。


「もういいのか?」


「寒くないからな」


「それだったら良いが、いつでも温めてやるからな?」


「その時は頼む」


(ルキアの体温は、丁度良いからな)


「うわぁ~」


 気絶していたはずのシエルが目を覚まし、変な表情で僕を見てきた。


「なんだ?」


「いや。なんでも、ない。うん。というか降ろして」


 シエルが暴れる前に、シエルを氷の床へと降ろした。


「シエルちゃん!!」


「まだいたのかい。プリムラ。まぁ、良いけどさ……」


「えへへ。シエルちゃんも起きましたので、こちらにどうぞ」


 プリムラに個室へと案内された僕たち。天井には、氷のシャンデリアが飾られていた。


「プリムラ女王陛下様。どうして、あの場所にいらっしゃったのですか?」


「バーナさん。で良いですよ。占いで、シエルちゃんたちが、ここへ来るということを知ったので、お出迎えです」


「女王陛下なのにか?」


「ただの【お飾り】ですよ。女王陛下というのは、好きでなったわけではありませんので。この店は、自分の身分を隠した上で、作り上げた宿屋なのです。先代の王が私の母にお手付きをし、生まれたのが私で、唯一氷魔法を扱える存在となった私は、三番目ですが、この国を治めることとなったのです」


(三番目か……)


「プリムラ様、お言葉ですが。後のご兄弟はどちらへ?」


 ルキアは、少し難しそうな表情で、プリムラに問いかけたが、プリムラは静かに目を閉じ、首を左右に振った。


「お兄さま方は、この国から追放されてしまわれたのです」


「は?」


「驚かれても、しょうがないことなのです。お兄さま方は、〈破戒の魔王〉に愛されなかったから」


(一体どういうことだ? それに、シエルの顔色も怪しくなってきたな)


 僕の膝に座っているシエルの手が、震えていることに気づいた僕は、顔を覗かせると、顔色が悪いことにも気づいた。


「シエル?」


「平気さ」


「〈破戒の魔王〉は、この国にある洞窟に封印されていますが、私が物心がついた時には、一度封印が解かれて、この国は崩壊寸前まで来ていましたが、私が女王の力が覚醒し、氷魔法で封印したのです。そして、その封印を解いたのは、一番目のお兄さまで、二番目のお兄さまも加担したとされ、国外追放されてしまったのです」


「そうだったのか」


「ですので、今お兄さま方は何処にいるのか、分からない状態なのです」


(一番目の兄が封印を解き、加担したと思われたに二番目の兄も、追放か。魔王に愛されなかったというのは、誰かの「噓」であり、その誰かが、プリムラを女王陛下として王座に座らせたかった。というのが、考えが過ぎるな)


「最初は、辛かったですが、シエルちゃんと出逢ってから……」


「プリムラ。もうやめて。昔話は聞きたくもないし、話したくもない。あたしは、部屋に戻る。二階の端でいいよね?」


「う、うん」


「クロイ、少し寝てるから。何かあったら起こしてくれてもいいから。じゃあね」


 シエルはそう言うと、眠たそうに眼を擦りながら、二階へと向かった。


「シエル……?」


「今は、そっとしておきましょう」


「そうだな」


 僕は、シエルを追いかけることせず、バーナさんに言われた通り、今はそっとしておくことにしたのであった。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?