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03無限に形を変えられる

「…………私、身体も小さくて運動もダメで要領も悪くて……何やってもどんくさいのに……、高ランクの戦闘ペットと共鳴して、ホントは技術職コースに進みたかったのに攻略隊コースに組み込まれて……気も弱いから嫌だって言えなくて……全然上手くいかなくて…………落ちこぼれて……」


 私はぽつりぽつりと、心の中にある思いを漏らしていく。


「私の精神性だと、ダビンチは共鳴前のような動きは出来ない……脅威ランクも壊災級に下がったし一年生と混ざって未だにEランク……本当は技術職に勤めて色んなものを作りたかった。ダメな私でも少しはダンジョン攻略に協力出来たらって……思ってたけど、言い出せなくて……三年生……」


 泣きそうになりながらこれ以上ないほどの事実を語りきった。


「…………お、おお……なんだ別にそんな気にしなくて良いとは思うが……。あのデク人形は能動的に動かんからな、意思が希薄だ。ちゃんと戦いを仕込めば動くが、それでも単純な動きしかしない。防衛用に使う類いのやつだろ、つまりデク人形の成長や鍛錬よりも主の戦闘経験値や技量が如実に反映される。こないだ生まれたばかりの小娘どもでは手に余るのは当然だ」


 落ち込む私に驚きながら謎の弩級美女は感想を述べる。


 て、的確……っ! さっきの無様なだけの戦闘だけでそこまでわかったの? というか励ましてくれている……?


「この私からすれば、ここにいる小娘どもはもれなく脆弱だ。それほど貴様と変わらんぞ、そう気に病むな。安心しろ全員ちゃんと虫けらだ、差異はない」


 そして謎の弩級美女は独特な励ましの言葉を私に向けて可愛らしい笑顔を見せた。


「は、はあ……」


 私はとんでもない謎の弩級美女の言葉にマヌケな返事を返す。


「さっきのロボットみてえの初めて見たけど、相手に適した形態変化とかは出来ないのか?」


「ふっ主様よ、形態変化は相当な現実改変力を有した者しか行えん。思いと想いの重さが事象に影響を及ぼし、自らが望む姿へと変化させるのだ。あのようなデク人形では――――」


 乃本さんの疑問に、謎の弩級美女は呆れるように返そうとするが。


「あ、それは出来ますよ」


 私はあっけらかんと答えてダビンチを召喚する。


「チェンジダビンチ、ドラム式」


 私が指示を出すと、ダビンチはドラム式洗濯機へと変形する。


 これは寮の洗濯機が縦型で背の低い私には使いにくいのから重宝している。


「チェンジダビンチ、ファンヒーター」


 さらに指示を出すと電気ストーブに変形する。


 単純に北海道の冬は厳しいので重宝している。


「チェンジダビンチ、リフリジェレイター」


 三度指示を出すと冷蔵庫に変形する。


 寮の共有冷蔵庫に入れにくいチーズケーキとか買ってきたのを二日三日くらい保管できるので重宝している。


「と、まあこんな感じですね……私の頭の中に叩き込んだ図面や回路図を反映させて材質や質量も含めて形を変えます。…………まあ攻略には何の意味も――」


「これは何形態あるんだ?」


 私は冷蔵庫ダビンチの扉を開きながら説明をしていると、やや前のめりに乃本さんが質問を被せる。


「私が理論上作れる物であれば無限に形を変えられると思いますけど…………え? どうしたんですか?」


 質問に答えていたところで、乃本さんが手で口元を覆って食い入るようにダビンチを見つめたので問いかけると。


「……


 ぽつりと乃本さんはそう言って。


「銃火器や車や飛行機なんかにも出来るってことか?」


 ダビンチを舐め回すように観察しながら質問を続ける。


「出来ますけど、火薬を用いた弾薬のような消費されるものは再現出来ないので銃火器の形になるだけで意味はないです。車は私が構造を理解出来ているものなら可能で、飛行機は私は航空力学に明るくないので不可能です……けど」


 質問に対して答え。


「……十分、いや過剰だ。凄ま――――」


 と、私の回答に乃本さんが慄いていたところで。


「講習中止! Eランク攻略者は撤退‼ 乃本は撤退のサポートを! 引率組の攻略者は対応する‼」


 向水さんの大きな声が響き渡る。


「総員、整列ッ‼ 駆け足で現場から離脱! 俺は後方から支援する! 駆け足! 走れ走れ走れえッ‼」


 向水さんの声を聞いたと同時に、大きな通る声で乃本さんが全体に指示を出す。


 何? 何が……あ! あれだ!

 目線の先には宙に浮かぶ大きな球体のモンスターが居た。


 あれは確か脅威ランクは猛災級だったはず。

 Eランクでは手を出せないランクのモンスターだ。


 確かにこれは異常事態、早く逃げなきゃ――。


「私たちなら行けるって! ポチ子!」


「こっちもやるよ! リンダ‼」


「行っけーーッ‼ 半平太ぁ!」


 私が乃本さんの誘導通りに走り出したところで、何人かの一年生が戦闘ペットを召喚する。


 そして一斉に戦闘ペットからモンスターへと炎を吐き出す。


「な……っ! 火はダメ――」


「っ、全員伏せろおおぉぉぉおおぉぉおお――――ッ‼」


 向水さんが制止しようとしたところで、乃本さんが大きな声で叫んだ。


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