「聞いたことがございますわ。水屋さんというのは貴女でしたのね、よろしくお願いします」
丁寧に里々ちゃんはそう言う。
おっぱいちゃんの名前は里里里々、戦闘ペットはリビングアーマーとのこと。
一年生でDランク、なかなかに優秀な子みたい。そして十五か十六歳くらいでこのおっぱい……とんでもないわね。
「そろそろ三速に入れてみようかな……いや、まだ早いかな……でも」
運転に慣れてきた成子ちゃんが、私たちの話をよそに呟く。
小動物の子は縞島成子、戦闘ペットはミスリルゴーレム。
三年生でEランク、自由自在に変形する戦闘ペットを見る感じ私と同じく攻略支援がメインみたい。乃本氏の推薦で攻略に参加。
なるほど、面白いメンバーだ。
乗って正解だったかもね、退屈しなさそうだし歩かなくていいから楽だし。
まあ、私はお喋りなタイプじゃないから楽しくお話みたいなことはしないけど。
楽しげな会話を聴きながら、ダンジョンを進んでいると。
「……な、乃本! なんだそれは男なら歩け! 僕も乗らせろ!」
一人の攻略者が声をかけてくる。
あー雑魚王子だ、たしか名前は喜怒乱丸。
回復能力を持つスライムを用いて無茶な特攻をしては自己治療してる攻略者。彼女……いや自認男性なんだっけ? たまーに男として育てられた人は存在する、多くはないけど珍しくもない。
そのまま乱丸も車に乗り、成子ちゃんが運転に慣れたのもあってまあまあの速度でダンジョンを進んでいると。
「ええ……この為に縞島さんを推薦したの? あんたホント……私も乗せなさいよ!」
ミライちゃんがそう言ってそのまま車に乗り込んでくる。
Aランク攻略者、向水ミライちゃん。
戦闘ペットはミノタウロスで、ダンジョンで発見した様々な武器を用いて戦う天才。何度か一緒にダンジョン攻略に潜ったことがあるけど、Aランクに恥じない活躍ぶりで彼女が攻略者になってからの二年間で幾つものダンジョンを消失させている。
というか乃本氏……モテるのね。
まあ若い男ってだけで、今現在の日本においてとんでもなく貴重な存在だから興味の対象にもなる。
実際私も興味はある。まあ別に子供を作る気もないしセックスもそれほど面白いとは思わなかった。男としたらまた違うのかもしれないけど、そこまで私は好き者でもない。
彼女たちが男性攻略者にどんな魅力を感じているのか興味がある。
今回の攻略は退屈しなさそうだ。
そんなことを考えながらも、成子ちゃんはノリノリでダンジョンを疾走する。
完全に運転になれて、めちゃくちゃ飛ばすようになった。さっき軽くドリフト入れてたけど。
とんでもない速さで進行して。
あっという間に最前線へと辿り着く。
まさかの最前線……、なんかノリで前に来すぎたことを後悔する。
まあ楽だったし、もうすぐ中間層まで到達するからキャンプを行うはずだと思うけど。
ここでモンスター群と接触。
中規模ダンジョンの中間層手前、強災級や猛災級相当のモンスターが八体。
もちろん状況は戦闘へと移行する。
「サクッと行くわよ。時間も体力使ってらんないからね」
ミライちゃんがミノタウロスを召喚しながら全員に言う。
「ヴィオラはどうする?」
「……取るに足らん。パスだな」
乃本氏が聞くとヴィオラちゃんは気だるそうに返す。
「僕は戦うぞ! 無茶しない程度でな!」
肩を回して乱丸がスライムを召喚して宣う。
「私も微力ながらお供させていただきます」
里々ちゃんは鎧を纏って剣を抜いて優雅に言う。
「暗木さんはこちらへ、ダビンチの陰に隠れてください」
私の手を引いて成子ちゃんはそう言いながらバリケードのように変形させたゴーレムの陰に隠れる。
非戦闘員として成子ちゃんと戦闘を見学することにした。
結論から言うと、驚いた。
まず乱丸がかなりクレバーな立ち回りをしていることに驚いた。
何度か見たことあるのは、猪突猛進で無茶な特攻が通らずに怪我してスライムの中で治療しながら泣いてるところだったけど。
今はスライムの防御性能を活かして遮蔽にして、前蹴りや投げで奇襲し、注意を引いて乃本氏やミライちゃんの方へと誘導していた。
まあ当然といえば当然の立ち回りだけど、貴重な回復役としての自覚を持った動きをしている……なんかあったの?
それと里々ちゃん。
おっぱいにも驚いたけど、かなり面白い戦い方をしている。リビングアーマーを着込んで身体能力を上げるだけでなく、リビングアーマーの特性を活かした人間では出来ない動きも自然に組み込めている。
努力の跡が見て取れる、真面目で実直……おっぱい以上にこの練度には驚いた。
さらにミライちゃん。
これは流石としか言いようがない。ミノタウロス自体の戦闘経験値が高いし、それを前提とした連携が完璧。ミライちゃん自身も、かなり練度が高いけど。
なにより才能が光る、臨機応変で常に的確な行動をとる。流石Aランク攻略者様だ。
まあそんなことより。