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7・ダンジョン超人、奮闘す

01七大都市の奪還

 俺、乃本百一は現在攻略者学校にて攻略者を目指す学生だ。


 まあ自衛隊を辞めたわけでもないし、俺一人になろうとも迷宮作戦群であることは変わらない。


 俺は日本のために命を使い切るために、生まれた。

 それが俺の行動の大前提だ。


 千歳ダンジョンから帰還後、三十年で日本はかなり様相を変えていた。


 迷宮災害に加え、未知の感染症による女体化症候群と呼ばれる病により日本人口は約半分になり。

 内九割以上が女になった。残った男は保護管理下で生活している。


 女体化症候群に対する治療方法は確立されておらず、ワクチンや特効薬もない。

 感染すれば男は死ぬか女になるか、女は男を産めなくなる。


 この影響で自衛隊や警察組織は弱体化、警察は辛うじて治安維持に徹することが出来て司法制度はギリ維持できている。


 さらに女体化症候群対策として、他国との交易や交流はほぼ完全に止まっている。これにより石油燃料の枯渇、原子力発電所を再稼働させ食料自給率を上げてなんとか対策しているがEV車しかまともに動かない世の中では長距離の流通もなかなか行えない状態だ。


 本当に不幸中の幸いとして、未知のダンジョン資源という興味を女体化症候群という未知の脅威が相殺して他国からの侵攻を防げていることだが……国防に関してはマジで考えて行かないとやべーと思う。


 目下の目標はまず札幌以外の七大都市の奪還。


 仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の近郊には大規模ダンジョンがある。

 この大規模ダンジョンから出てきた強力なモンスターによって、居住が不可能となっている。

 日本を立て直す為には居住地の確保、インフラ整備、流通の確保、都市機能の回復が必須だ。

 この大規模ダンジョンを叩かない限り、七大都市奪還は叶わないだろう。


 その七大都市奪還と迷宮災害対策に攻略者を集めた攻略隊なる組織があり。

 戦闘ペットを用いてモンスターと戦える攻略者によって、居住区やらの防衛やらが行われてはいるが……。


 正直、


 まあ戦闘ペットの特性やらがバラバラで、統率が取りづらいのもあるが。

 そもそもが迷宮災害や女体化症候群の混乱の中、民間人の攻略者集団が政府に雇われるところから始まった組織なので自衛隊や警察組織などの戦略や戦術や訓練のノウハウが培われていない。

 やってみて上手くいった方法を蓄積して継承しているに過ぎない。


 このままだと日本奪還はかなり厳しいというのが、地上に戻って一ヶ月の所感だ。


 まあそれでもやるんだけどな。

 俺はこの命を使い切るまでに、少しでも日本を立て直す。

 として、日本を守る。


 しかして全く可能性がないわけじゃあない。

 なかなかどうして目ぼしい戦力は見えてきている。


 今回の中規模ダンジョン攻略作戦で、もう少し具体性を帯びさせることが出来ればと考えている。


 まあ無理なら無理で、俺一人でもやるんだけども。


「…………最悪ね。間違いなくボス部屋前……上に戻って本隊との合流を目指して、途中で安全地帯を見つけたらそこで待つわよ」


 ボス部屋扉の前で、状況を察した向水が俺たちに向けて述べる。


 先日起こった迷宮災害を止めるべく、攻略隊は中規模ダンジョンへと潜った。


 向水の推薦で俺も参加し、さらに縞島の移動力を試す為に俺が守ることを条件に参加要請。

 戦闘ペットのミスリルゴーレムを高機動車をモデルに変形させ完璧な移動力を実現していた、それに運転技術のセンスもあった。


 同じく攻略に参加していた里里も同乗させ、ダンジョンを進んでいる途中でヴィオラの助言で暗木ヒカリを拾って。


 さらに先日面識の出来た衛生治療兵の喜怒と、向水を拾って進み。


 モンスター群と戦闘。


 向水はまあやっぱり優秀だ。多分今日いる中で一番強い攻略者だ。

 里里もかなり使う、多彩というか戦闘ペットを用いた現代戦闘の可能性を広げ続けている。

 喜怒は先日より格段に動きが良くなっていた、自身の戦略的価値を省みる動きで好感が持てた。

 縞島もしっかりと自分の役割に徹していて良かった。

 暗木には驚いた。ありゃあ相当場数を踏んでいる、向水にも引けを取らない実力者だ。


 まあ、そんな戦闘行動下で俺たちはダンジョンのトラップに引っかかった。

 トラップは転移系、別の階層や部屋に跳ばしてしまう罠、授業で習った。

 跳ばされた先が溶岩だったり棘だったりしたら即死も有り得る凶悪なトラップだが、俺たちが飛ばされた先は。


 ダンジョン最下層、しかもボス部屋の前だった。


「いや、俺は反対だ。このままボスを叩く、撤退する場面ではない」


 俺は向水の提案を真っ向から却下する。


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