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03ならば俺たちは

 扉を開いた先には二十メーター近い、頭が複数……六、七、八つか。尾も同じだけあるか。いゆるヤマタノオロチ的なボスモンスター。


 ああ、良かった。これなら千歳にも居た。


「……っ、滅災級よ。気合い入れなさい‼」


 即座に向水が脅威ランクを共有。


 同時に。


「六花、着装合体! リリリビング・アーマードッ‼」


 里里がリビングアーマーを召喚し、合体。


「スタンドバイミー! ダビンチっ‼」


 縞島がミスリルゴーレムを召喚。


「勇往邁進ッ‼ エスメラルダァ‼」


 喜怒がスライムを召喚。


「満たして、マー坊」


 暗木がホースから水を棘のように伸ばし。


「Get Ready for the next battle! うし太郎ッ‼」


 向水がミノタウロスを召喚し、装備を展開。


「ヴィオラ、攻略開始」


「了解するぞ、主様」


 俺が告げると、ヴィオラは不敵にそう返す。


 ヤマタノオロチは初手、頭の一つから俺たちに向けて炎を吹きかける。


「チェンジ! ダビンチ‼」


「マー坊っ!」


 ほぼ同時に、縞島と暗木が反応。


 縞島がミスリルゴーレムで壁を作って火炎を散らし、散った炎を水で消火する。


 最善すぎる。

 火炎の防御として適切だし、火災によってボス部屋が酸欠になるのを消火して防いでいる。


 ヴィオラにもやられた。

 第一形態の火炎と酸欠を攻略するのに、俺は五年かかった。


「共有! 攻撃方法は今の火炎とおそらく毒液を噴射する! 尻尾も八つあるので叩きつけの連打も来る! 攻略方法は全ての頭を潰すことだが、時間をかけすぎると潰した頭が復元される! 一つ潰したら畳み掛けて迅速に全ての頭を破壊しろ‼」


 俺は攻略方法を共有する。


「行きまあぁぁぁぁあぁぁあぁ――――――ぁああすっ‼」


 共有されたのと同時に里里は猛り、纏ったリビングアーマーの浮遊特性を活かして跳び上がる。


 そのまま上段で構えたロングソードで頭の一つに斬りかかる。


 即断即決最短最速、悪くない。好感が持てる……が。


「ぐ……っ」


 別の頭からの頭突きで里里は叩き落される。


 ヤマタノオロチの頭は八つ、眼球は十六ある。

 とにかく死角がない。


「エスメラルダァ――――っ!」


 喜怒が叫ぶと、里里が壁面に叩きつけられる前にスライムが里里を包み込んで衝撃から守る。


 里里の鎧なら大きな負傷はなかったが、喜怒のサポートで継戦能力は向上している。


「視野角広いぞ! 基本的に隙はない‼ 頭ごとに注意を引け! 恐らく頭ごとに思考は共有していない! 分断し各個撃破ッ‼ 呼称は右から一番とし、左端を八番とする!」


 俺は攻略方法の追加と、指示を出す。


「命令すんな馬鹿ぁ‼」


 向水が元気良く返事をして、ミノタウロスに斧を二本投げさせる。


 斧は一番と二番の頭目掛けて投げられるも躱されるが、ほぼ同時に視線を追わせるように向水自身が囮として走り出す。


 流石。

 とりあえず一番と二番は向水の担当に決まる。


「三番、頂きますわよ!」


 里里はそう言って、リビングアーマーの機動性を活かしつ三番の頭に挑む。


 一番と二番が向水に向いたことで、先程里里を叩き落とした三番を釘付けにすることができるようになった。


「チェンジダビンチ! 玉掛けクレーンッ‼」


 縞島がミスリルゴーレムをクレーン車に変形させる。


 そのまま縞島はクレーン車に乗り込んで、アウトリガを下ろしてブームを伸ばして四番の頭を狙う。


 こんな車両も行けるのか、弾薬さえあれば10式戦車なんかも再現可能なのか?


 縞島が伸ばしたブームは容易く躱されるが。


「――――ッ! マー坊最大出力っ!」


 暗木がブームを躱した四番の頭に、圧縮した水を撃ち出し顎から跳ね上げる。


 流石、居着きを狙うのが上手い。

 だが距離減衰で貫通性はない、圧縮して高速で射ち出して水は水だ。


「グァ……ッバアアア――‼」


 四番の頭は、口を大きく開き口内から毒液を噴射。


 毒液が来た。

 あれは俺が受ける、毒に耐性はないが即死じゃない限りは回復する。

 ここ一ヶ月で色々試したが、俺の再生能力はダンジョン内に限るものだ。

 ヴィオラが言っていた通り、迷宮復元の影響らしくダンジョンの外では再生能力は発揮しない。身体の成長や老化も、ダンジョン内では止まる。三十年ぶりにヒゲを剃った。


 俺が毒液に駆け出そうとした瞬間。


「ェェエエエスメラルダあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁ――――――ぁぁああッ‼」


 喜怒の怒号でスライムが飛び出して毒液を吸い込んで落ちる。


 スライムは毒液で真っ黒に染まって落ちて、ぶるぶると震えてライトグリーンへと戻る。


 これは想定外……、毒も消せるのか。

 これで火炎には縞島と暗木、毒液には喜怒が対応出来る。

 四番は縞島と暗木と喜怒に任せられる。


 ならば俺たちは――――。


「ヴィオラ、俺は五番と六番を相手する。残りはおまえに任せる、だが他の頭が潰れるまで潰すな。出来るな?」


 俺はヴィオラにそう命ずると。


「主様も難しいことを言う……虫けらを潰さずに遊べとは……、まあ出来なくはない」


 ヴィオラは呆れたようにそう返し。


 背中から光輪を展開。


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