「はぁぁああああああい‼ うし太郎ッ!」
四番が破壊されたのを横目に、向水は声を張ってミノタウロスを呼びながら巨大な杭を一番と二番の頭が重なる位置に振り上げる。
「ブロオオオオオオオオオオオオ――――――ッ‼」
ミノタウロスは猛りながら巨大なハンマーで杭を打ち抜き。
二つまとめて杭が貫いた。
一番と二番の頭、破壊。
「最速……ッ! だああああああああ――――――っ‼」
三番の頭が両隣りの頭が破壊されたことに驚いた隙を狙って、里里は地面を滑るように高速移動でショルダータックルの姿勢で気合いの雄叫びと共に真っ直ぐと進み。
横一文字に斬り落とす。
三番の頭、切断。
「ほれ、じゃあ終わりだ。暇つぶしにもならんが」
ヴィオラは他の頭が潰れたことを確認し、そう言って光輪を展開し。
残像を置いて超高速移動で接触。
七番と八番の頭、消滅。
俺は各自が受け持った頭を破壊したのを確認し、六番の頭に震脚からの鉄山靠で勁を通して内部から爆発させる。
そのまま振り返り、五番の頭を狙ったところで。
「――!」
思わず驚いてしまう。
五番の頭が、金属のように硬化してそのまま身体を伸ばして全力で俺から離れる。
こいつ……、復元までの時間稼ぎに入りやがった。
千歳に居たヤツとは挙動が違う、ボスとしての固有特性か。
距離が離れすぎた。
だが、この程度で逃げられると思ってんじゃねえぞ。
「ヴィオラぁああ――――――――――――ぁあああ‼ 飛ぶぞおおおおおおおおお――――ッ‼」
俺は跳び上がりながら、ヴィオラに命じる。
「はははは――――っ! 行くぞ主様ぁ――――っ!!」
ヴィオラは嬉々として返しながら、俺の背中に張り付いて光輪を展開し。
超音速で飛ぶ。
凄まじいGで一瞬目がチカチカするが、この手のG訓練はたらふくやってきた。気を失うことはない。
凄まじい速さで宙を跳ね回って、五番の頭上へ。
そのまま高速落下で、金属のように硬化した頭をひしゃげさすように。
踏みつけて、大爆発。
これをもって、討伐は完了だ。
「消失が起こるわよ!」
向水は余韻に浸る間もなく、通る声で全員に共有する。
そうか、そういや俺はダンジョンで三十年間もさまよっていた癖にダンジョン消失を体験するのは初めてだ。
「ふん、まあまあ楽しかったぞ主様よ」
満足気にヴィオラはそう言いながら俺の背中からぎゅっと抱きつく。
「ああ、良かったな。やっぱ頼りになるな、おまえは」
俺はそう返し、ヴィオラの頭を撫でたところで。
一瞬だけ視界が眩しくなったと思ったら、中間層付近を進行していた攻略隊と一緒に地上へと戻されていた。
これが消失現象か。
確かにダンジョンがあったはずの場所が綺麗さっぱり何も無くなっている。
「ボス討伐……本当に私たちが中規模ダンジョン攻略したのですか……?」
里里はずっとロングソードを握っていた震える手を見ながら呟き。
「しちゃったんだよ……本当に」
ミスリルゴーレムに抱っこされながら縞島が返し。
「僕が……ボス討伐…………な、泣かん! 泣いてない! 男は泣かないんだ!」
涙目の喜怒が興奮気味に言って。
「……おっ…………もしろかったぁ……」
しみじみと噛み締めるよう暗木が漏らし。
「学生を含めた少人数での滅災級ボスモンスター討伐……これどう報告出すのよ」
既に報告書のことで頭がいっぱいの向水が頭を抱えてそう言った。
全員損傷軽微、消耗もなし。
転移トラップでのショートカットもあるが、一日でダンジョン攻略を完了。上出来すぎる結果だ。
全員、素晴らしい活躍だった。
及第点は超えている、これなら日本奪還を進めることが叶うだろう。
まだまだ鍛える余地は残っているが、全員最善を尽くしていた。
特に一番の収穫は、この面子の連携能力と個々の戦略的価値。
悪くないどころか、かなり前に進めた気がする。
日本は救える、七大都市奪還も現実味を帯びてきた。
このまま俺の命を使い切ってでも、日本は必ず取り戻す。
ちなみに、この攻略の様子は向水の装着していたボディカムで攻略隊や攻略者学校に生配信されていたようで。
帰ったらめちゃくちゃ大歓迎されて、攻略隊や学生たちに囲まれたところで。
ヴィオラの怒りに触れて暴れ出しそうなのを止めることになったのが、今回の作戦で一番大変だった。