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8・天才少女、本気で向き合う

01こざっぱりする

 私、向水ミライはAランク攻略者だ。


「えー……この私が推薦してあげたのよ! 感謝なさい! …………いや違うか……。これであんたも攻略者よ、精々頑張んなさい! …………も、違うか」


 私は学生寮の端の端にある物置を片付けて無理矢理部屋にしたドアの前で一人、シミュレーションを行う。


 先日の中規模ダンジョン攻略で、乃本は活躍を見せた。


 転移トラップがあったとはいえ中規模ダンジョン最短攻略記録を更新。

 少人数パーティで滅災級ボスモンスターを初見攻略。

 ヤマタノオロチ型の頭を半分請け負い、トドメの一撃を通した。


 その様子は私のボディカムでライブ配信され、攻略隊に共有されていた。


 具体的な活躍を見た攻略隊は乃本をEランクにしておくことは攻略隊にとっての不利益と考え、単独ダンジョン攻略の行えるAランクへと昇格をさせてしまおうという話が上がった。


 というか私が上げた、あれは一学生としておくべき存在じゃあない。


 それと里々ちゃんと乱丸さんがCランクになることが決定し。

 縞島さんのランクをEからDランクへの昇格するよう学校側に打診。

 暗木さんはBランク昇格を拒否、他居住区の攻略隊への成果の共有も嫌がった。


 実際、全員そのくらいの活躍はしたし今まで組んだパーティでもぶっちぎりで手応えを感じたメンバーだった。


 とにもかくにも。


 乃本の活躍は異常だった。

 あいつの実力は常軌を逸している……、三十年間も千歳ダンジョンに潜っていたなんて与太話を信じるわけじゃあないけど。


 少なくとも単独でのダンジョン攻略を任せるに足り得る実力はある。


 それを伝えるために乃本の部屋にやってきたんだけど…………、どう伝えよう。

 いや別にただ「あんたAランクになったから」って伝えて、単独ダンジョン攻略許可とか攻略隊施設利用やら報告業務とかボディカムによるライブ配信についてのこととかを説明するだけなんだけど。


 


 いやそりゃあ乃本のAランク昇格の言い出しっぺは私だから、私が伝えんのはわかるけど。


 なんか乃本を褒めたくない。

 なんか感謝を伝えたくない。


 いや嫌い……ではないと思う。

 二度命を救われて、ダンジョン攻略での活躍を目の当たりにして。

 嫌う理由はない。


 まあ一応段取りとしては、学校側と合同で行われる中規模ダンジョン攻略打ち上げパーティーで乃本のAランク昇格発表をするらしいからさっさと本人に伝えとくべきなんだけど。


 うーん……、どうするか。いやまあ適当に、パッと終わらせよう。


 私はドアをノックする。


「なんだー? ドアは叩くんじゃなくて引くんだぞー」


 女の声。


「おお? なんだ? なんの用だ小娘」


 ドアを開き、そう言いながら現れたのは。


 


 でぇ……っ、でっかい……!

 え、ええ……おっぱいってこんなことに……ええ? 脚が長すぎる上に、つるっつる! 腰のくびれとおしりへの緩急が……嘘でしょ……?

 必要最低限の体毛しかない、え……整えて……他人の裸体をここまでちゃんと見た事はないけど、自分と比較した時の美しさがとんでもない……っ。

 髪の毛も黒くて真っ直ぐで……細くないのに柔らかそうで、なんかもう眩しい!


「誰か来たのか? って馬鹿、流石に服を着ろよ……わざわざ脱衣所作った意味が――」


 私が謎の超弩級美人に目が眩んでいたところに、飄々と乃本がそう言いながら現れる。


「なっ、なななな! なにやってんのよ‼ あんたたち!」


 私は半ばパニックになりながら、問いただす。


 いやマジなにやってんの? 学校施設よ、ここ。


「あー、向水か。風呂を作ったから試しに動かしていた、俺が共有浴場使うの良くないだろ」


「なかなか良かったぞ。こざっぱりする」


 慌てる私をよそに、二人はあっけらかんと返す。


 え? いや私がおかしいの? いやそもそも誰なのよこの人……あ! そうだこの人! この間の小規模ダンジョン攻略講習の時にもいた人だ!


 え、なに……いるの? そういう感じの人……?


 いや別に、私には関係ないし……人口回復の観点から見たら本来なら乃本は政府保護管理下で精子提供などを行わなくちゃならないわけだ。

 大昔の倫理観でいうなら、学生の身分でこういうのはあんまり褒められたことじゃあないんだろうけど。

 日本人口はピーク時から半分になり女子率99.999パーセントの現代において、乃本のように健康で若い男性は一人でも多く子供を作るべきではある。


 でもなんか……、なんか。


 なんかめちゃくちゃ、


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