あいつらは基本的に攻略者は強力な戦闘ペットを持ってダンジョンに潜れる人員が確保出来ればいいんだ。その辺は初期から変わってない。
それに乃本百一の戦闘ペットは人語を解するらしい。
かなり流暢にコミュニケーションが取れるとのことだ。この時点でかなり脅威ランクが高いと思われる。
正直、一定以上の有用性なら俺がかなり過剰に報告を上げればいいんだが。
この確認を兼ねた試験で、乃本百一の戦闘ペットのヴィオラは第二格技場の屋根を吹き飛ばした。
どうにも二十メートル級にまで巨大化して、屋根を頭で突き破ったらしい。
風船のように膨らんだり身体を伸ばしたりっていう変形ではなく、質量や強度まで増やしている。
この有用性を手札に、俺は乃本百一の入学をごり押した。
というか半ば事後報告で色々と手続きを行った。
迷宮災害と女体化症候群の混乱で戸籍やら死亡届やらがかなりしっちゃかめっちゃかになった。
死んだ人間が生きてたり生きてると思ってたら死んでたり、わりとちょっと前までよくあったことだ。
さらに日ノ本特殊防衛人造超人は戸籍とかがわりとふわっとしてるというか、偽装されていたりしている。日乃とか乃本とか政府が作った姓に組み込まれている。
経歴やバックストーリーを設定するのは容易だった。
二十年前くらいに奇跡的に生まれた男児が迷宮災害被害の混乱で出生未登録のまま育った。迷宮災害の際に共鳴し戦闘ペットを得た。戦闘ペットは強力で、推定滅災級以上。
謎の例外的男子転校生。
そういうことにして、勝手に編入させた。
いやー大変だった。
まあ工作自体は簡単だったが、問題はその後だ。
若く健康な女体化症候群完全耐性を持った男というのを政府は想像以上に欲しがった。
まあ、女体化症候群対策は急務だ。男を増やさなきゃ日本は滅びる。
そして恐らく、男に戻れるんじゃないかって希望を持っている輩が政府の中に相当数いるっぽい。
乃本百一というサンプルを必ず手中に収めたいのだろう、男に戻るとか以前に人間として日本を守ってみせがれってんだ。
それが男……いやこういうのは良くねーんだっけか。まあ多様性だとかは国防の中ではゴミクズ以下の無価値どころか有害なものだ。差別や区別なんて言葉は、防衛や警戒をこじ開けようとする奴らの常套句だ。
とにかく、学校に対して政府から乃本百一の引渡し要求がきた。
のらりくらりと戦闘ペットの暴走やらコントロールを覚えないとならないとか体力的な測定は学校でも行えるとか適当に躱していたが。
強制力の高い執行をチラつかしてきやがった。
そろそろ役人の家族でも拉致ったり、なけなしの爆薬巻き付けて政府関係施設にでも交渉に行くか迷っていたところで。
札幌近郊の中規模ダンジョンで、迷宮災害が発生した。
俺はこの機会に乃本百一の超人性を露呈させることを企んだ。
乃本に惚れた向水が防衛戦とダンジョン攻略へ推薦を行った。
いやはや優秀だ……俺が推薦するよりAランク攻略者の推薦の方が力がある。
俺は独断で学校側としての許可を出した。
さらに乃本が要請した縞島成子の攻略参加も許可した。
日ノ本特殊防衛人造超人は手札があればあるほど、選択肢があればあるほど輝く。
一定以上の成果を出すように願いつつ、向水のボディカメラによるライブ配信を見ていた。
流石に日ノ本特殊防衛人造超人だ。基礎性能は九十九と遜色ない。
この段階で見るやつが見たら乃本の超人性は理解出来るんだろうが馬鹿な政府の役人たちはこれじゃあわからない。ただ喧嘩が馬鹿強い若い男が危険を冒しているようにしか見れない。
もっとわかりやすく、圧倒的な超人性能を見ることが出来れば……。
そう思っていたところで、乃本小隊は転移トラップで最下層へと跳ばされそのままボス討伐へと乗り出す。
まあここからは圧巻だった。
ヤマタノオロチ型の滅災級ボスモンスターを、少人数で討伐。
全員が役割こなし、活躍していた。
戦闘ペット、ヴィオラの圧倒的な力と。
日ノ本特殊防衛人造超人、乃本の超人的な実力。
これらを余すことなく映したライブ配信だった。
最後は乃本とヴィオラの合体攻撃によってヤマタノオロチ型は討伐され、中規模ダンジョンは消滅した。
俺は九十九と同等の性能を想定していたが……運動性能だけでいうのなら九十九を凌駕していた。
日ノ本特殊防衛人造超人を俺は九十九しか知らないから、全体比較は出来んが個性というか各超人には特性があるのかもしれない。
中規模ダンジョン消滅とほぼ同時に俺は乃本のランク引き上げをする為の資料を制作、さらに制作中に向水が攻略隊へ乃本のAランク昇格を提言したのでそれに付随するかたちで資料を提出しアシスト。
これにより乃本のAランク昇格が決定。