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15・最強黒竜、変える気はなく

01私に迷いはない

 私、黒竜王ヴィオラは主様とその他小娘共と一緒に何処かに向かって旅をしている。


 あまりにも興味がないのでどこに行こうとしているのとかよく聞いてなかったが、どうにも他の七竜をぶっ殺しに行くようだ。


 大規模ダンジョンってのが、七竜の迷宮の話だったらしい。段々と気配が近づいてきているので気づいた。


 この気配はだ。


 赤は私以外馬鹿な七竜の中でも、緑に次ぐ馬鹿だ。

 当然、気持ち悪くて嫌いなので殺すのは全然構わないのだが。


 しかし赤か……七竜との殺し合いは面白くない、噛み合わないし平気で逃げる癖に負けも認めない。

 最後まで付き合う気がないのに喧嘩をふっかけてくる、気持ちが悪いし気分も悪い……負けることはないがやる気も起こらない。


 だが主様と一緒に他の七竜を蹂躙するのは、それなりに面白そうだ。


 この黒竜王を倒した主様が、他の七竜に後れをとるようなことは有り得ない。そもそも私は七竜最強だからな。


 むしろ大人しくしているが、悪樓もこの世界に存在している方が脅威ではあるが悪樓も悪樓で主を見つけたようでしばらくは問題ないだろう。


 前の世界では悪樓に一度世界を滅ぼされている。

 あれは目の届くところに置いておいた方が良い、負ける気はないが厄介なのには変わりない。


 そんな悪樓を含めた主様率いる迷宮攻略分隊は『おながわ』という町へとやってきた。


「退屈だ主様よ。ほどよく殺し合わんか」


 私は第五形態で主様の背中から抱きついて、殺し合いに誘う。


 考えてみたら迷宮を出てから全然やり合ってない。

 久しぶりに一回、ドロドロに殺し合いをしても良い頃だろう。


 なんか宿の部屋で主様はなにやら武器やら服やら食い物を並べて数えていたので、ちょうど暇だと思った。


「ほどよく殺し合いなんかできるか、準備と休息を終えたらすぐ出発するからな。後これ今ちゃんと忙しいんだからな」


 後ろから抱きつく私から上手く抜けながら、主様は返す。


「ふんっ、じゃあ散歩してくるぞ! 良いのか! 散歩に行ってしまうぞ!」


 私は主様の態度に拗ねて、そう言いながら扉に手をかける。


「じっとしてられんのか……。壊すな襲うな怪我させるな、あんまり迷惑とかもかけるなよ。迷子になったら周りの人に道を聞け」


 主様は呆れたように私に注意する。


「はあ……主様じゃないんだから迷うわけないだろ……私は迷宮の王だぞ。私に迷いはない」


 私も主様の注意に呆れて返す。


 まったく……迷宮で私の元へ辿り着くまでに十年かかった主様と迷宮を生み出す黒竜王たるこの私を一緒にするなど……。


 まあとりあえず暇つぶしに第五形態で適当に歩き回って、人らの暮らしを見て回った。


 やはり女だらけだな。

 そして脆弱なものだらけ、本当に白が余計なことをしたんだろう。


 人らは減らさない方が強い個体が現れやすい、強い個体が現れてくれた方が私とやり合える者が増えて楽しくなるのに。


 そんなこともわからぬ馬鹿……まあ仕方ない、私以外の七竜はもれなく馬鹿で気持ち悪いのだから。


 しかしそれほど興味のあるものもないな。

 前にいた『さっぽろ』の方が人らも多かったし、建物も多かった。ここは田舎のようだ。


 そろそろ戻って主様と一緒に風呂にでも入ろう。

 裸で主様とくっつくのは、好きだ。


 さてさて……ふむふむ。

 ほう……なるほど? そうか、いやはやこれはこれは。


「……迷った」


 私は現状を正確に呟いた。


 言い訳を述べるなら、この町は似たような建物が多すぎる。

 なんか作りやすさを重視しておんなじ形の家を並べたみたいな。そんな感じの作りだ。


 そして前の世界とはやはり文明発展度が違う、まあ前の世界でそこまで人らの生活に注視したこともないが。建物やら道やらが、なんかぱきっとしている。綺麗な直線が出ている。


 どうにもこの世界は、思いと想いの重さで事象に影響を及ぼす力……現実改変をあまり用いてないようだ。

 世界の理をそのまま使い、その範疇で発展させている。


 現実改変、前の世界で人らがと呼んでいたものはこの世界にはないらしい。


 同時に、我らのような存在も居ないようだ。

 ことわりを覆す程の進化は起こっておらず、人らが世界の頂点に君臨している。


 しかし、脆弱な人らが現実改変を用いずとも災害にも負けず滅ぶこともなく繁栄できるものなのだな。

 だが、だからこそ我々が迷宮ごと跳ばされてきたことに対して対応が出来てないのだろう。


 なんて感心したり考えたり飽きたりしながら歩いていたら迷ったのだった。


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