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16・ダンジョン超人、進行す

01悪くないペース

 俺、乃本百一は迷宮攻略分隊として七大都市奪還を目指し現在は仙台にて大規模ダンジョン攻略を遂行中である。


 〇七〇〇、女川居住区を出発し仙台近郊へ。


 仙台は、かなり荒廃していた。

 三十年以上前に訪れたことがあったが、面影はあるものの変わり果てた姿だった。

 モンスターも多く、まともに戦っていたらキリがないので縞島の運転で一気に突っ切って進む。


 同日〇八〇〇、太白山ダンジョンへ。


 仙台は太白山ダンジョン。

 がっつり洞窟だった千歳ダンジョンと違って、石レンガ造りの内装。

 かなりしっかり堅牢な作りで、道も広い。


 札幌攻略隊にあった情報と、さらに女川居住区で手に入れた情報によって三十階層までの経路やトラップについては頭の中に叩き込んである。


 故に、三十階層までは最低限の戦闘を挟みつつも縞島のダビンチ高機動車で一気に踏破する。


 同日一九〇〇、三十階層まで踏破完了。


 悪くないペースだ。

 出現モンスターやトラップの実際に見た所感を含めたデータも取りながら、半日の進行で三十階層。


 大規模ダンジョンは一つの階層も広いしモンスターも強く賢しい。

 消耗を抑えながら戦闘を挟んだり、戦闘を回避して迂回してきたわりにはなかなかのペースだ。

 俺が三十年前に迷宮作戦群として千歳ダンジョンに潜った時よりも遥かに早い。事前情報が大きすぎる。


 しかし、三十一階層からは経路はないので探索を行いながら進んでいく必要がある。

 ここからはかなりじっくりと腰を据えて、臨機応変に撤退なども挟みながら進行していかなければならない。


 安全地帯にて、仮設拠点を置いて休息を挟みつつダンジョン攻略について思案する。


「大規模ダンジョンをこのスピードで三十階層まで来たのはとんでもない進捗だけど、やっぱり出現モンスターが強いわね。最低でも猛災級、ここからはさらに強くなる」


 ミライが焚き火の前に椅子を置いて座り、ここまで出現したモンスターのリストを端末で見ながら言う。


 ダンジョン内は気圧や酸欠にならないような調整されているので、焚き火で一酸化炭素中毒とかにはならない。念の為。


 先ほどまでミライは拠点警戒を行っていて、今は暗木と交代して休憩に来た。

 喜怒と里里は食事の準備、縞島はダビンチを仮設拠点へ変形させて休息中だ。


 いやはや本当に快適な攻略作戦だ……。

 交代で休息が出来るだけでも体力の温存や回復が行えるのに、縞島がダビンチを変形させて仮設拠点を置いて暗木のマー坊という水源を用いてキッチンや風呂やさらには洗濯機のような水場まで完備している。

 糧食もマジックバッグに六人で二ヶ月以上分の準備がある。


 革命的過ぎる……千歳ダンジョンで十年単独進行していた時はもう睡眠どころか足を止めて居られる時間を確保するのも難しかったし食事も手当たり次第にモンスターを食ってみて、腹を壊したり蕁麻疹出しながらなんとか繋いでいた。


 これならかなり消耗を抑えて進行が可能だ。


「まあそうだな、しかも進捗は悪くない……しかし千歳と同じなら二百五十六階層はあると考えて良い。ここからさらに探索を行ってとなると補給やで何度か地上に戻ることも考えると、最下層到達には最低でも半年以上はかかるだろう」


 俺は端末に本日の所感を纏めながら、ミライの言葉に返す。


 あまり主観に偏った情報にはしたくはないが、こういった感覚的な所感は情報に厚みを持たせることがある。


 小さく積み重ねて、進めば進むほど攻略は盤石となっていく。


 千歳では最下層へ辿り着くのに十年、まあこの装備や情報量で十年もかかるわけはないが時間は掛けていられない。

 焦るつもりはないが、情報収集は迅速に行いたい。


「いや、それはないぞ。ここはそんなに深くない」


 俺の膝の上に座っていたヴィオラ第二形態は、俺の言葉を否定し。


「そもそも七竜の迷宮は現実改変を最大に使えば五百十二階層まで広げられる、そして下僕や罠やら複雑さを生み出せば半分は力を使うことになる。これで二百五十六となるが、ここはさらに見た目に拘って無駄に力を使っている。だから百二十八ってとこだろうな」


 つらつらと、攻略隊のデータベースにもないダンジョンの仕組みを語った。

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