「待ってなにそれ……、ダンジョンの発生にそんな法則があるの? っていうか七竜ってなに? かなり攻略隊の研究より具体的な数字とか出てきてるけど」
衝撃的な新情報にミライが食いつく。
「あ? 懐くなよ小娘、殺すぞ」
「殺すな馬鹿。それに俺も聞きたい、なんだその七竜ってのは?」
ミライへ反射的に殺気立つヴィオラを俺はすぐに窘めて頭を撫でて問いかける。
「んー。七竜は、この黒竜王を含む七体の竜のことだ。黒、白、赤、青、黄、緑、紫の七体だ。この迷宮の主は赤竜王だな、気配でわかる」
頭を撫でられ気持ちよさそうに目を細めて、つらつらとヴィオラは答える。
「おい待て……、その赤竜王ってのはおまえと同等の力をもっているってことなのか……?」
ヴィオラの回答に、俺は驚愕しながらさらに問う。
俺はヴィオラを倒すのに二十年掛かったんだぞ……、六人とさらにヴィオラがいるとはいえどれだけの損耗や時間を想定しなくてはならないんだ。
「馬鹿を言うな主様よ……。私は七竜最強だぞ? 赤とは格が違う。まあ奴の迷宮内でやり合うとなれば不利ではあるが、それでも負けることはない。主様も知っているだろう? 私は強い」
俺の問いに、ヴィオラは呆れながら返す。
「推定
ミライはヴィオラの語る衝撃的な事実に、驚愕しながらも納得して漏らす。
流石に冷静だな、これには俺ですら驚いてはいるんだが。
しかし確かに、ヴィオラは千歳ダンジョンのボスであり人語を解する。
これ以上ない情報源だ……、もっとちゃんと聴取を行うべきだった。
共鳴現象の影響なのか、俺はヴィオラと繋がっている感覚が強くある。
言語化が難しいが、凄まじい信頼というか一緒にいるのが当然のように感じてしまっている。
だから失念していた。元々はモンスターを統べていた、別の世界からやってきて迷宮災害で日本を壊滅させた災害の中心である事実を……。
「…………赤竜王について知るうる限りを話せ。そしてこれが終わったら他の七竜についても話てもらうぞ」
俺はヴィオラへと語りを促す。
「ああ別に構わんが……、それほど知らんぞ。興味が無さすぎるのでな」
ヴィオラはそう前置いて、語りだした。
「まず赤は馬鹿だ。私以外馬鹿しかいない七竜の中でも上から数えた方が早い馬鹿だ。単純に頭が悪いし頭もおかしい」
気怠げに、煩わしそうに赤……赤竜王について語る。
「赤は前の世界では人らを隷属させ、自分を頂点とした世界の支配を目論んでいた。まあ上手く行ったことはなかったがな、人らのことを舐めすぎていた。稀に現れる想定外の強個体になんだかんだで返り討ちにされていた」
この辺の話はかなり貴重な話だ。別の世界での文明というか人類の存在はダンジョン内のアイテムなどから判明していたが……、具体的に証言として出てくるのは様々な分野の学者が飛びつくようなものだが。
ここにいるのは攻略者であり、今の日本に異世界というロマンを追い求める余裕はない。
「恐らく、やつはこの世界でも同じことを目論んでいる。それ以外にやることもないしな。まだ動きがないのは、この世界の強個体がどれくらいなものかを探っているからだろう。迷宮から下僕を放ち、迷宮を増やして人らの武力を探っている。ここらの迷宮は赤の色が濃かったのはその為だ」
さらに続けてヴィオラは、赤竜王について語り出す。
確かにこの近隣のダンジョンもこのダンジョンも人工物型や動物型で武装持ちが多いという共通点が見られたが……いや、それより無視できない情報。
人間を隷属……自身を頂点とした世界の支配……?
そんなことをこの日本で? 国家転覆を目論んでいる思想犯ということか?
ヴィオラのように高い知性を持った存在であるとなると、何かしらの思想を持っていることもある。
しかもヴィオラと同じく強大な力を持った思想犯……いや
高い知性を持ち、ヴィオラのように人語を解しているのなら対話の可能性もチラついてくる。