目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第127話……外務省の会見劇

――グングニル共和国艦隊は、クレーメンス帝国の生体艦隊に苦戦していた。



「敵影確認!」

「敵、甲殻型宇宙海獣28体、軟体型宇宙海獣47体!」


 クレーメンス帝国の操る生物は、超巨大なカニやエビのような甲殻類の宇宙海獣と、同スケールのイカやタコのような宇宙海獣で構成されていた。



「全艦艇、総力戦用意!!」

「全砲門開け! 主砲斉射!」


 戦艦や重巡洋艦の大口径ビーム砲の光条が、宇宙海獣たちを次々に襲う。

 凄まじいエネルギー量が、大質量体に叩きつけられた。


 しかし、超硬質の外皮や、超再生力の軟体にほとんど効果は現せなかった。



「命中確認、されど効果極小を確認!」


 砲術担当士官からの情報を聞き、グングニル共和国の指揮官の表情は歪む。



「ここより後背は、人口が多い有人星系だ! 撤退は許されん!」


「了解! 砲戦継続!」

「ミサイル発射!」


 しかし、効果は虚しく……、



「敵触手に、次々に高エネルギー反応確認!」


「いかん! 全エネルギーをシールドに回せ!」

「了解!」


 ……しかし、この後に共和国艦隊は残骸と化し、宇宙の藻屑となった。


 クレーメンス帝国艦隊は更に、惑星攻撃戦を展開。

 抵抗する有人惑星には、惑星破壊砲を使い、容赦なく粉々にしていったのだった……。




☆★☆★☆


「えっさ、ほっさ」

「今度の領主さまは良い人だべな」


「んだべ」


 惑星ベルの地表は、海面が多く陸地は少なかった。

 しかし、誘致民の増加により、どんどん農地が広がり、今期の予想食料生産高がうなぎ登りだった。



「旦那様、緑が広がっていきますな!」


「……ああ、奇麗だな」


 私は都会育ちだったので、田舎暮らしに憧れたこともある。

 だが、そのほのぼのとした理想の情景は、目の前に実現された形で広がっていた。


 澄んだ小川に水車が回り、黄金色の耕作地が広がっていた。




☆★☆★☆


「造船の具合はどう?」

「順調クマ♪ 人手不足が解決して嬉しいクマ♪」


 移民の大量受け入れで、従業員が補充された造船部門のクマ整備長はご機嫌だった。

 彼の整備服は油で汚れ、充実した忙しい様がよくわかる。


 ここ準惑星ツーリアは、惑星ベルと違い、自然が乏しい岩石惑星である。

 よって、造船を中心とした工業を重視させていた。


 そのための資源調達を行うために、宇宙港を整備し、商人を呼び寄せた。



「いらっしゃい、いいお酒がはいってますよ!」


「お! いいな、寄らせてもらおうか!」


 その商人たちを相手にする飲食店が多く出店し、準惑星ツーリアは繁華街を伴った商業的宇宙港へと発展していた。



 その準惑星ツーリアには、ハンニバル専用の隠しドック施設がある。



「おかえりなさい!」

「おかえりポコ!」


 ここは、私の初めてのマイホームといった感じだった。

 地球においても、いつかは家を建ててみたいものだが、いまはここだけで十分だった。



「今日のご飯はなにかな?」


「ビーフシチューですよ♪」

「やったポコ!」


 私はここ準惑星ツーリアで、アンドロイドの副官殿とタヌキの砲術長殿と暮らしていた。

 この星は、元古代人の貴族の隠れ別荘で、とても居心地が良かったのだ。



「今日も美味しいね」

「美味しいポコ!」


「ありがとうございます、作り甲斐がありますわね♪」


「お替わりポコ!」

「わたしもください!」


「はいはい!」


 副官殿が作ってくれるご飯は、毎日美味しかった。




☆★☆★☆


 久しぶりに、ログアウトする。

 例の如く、シャワーを浴びて、出来合いのご飯を食べ、テレビでニュースを見るくらいの物である。


 ……テレビをつけると、向こうの世界の話をやっていた。



『我がN国の同盟国、クレーメンス帝国は素晴らしい国です!』


 政府外務省の報道官のコメントだ。


『彼らの行いは素晴らしく、地球から外部勢力を一掃してくれるに違いありません!』


 報道官にマスコミから、


『いつになったら彼らが地球に援軍に来てくれるのか?』


 ……ときかれ、


『可及的速やかに助けてくれる』


 と答えていた。


 ……それっていつになるのかと、いつも不安になるコメントなんだけどね。

 が、それは少し裏切られる。



『私が一か月後に何とかして見せます!』


 報道官に紹介された20代くらいの若い男が、突然そんな発言をし、皆を驚かせた。



『皆さん、私は金山豪というものです。向こうの世界で宇宙艦隊の提督をやっているものです!』


『おー!!』


 マスコミが一斉に食いつく。


 ……凄い奴だな、と正直に思う。

 自分だったら、あのようなところではしゃべる度胸はない。



 私の予想では、ワームホールの向こう側は、あのゲームの世界だと思う。

 それがなぜ、現実世界とつながりをもてているのかもわからない。


 ……多分、この金山という人間はゲームをしている人間ではないかと思う。

 どうやら、クレーメンス帝国の提督の様だ。



「……まてよ」


 私はひとり呟く。


 私が知っているクレーメンス帝国の提督で考えると、リーゼンフェルト氏かトロスト氏ではないだろうか?


 ……たしか彼らは、敵対勢力の民衆を売却してるよな?



 そんな奴等が、はたして地球を救ってくれるのだろうか?

 私は急に不安になった……。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?