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チョコレート


 学校に通うモテないやつらの中での学年末最大のクソイベントとも言える、憎き『バレンタインデー』が数日前にすぎ、新たなカップルや関係性が変化した生徒達のせいで、どこかフワフワした感じのする校内。


 もちろん浮わついた感じになれるのは『貰った』やつと『渡した』やつだけなのだが。


「い~ずみ!!」

「来たな浮わついた敵め」

「だぁれが敵じゃ」

 そう言いながら俺にヘッドロックをしてくる眞下昇ましたのぼる

 憎き日に『本命チョコ』を貰い、クラスメイトの女子と付き合い始めたばかり。


ーーやっぱ敵だな……。

 昇のヘッドロックを外して、ため息をつくと同時に、俺の顔の前にピンク色した何かが視界に入る。


「なんだこれ?」

「頼まれた」

「何を?」

「和泉に渡してってだよ」

「だれから?」

「それは、を見ればわかるんじゃね?」

「これか?」

 目の前で揺らされたものを掴みとる。


ーーん? なんだ? チョコレート? と……手紙?

 添えられた手紙の裏側に小さな丸い文字を見つける。


飴宮桃子あめみやとうこ


 クラスメイトの名前が書かれているのを見て、そのままその名前の人物がいる席の方へ視線を移す。


 友達と話していた飴宮だったが、俺の顔が自分の方へ向いてるのを見て、顔を真っ赤に染め下を向いてしまった。


ーーえ? こ、これって……。

 胸の鼓動が早くなる。


「良かったな。これで和泉も『敵』だって言われるお仲間だ」


ーーやっぱりそういうことなのか!?

 昇を遠ざけてから、添えられた手紙を読む。そして俺は先ほどまでとは比べ物にならないくらいの、胸を打ち付ける早鐘にしめつけられる感覚を味わった。



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