「ってことでアンジー、毛布だしてくれる?」
「あら、八白さん気が付いていたのね」
そそくさと岩陰から出てくるアンジー。彼女が視界に入った途端、
「だって上にランフォちゃんが来て……あ、いまはランちゃんだっけ」
距離を取って飛んでいるが、バッサバッサと翼音が聞こえる。
元々は初代新生の
白いスーツをビシっと着た、オレンジ髪のちょっとお姉さんタイプ。新入社員の教育係を任されそうなキャリアウーマンって感じ。
「ところでさ、八白さん」
「あ、無理。ウチにも理解不能」
「……だよねぇ」
思わずアンジーと顔を合わせて苦笑してしまった。やはり彼女も、赤デカいのとトリスがベルノに従っているのが不思議なのだろう。
「しかしまあ、派手にやられたもんだね~。ボロボロじゃん」
「うるせぇ……オレを殺そうとしておいてどの口が言うんだよ」
「あん? もっかい刺してやろうか?」
いきなり戦闘モードに突入するアンジーと初代新生。二人とも目がマジだ。
異世界十年選手の迫力に、メンタルで対抗する不良少女。どこにそんな力があるのか不思議でしょうがない。
「こらこら、やめなさいって。初代、アンタ動けないっしょ」
「ああ、貧血なのか。病弱だなぁ。お子ちゃまは」
煽りながら、スッと毛布を取り出すアンジー。
「若さに嫉妬か? うぜぇよ、お・ば・さ・ん」
「なんだとコラ? 女子大生に向かってなにほざいてんだよ」
「君たちもうやめとき~」
アンジーから受け取った毛布を初代新生の身体に巻き、冷たくなった手を突っ込ませた。抵抗するかと思ったら、そんな力すら残っていなかったようだ。
……こんなんでよくもアンジーと怒鳴り合っていたもんだ。
ウチが初代新生の手当てをしているのが気になったのだろうか、ティラノがそそくさと様子を見にきた。
ウチの肩越しから顔を出して、心配そうに声をかけてくる。
「
「大丈夫。血が足りないだけだから、モリモリ食って寝ればその……うち……に……」
……あれ? なんだこの違和感は。なんかおかしいぞ。
「どうしたんだ? 亜紀っち」
「う~ん、なんだろう……?」
――!!!
「って、ティラちゃん、なんで初代を
「なんでって……なんとなく?」
「ちょ、なんとなくで名前呼びするとかナシナシのナシでしょ」
「……うるせえな。やきもちかよ」
悪態だけは絶好調の初代新生。
「やきもちとかそういうんじゃなくて! いや、そうなんだけど、そうじゃなくて。名前呼びってのはもっとこう、なんつーかさ。あああ、もう……」
名前呼びってマブの証じゃないのか? 初代新生がマブ認定されたってこと? いやいやありえんって。
「ティラノさんそこんとこどうなのよ」
「はぁ? そこってどこだ?」
二人の仲なんぞ認めん、ウチは許さへんで。
「仕方がない……」
……こうなったら二人の仲に割って入っちゃる!
「今後お前は“
「……なんだそれ。止めろよ、意味わからねぇ」
力を振り絞ったツッコミを最後に新生は寝息をたてた。少しは心を開いでくれたのだろうか、楽しそうな寝顔だ。これはよい兆候と受け取っておこう。
それはそれとして、体温の低下が少々気になる。
「
「ネネ、それならまかせるニャ!」
「ん?」
まかせろって……まさか、ベルノが暖めるのか?
「ベルノのじぇんとるめん、バルログの出番ニャ!」
「ですから
「ウヒョヒョ……」
会話が成り立っているようないないような。……ここでなにがあったのか、聞くのが怖くなってきたよ。
「バルログは炎の魔人ですの。すぐに暖かくなりますわ」
と、ラミアから説明があった。そういえば二人とも魔王軍だった。なるほど、この図体で全身から熱を発生させればすぐに暖かくなるだろう。
バルログの肌の色が赤みを増してくると、ぽかぽかと暖かく……暖か……く……汗が噴きでて……
「……暑いわ、セーブしろ!」