「
「ええ、人類の基準で言うと、女子高生でありんす」
「……マジもんJKがもう一人いたとは」
〔まさか、ですわね〕
……女神さんですら驚いているじゃないか。
でもこれで一つスッキリした。
「つか、魔界に学校ってあるんだね」
「当然ざます。教育なくして魔法技術の習得はござりんせん」
……もっともな話だ。言語とか術式の構成とか、魔法なんて簡単に扱えるシロモノじゃないのだから。
「ところでさ、デモニック・バースってのをすれば
「えっと、それはそうなのざますが……」
“解放”を意味する単語が出た瞬間、ティラノの目が輝く。今まで大人しく話を聞いているだけだったのに、グイグイと身を乗りだしてきた。
「それそれ。ちゃっちゃとなんとかバースってのして戦おうぜ!」
「ティラちゃん……それはそれで大変なことになるから」
「え~、亜紀っちぃ。イイじゃんかよ」
「いいっスね。やりましょうよ、姐さん!」
いやいや、『やりましょう』じゃないって。よくないって。それをよしとするのはバトルマニアの君たちくらいだぞ。
「確かに、デモニック・バースを行えば戦闘力は飛躍的に上がりんす」
「一応さ、敵方だからやって欲しくはないけど……でも、なんでやらないの?」
「転移門の事は?」
「もちろん知ってるで」
ある程度まで魔力を封印しないと通れないって話を聞いた。でも、遠征の為に弱くなる必要があるって、本末転倒だよな。
「魔力を抑える術法は、魔界でしか行えないざます。こちらの世界で開放した魔力を、再び封印する方法はござりんせん」
「え? それって……帰れなくなるじゃん」
「そうです。そもそも今回の指令は人類が出現しないようにする事で、この世界を占領したり破壊したりする事ではありんせん。目的を達成したのち、魔界に帰る必要があるざます」
そう言う事か。家に帰るまでが遠足だぞ~ってやつ。
「だからみんな、負けても開放をしなかったんだね。でも……それだとバルログは帰れないの?」
「……はい」
「なんか扱い酷いな~」
バルログもそれだけの覚悟があって解放したのだろう。それでも打ち負かされて、帰ることもできずに……なんか
今はみんなと楽しくやっているけど、帰るべきところへ帰れないってのは辛いと思う。そこがどんな場所であっても、だ。
「あ、でも女神さんなら転移可能とか?」
〔不可能ですね〕
「そか~。さすがに無理だよな」
〔その言い方はちょっと違います〕
ウチの言い方が悪かったかな? 女神さん、ちょっとムッとした声だった……
〔可能ですが、行う事はありえないという話です〕
「それはなんで?」
〔敵である魔王軍の為に手を貸す神がいると思いますか? ましてや、転移に手を貸す状況というのは“魔王軍が解放して強くなった時”です。『帰りは送りますから強くなってください』なんて、わざわざ敵が強くなる手助けはいたしません〕
「……そりゃそうだ」
立場的に手を貸す理由は一つもない。女神さんたちからすれば、解放なんてさせずにサクサク終わらせた方がよいのだし。
「あ……」
〔どうしました?〕
「あのさ……転移門ってのをぶっ壊せば、まるっと解決するんじゃね?」
そうだよ、その手があるじゃんか。魔王軍のみんなを魔界に帰してから門を壊せば……
〔確かにそれは手段として考える
「なんかめちゃくちゃ気になる言い方……」
〔魔力で空間を捻じ曲げて二つの世界を繋いでいるのです。それを破壊した時、双方の世界にどのような影響がでるかわかりません。そもそも、誰がどうやってそれをやるのかという問題もありますね〕
「世界への影響……か。可能性ってだけでも手をだしにくいのは確かだな」
それに、破壊できるとすれば“魔王軍の誰か”って事になるけど……そんな裏切り行為は頼めないな。
「亜紀っち、ちょっといいか?」
アイディアにつまり話が進まなくなってきた時、ティラノが真剣な眼差しで声をかけて来た。いつもとちょっとトーンが違う。
「少しの間なんだけどよ……」
「うん」
「チーム、離れたいんだ」
え……いま、なんて⁉