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第107話・解放しようぜ!

ミアぴ(ラミア)が学生だって!?」

「ええ、人類の基準で言うと、女子高生でありんす」

「……マジもんJKがもう一人いたとは」

〔まさか、ですわね〕


 ……女神さんですら驚いているじゃないか。


 でもこれで一つスッキリした。初代はつしろ新生ねおとラミアで話がかみ合うのは、JK属性だったからってのが大きかったのか。


「つか、魔界に学校ってあるんだね」

「当然ざます。教育なくして魔法技術の習得はござりんせん」


 ……もっともな話だ。言語とか術式の構成とか、魔法なんて簡単に扱えるシロモノじゃないのだから。


「ところでさ、デモニック・バースってのをすればミア姉(メデューサ)たちも部長(ドライアド)たちも強くなるんだよね?」

「えっと、それはそうなのざますが……」


 “解放”を意味する単語が出た瞬間、ティラノの目が輝く。今まで大人しく話を聞いているだけだったのに、グイグイと身を乗りだしてきた。


「それそれ。ちゃっちゃとなんとかバースってのして戦おうぜ!」

「ティラちゃん……それはそれで大変なことになるから」

「え~、亜紀っちぃ。イイじゃんかよ」 

「いいっスね。やりましょうよ、姐さん!」


 いやいや、『やりましょう』じゃないって。よくないって。それをよしとするのはバトルマニアの君たちくらいだぞ。


「確かに、デモニック・バースを行えば戦闘力は飛躍的に上がりんす」

「一応さ、敵方だからやって欲しくはないけど……でも、なんでやらないの?」

「転移門の事は?」

「もちろん知ってるで」


 ある程度まで魔力を封印しないと通れないって話を聞いた。でも、遠征の為に弱くなる必要があるって、本末転倒だよな。


「魔力を抑える術法は、魔界でしか行えないざます。こちらの世界で開放した魔力を、再び封印する方法はござりんせん」

「え? それって……帰れなくなるじゃん」

「そうです。そもそも今回の指令は人類が出現しないようにする事で、この世界を占領したり破壊したりする事ではありんせん。目的を達成したのち、魔界に帰る必要があるざます」


 そう言う事か。家に帰るまでが遠足だぞ~ってやつ。


「だからみんな、負けても開放をしなかったんだね。でも……それだとバルログは帰れないの?」

「……はい」

「なんか扱い酷いな~」


 バルログもそれだけの覚悟があって解放したのだろう。それでも打ち負かされて、帰ることもできずに……なんか不憫ふびんじゃないか。


 今はみんなと楽しくやっているけど、帰るべきところへ帰れないってのは辛いと思う。そこがどんな場所であっても、だ。


「あ、でも女神さんなら転移可能とか?」

〔不可能ですね〕

「そか~。さすがに無理だよな」

〔その言い方はちょっと違います〕


 ウチの言い方が悪かったかな? 女神さん、ちょっとムッとした声だった…… 


〔可能ですが、行う事はありえないという話です〕

「それはなんで?」

〔敵である魔王軍の為に手を貸す神がいると思いますか? ましてや、転移に手を貸す状況というのは“魔王軍が解放して強くなった時”です。『帰りは送りますから強くなってください』なんて、わざわざ敵が強くなる手助けはいたしません〕

「……そりゃそうだ」


 立場的に手を貸す理由は一つもない。女神さんたちからすれば、解放なんてさせずにサクサク終わらせた方がよいのだし。


「あ……」

〔どうしました?〕

「あのさ……転移門ってのをぶっ壊せば、まるっと解決するんじゃね?」


 そうだよ、その手があるじゃんか。魔王軍のみんなを魔界に帰してから門を壊せば……


〔確かにそれは手段として考えるならアリですね〕

「なんかめちゃくちゃ気になる言い方……」

〔魔力で空間を捻じ曲げて二つの世界を繋いでいるのです。それを破壊した時、双方の世界にどのような影響がでるかわかりません。そもそも、誰がどうやってそれをやるのかという問題もありますね〕

「世界への影響……か。可能性ってだけでも手をだしにくいのは確かだな」


 それに、破壊できるとすれば“魔王軍の誰か”って事になるけど……そんな裏切り行為は頼めないな。


「亜紀っち、ちょっといいか?」


 アイディアにつまり話が進まなくなってきた時、ティラノが真剣な眼差しで声をかけて来た。いつもとちょっとトーンが違う。


「少しの間なんだけどよ……」

「うん」

「チーム、離れたいんだ」



 え……いま、なんて⁉

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