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第136話・未来の社畜

〔あなたもこの時代から見ればかなり未来人ですね〕

「そういう誤魔化しはいらんで」

〔八白亜紀、私が未来人だとする根拠はなんでしょう?〕


「女神さんって、地球の歴史に詳しすぎるんだよ。昭和ネタとか通じるし。それにウチがいた会社の内情まで知っていたじゃんか」


 そう、さっきの違和感はまさしくそこなんだ。


 精神を病んで会社を辞め、その三年後に白亜紀ここに転生してきた。


 だから『酷い会社でしたからね』と内情を知っているひと言が、ものすごく引っ掛かった。


 それはつまり、ウチが転生するよりも“ずっと前から知っていた”って事に他ならない。


「あとさ、女神さん。声、震えてるで」

〔ふう……かないませんね、あなたには。推測通り我々は、あなた方の時代から二〇〇年ほど先の未来から干渉しています〕

「マジ? 二〇〇年先ってことはさ……」


 そう、ウチたちがいた令和の時代から


 それは確定事項、誰にも変える事ができない。


「女神さんは【2222年の2月22日22時22分22秒】の、二が十三個並ぶ”スーパーアルティメット猫の日スペシャルを体験してんだよね?」

〔いえ、それは今からです。その日は有給取りたいので、サクっと魔王軍を倒しちゃってください〕

「急に社会人じみてきやがりましたな……」


 結局の所、女神さんたちは“世界規模の歴史管理組織”とやらに属しているらしい。

 現在過去未来から異世界にまで、歴史に介入する者がいないかを監視しているって話だ。


「マジか~、なんで急にSFなんだよ……」

Science Fictionサイエンス・フィクションではなく、Survival Fantasyサバイバル・ファンタジーという事でどうかひとつ……〕

「こらこら、『どうかひとつ』じゃないっての。なんでそうおっさんじみた言い方を……って、そうか!!」

〔どうしました?〕

「女神さん、あんた……中の人男やろ」


 ……カカト落としの乱れ打ちが頭の上に降り注いできました。


 女神さんには色々聞きたかったけど、未来の話はできない決まりだと言っていた。


 過去に未来の情報を与えるとどんな影響がでるかわからないからだそうだ。


 ……つか『未来人です。と言っている時点で過去に介入しているのでは?』と思いはしたけど、さすがに白亜紀ではなんの影響もなさそうだ。


 そして女神さんは、“覚醒”について教えてよいか判断がつかなかったと言っていた。

 だから第一声をアンジーか初代はつしろ新生ねおの神さんに言わせて、責任をのがれようとしたのだろう。


〔ただでさえあなたに二十四時間張りついていなければならないのですから〕

「仕事増やしたくないってことか。女神さんも大概社畜生活なんだな……」





 ツッコミどころ満載の正体を知った所で、プチがぞろぞろと大勢引き連れて戻って来た。


「アンジーの恐竜人ライズちゃん、全員来てんじゃん」

「ああ、私が頼んだんだよ。せっかくの機会なんだしさ、見ているだけでも勉強になる。それに、手薄な所を襲撃されても困るしね」


 なるほど、もっともな話だ。ここに全員固まっていれば魔王軍も手をだしにくいだろう。


「では、誰から始めますかな?」

「——自分からでいいっスか?」


 居ても立ってもいられぬ様子で、ずっとソワソワしていたルカ。この間のグレムリン戦は不完全燃焼だったから、なおさら戦いに飢えているのだろう。


 海岸での戦いの時は、ティラノ・タルボコンビでドライアドと対等だったから、今のルカの力を量る目安にもなる。


 ……でも改めて考えてみると、魔王軍って相当強いヤツが揃っているって事なんだよな。


「さて……どこからでもかかってくるがよい。勝敗はなにも力だけで決まる訳ではござらんよ」

「初っ端から全力で行かせてもらうっスよ!」


 気合十分のルカ。すでに臨戦態勢だ! ってこの流れは……



「え~と……ルカ殿。なぜ脱ぐのでござるか……?」

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