「ところでプチちゃん、その頭につけているのってもしかして?」
彼女の頭の上には、黎明期の飛行機乗りがつけていたようなフライトゴーグルが乗っかっていた。
「えへへ~、いいでしょ。これ、アンジュラさんに頂いたのです。凄いのですよ、遠くが見えるのに両手が自由なのですぅ!」
と、ゴーグルをかけて両手を前に突きだすプチ。
そして彼女の言葉通りなら、形こそゴーグルだがレンズが組み込まれたメガネなのだろう。
……アンジーめ、双眼鏡借りパクってた事にやっと気がついたのか。
「それにしても、こんなニッチなアイテムがあるんだね……」
その時、ウチのうしろにニヤリと笑う影があった。気がついた時にはそいつはすでに……
「素材合成で作った、アンジュラ印の特性ゴーグルだよ!」
アゴチョキでドヤっていやがりました。
「え? これアンジーが作ったん?」
「そそ。一応錬金術もそれなりに極めてるからね」
「マジか……錬金術なんてめっちゃファンタジーじゃないか!」
さすが、異世界十年選手のアンジー。
「ウチも異世界に行って色々極めたいな~。チラリっ!」
と、女神さんを見たんだけど……。目を合わせようとしやがりません。その上距離を開けてきました。ちくせう!
「ところでところでアンジーさんや!」
「嫌な予感しかしません八白さんよ!」
「ウチにも……なにか作っておくれ。もちろん費用は払うぞ」
……ま、野菜でだけど。
「昔から原価厨ってのが嫌いでさ。物の値段って材料費よりも
どんなに小さいものでも“それ”を作るのに五時間かかるのならその時間分の対価が必要なのは当たり前なんだ。
「だからしっかりと払うで~!」
……もちろん、野菜でだけど。
「まあ、それはいいんだけどさ。いったいなにを作らせたいの?」
「亜紀さん超絶強化装備パック!」
「無理!」
「即答かよ。少しは考えよ? ね? ね? アンジーさん!」
この一言に心を動かされたアンジーは口に手を当てて……
「無理」
「三秒かよ!」
「大体“パック”ってなによ。一式作れって?」
ウチは“うんうん”と頷き、アンジーをじ~っと見つめた。彼女は『ふう』とため息をひとつつくと、話を進めるようにと目で促してきた。
「まずはどんなものでも斬れる剣と~」
「……あ、嫌な予感」
「それから絶対に斬れない盾と鎧」
「無理」
「三秒以上考えろって!」
アンジーはジャケットフードの中に手を突っ込むと、ボールペンくらいの大きさの棒を取りだし、ウチに手渡してきた。
「……なんすかこれ」
「それをしっかり握って念じれば、その人に合った武器になってくれる優れものだよ。最強装備は無理だけど
マジか、なんかスゲーアイテムじゃん。でも……
〔どうしたのです? 八白亜紀。いつものアナタなら飛びつくようなネタアイテムですのに……〕
「いや、なんつーかその……しょぼい武器になったら嫌かな~って」
〔なるほど、普段から自爆気味のアナタでしたらブーメランとかでてきそうですものね!〕
……そこまで言うかこの詐欺女神は。アンジーもケラケラ笑ってんじゃないよ、全く。
「よし……」
「お、八白さん覚悟決めた?」
興味深々なアンジーと女神さん。
この展開ならむしろブーメランがでた方が笑いがとれそうだけど、同時になにか大きいものを失いそうな気がする。
そう思ったらなんか怖くなってしまったんだ。だからここは……
「……ちょっと