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守護者③

3日後

怪異研究機関「りょう市目鯖しめさば支部 応接室

黒い革張りのソファに座り、満面の笑みを浮かべてソーダ味のアイスを舐める支部長・歯砂間はざま リョウコ。向かい側のソファでは、ピューマのように鋭い目つきで不機嫌そうな表情を浮かべるシゲミ。



歯砂間「シゲミさんのお祖母様に依頼したつもりだったんだけど、まさかシゲミさんまで手伝ってくれていたとはねぇ。でもその甲斐あって見事怪異を駆除!発掘調査も開始できたみたいだよ」


シゲミ「私たち、デイダラボッチの駆除って聞いてたのに、めちゃくちゃ強い侍みたいな骸骨がいこつとも戦うことになったんですが」


歯砂間「みたいだねぇ。すごく苦戦したんだって?深手も負ったとか?」


シゲミ「倒しましたけど、死にかけました。だから契約外の作業報酬と治療費をもらいに来たんです。合わせて8000万。今すぐキャッシュで払ってください。」


歯砂間「キャッシュは無理だけど、ウチにもお金がたんまり入ってきたからね。後で振り込んでおくよ。でもその骸骨、できれば捕獲してほしかったなぁ」


シゲミ「現場に出ない人は好き勝手言えて、良いご身分ですね」


歯砂間「わかってる。シゲミさんが苦戦するほどの相手を捕まえるのなんて現実的じゃない。けど、骸骨が口にしたというポコポコ様は『魎』の調査対象でもあってね。その存在や誕生の経緯について様々な文献をもとに研究している」


シゲミ「……ポコポコって、昔多くの人間や怪異を従えた神様ですよね?」


歯砂間「そう。神様といっても邪神と呼ばれてる」


シゲミ「何度も復活と成仏を繰り返していて、今はいないはず」


歯砂間「私たちもそういう認識だったんだけどね。どうやら違う可能性があるみたいんだ」



歯砂間は自身が座るソファの空いているスペースに置いていた書類の束の中から、1冊の雑誌を取り出し、ローテーブルの上に乗せた。オカルト雑誌『パラノーマル・スクープ』。蛍光緑の付箋ふせんをつけたページを開いてシゲミに見せる。



歯砂間「この雑誌のライターがポコポコにインタビューした音声の書き起こし記事。喉具呂のどぐろ島っていう離島にポコポコと名乗る人物がみ着いて、一緒に遊んでくれる『友達』を募集しているらしい」



雑誌の内容に目を通すシゲミ。



歯砂間「記事の真偽は不明。『パラノーマル・スクープ』はデマ情報ばかりの雑誌だって有名だから信憑性はイマイチなんだけど……数週間前、喉具呂島で島民の集団失踪事件が起きている」


シゲミ「ニュースでちょっとだけ見ました」


歯砂間「その事件とポコポコを絡ませて面白おかしく記事にしているだけかもしれない。でも、だとしたらあまりにも関連性がなくて荒唐無稽にもほどがある」


シゲミ「歯砂間さんはデマではないと思ってるんですか?」


歯砂間「う〜ん、5%くらいは本当かもって考えてる。だから本部の承認が取れたら調査員を喉具呂島に派遣してみるつもり。まぁ、オカルト雑誌の情報だけじゃ根拠としては薄いし、場所が離島で交通費がかさむからGOが出るとは思えないけどね」


シゲミ「ポコポコ……」


歯砂間「もし調査の許可が下りて、本当にポコポコが存在していて、駆除しなければならなくなったら……シゲミさん、戦ってくれる?」



雑誌を閉じ、ソファから立ち上がるシゲミ。



シゲミ「報酬次第。然るべき金額を提示してくれるなら戦います」



<守護者-完->

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