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友達作り①

AM 8:44

喉具呂のどぐろ島 埠頭

地面に横たわる、体長3mはあろう巨大なマグロにかじりつくポコポコと筆見ふでみ サツキ。ポコポコは頭のほうから、サツキは尻尾のほうから食べ進める。


食べるのを止め、ポコポコに話しかけるサツキ。



サツキ「また今日もここで友達候補が来るのを待ち続けるの?もう3週間以上誰も来てないんだよ。諦めたら?」



ポコポコも食べる手を止める。



ポコポコ「いや諦めん」


サツキ「来てもどうせ食べちゃうくせに」


ポコポコ「……人間は次善。もし怪異が来たら最優先で友達にする」


サツキ「極端な思考」


ポコポコ「なぁ、もう1回友達募集の記事書いてくれへんか?」


サツキ「そのためには雑誌に載せて読者が興味を持ってくれるだけのネタが必要。ポコポコくんが何か1つでも秘密を明かしてくれたら書けるんだけど」


ポコポコ「やっぱなし。オレに取材し終わったらサツキちゃん、家に帰らせろって言うやろ?それは避けたい。寂しいのイヤだ」


サツキ「じゃあ諦めて」



ポコポコは数秒黙り込んだ後、マグロの頭を食いちぎり、丸呑みにして立ち上がる。



ポコポコ「ならオレのほうから友達作りに行くか。サツキちゃん、いろんな怪異のこと調べてたんやろ?ソイツらに片っ端から声かけて、友達にする」


サツキ「私、取材はしたけど肝心の怪異と遭遇したことなんてないよ。本当に存在しているのか怪しい」


ポコポコ「人間に見つからないよう姿を隠すヤツは多い。せやけど、同じ怪異であるオレなら仲間だと油断して姿を見せるやろ」


サツキ「そうなんだ……で、どうやって怪異を探しに行くの?船の運転できないんでしょ?」


ポコポコ「飛んで行く。オレ飛べるし」


サツキ「えーっ!?ならもっと早く言ってよー!私を本州に連れてって!」


ポコポコ「イヤや。サツキちゃんはオレとずっと一緒におらなあかん。怪異探しには連れてったるけど、帰したりはせーへんで」



−−−−−−−−−−−



AM 10:23

上空1000mを垂直に立ったまま飛行するポコポコ。サツキはポコポコの首元に腕を回し、背中におぶさるようにつかまっている。



サツキ「どういう仕組みで飛んでるの?」


ポコポコ「ヒミツや。まぁ神様の特権とだけ言っておくかな」



数百m前方、同じくらいの高度を飛行する物体を視認するポコポコ。その物体はポコポコから離れるように飛んでいる。



ポコポコ「おった!加速するでぇ!」



ポコポコは宙を蹴り、飛行速度を急激に高めた。風圧で吹き飛ばされそうになりながらも、ポコポコの首元に力一杯しがみつくサツキ。


ポコポコは物体を通り越すと体を反転して滞空した。ポコポコとサツキの視線の先には体高20mはあろう巨大な馬。全身を黒い毛が覆い、両目が赤く光っている。



サツキ「本当にいたんだ……空飛ぶ馬・フライングホース……都市伝説だと思ってた」



フライングホースは前進するのを止め、鼻から息を思い切り吐き出すと、口を開いた。



ホース「貴様ら何者だ?こんな上空まで生身の人間が来られるはずがない」


ポコポコ「オレはポコポコ。背中にいるのは友達のサツキちゃん」


ホース「ポコポコだと?あの邪神・ポコポコか?成仏したと聞いていたが」


ポコポコ「いろいろあって蘇ったんや。今は友達を探しとる。お前もオレの友達になれや、フライングホース」


ホース「……邪神・ポコポコに関わって悪事を働き、人間に消された怪異は数知れぬ。貴様と友達になるなど平穏を臨む我が輩にとってあり得ぬ選択よ」


ポコポコ「あっそう。なら力尽くでイエスと言わせるしかなさそうやな」



フライングホースの全身からドス黒い邪気が大量に放出される。そして4つの足を激しく動かす。足でかき回された邪気が渦を巻き、フライングホースを中心に竜巻を形成した。



サツキ「ちょっとポコポコくん」


ポコポコ「しっかりつかまっとけよ、サツキちゃん。油断してると振り落とされるでぇ」



邪気の竜巻に飲まれ、さらに300mほど上空まで吹き上げられるポコポコとサツキ。ポコポコは「ひょぉーっ!」と楽しげな声を出しているが、サツキには余裕がなく、目を閉じてポコポコにしがみつくので精一杯だった。



ポコポコ「オモロイ邪気の使い方やなぁー!こんなこともできるんか!最近、学びが多いわー!」


ホース「このまま大気圏の外まで吹き飛ばしてくれる」


ポコポコ「……何があってもオレと友達になるのはNGってわけね。オレからちょっかいかけた手前、成仏させるのは勘弁したるけど、それなりに痛い目に遭ってもらうでぇ」



ポコポコは空中で体勢を立て直し、頭を下に向けた状態で屈む。そして両足で空を蹴ると、竜巻の中心を勢い良く降下。フライングホースの背中に頭突きを見舞った。


背骨が折れ曲がるほどの一撃を食らい、フライングホースは意識を失う。頭突きをされた勢いそのまま落ちていき、中部地方の山中に墜落。大きな噴煙を巻き上げた。



宙に浮かびながら、フライングホースが落下した地点を見下ろすポコポコとサツキ。



サツキ「……ほんの少し断られただけでぶっ飛ばしてたら何百年かかっても友達なんてできないよ」


ポコポコ「たしかになぁ。オレももうちょい歩み寄るよう努力してみるわ……はい反省会おしまい。次行こか」

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