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友達作り②

およそ1週間に及ぶポコポコの友達作り計画は難航していた。


AM 0:44

東京都内某所 繁華街

居酒屋や夜の店で繁盛している大通りから1本奥に入った裏通りを並んで歩くポコポコとサツキ。道の左右に立ち並ぶ店のほとんどが個人経営の飲食店で、すでに営業を終え静まり返っている。



サツキ「河童かっぱ雪男ゆきおとこ、口裂け女、モスマン、チュパカブラ、モンゴリアンデスワーム……みんなポコポコくんの名前を聞いた途端に攻撃してきたけど、本当にかつて怪異を率いてたの?」


ポコポコ「アイツらはたぶんオレの根強いアンチやろな。有名になるほどアンチも増えるもんや。だがアンチの存在を許すわけちゃうで。見つけたらきっちりボコる」


サツキ「まぁ、私は伝説の怪物をこの目で見られるだけで満足なんだけど」


ポコポコ「オレは満足できん!友達にならんと!で、次に当たるのは……人面犬やったな?」


サツキ「そう。夜の都会に出没する人間の顔をした犬。東京の都心に野良犬はほとんどいないから、居たらすぐわかると思う」


ポコポコ「じゃ、アイツやな」



ポコポコはアゴで前方を指す。5mほど離れたゴミ集積所でゴミ袋を漁る犬が一匹。後ろ姿しか見えないが、大きさや小麦色の体毛からして柴犬だと思われる。


犬の真後ろに立つポコポコとサツキ。2人の気配に気づき、犬が振り返った。耳から先が人間の顔をしている。しかしサツキのイメージしている人面犬の顔とは異なっていた。かなり若く色白で、整った顔立ちをしている。もっと年増としまでだるだるにたるんだおじさんの顔をしているものだと思っていた。



人面犬「……どなたですか?」


ポコポコ「オレはポコポコっちゅうもんや。こっちは友達のサツキちゃん」


サツキ「どうも」


人面犬「ポコポコ……だいぶ珍妙な名前をされていますね」


ポコポコ「あれ?オレのこと知らんの?怪異のくせに」


人面犬「申し訳ありませんが、存じ上げません」


ポコポコ「お前、何年目や?」


人面犬「何年目?」


ポコポコ「怪異やって何年目やと聞いとる」


人面犬「生まれたときからこの姿なので……4年目ですかね」


ポコポコ「バリバリの若手やん。ほんならオレのこと知らんでもしゃーないな」


サツキ「ちょっと待って。4年って……人面犬は30年以上前から目撃情報があるはずだよ」


人面犬「それはおそらく僕の父か祖父ですね。僕の家系は父方が人の顔をした犬で、昔は有名だったと聞きました」


サツキ「あっ、遺伝するんだ」


ポコポコ「まぁ何でもええわ。おい人面犬、オレと友達になってくれや」


人面犬「友達?それって僕に何かメリットあるんですか?」


サツキ「返事が最近の子供っぽい……」


ポコポコ「オレは怪異の親玉みたなもんや。人間はもちろん、並みの怪異じゃオレには勝てん。つまりオレと一緒にいればお前の身も安全ってわけや。深夜にゴミを漁ってたってことは、お前は人間社会に紛れてコソコソ暮らしとるんやろ?オレといればそんな生活ともおさらばできるで」


人面犬「たしかにメリットですね。僕は顔が人間という以外、他の犬と大差ありません。周りに危険は多いので守ってくれる人がいるのはありがたい……しかしそれだけでは友達になる気は起きませんねぇ。僕はこうして一人でも生きてこられましたから」



数秒考えるポコポコ。そして何かを思いついたように、右手の人差し指をピンッと伸ばす。



ポコポコ「オレら喉具呂のどぐろ島っていう離島に住んでるんや。島民は俺らだけでちょいと寂しいが、メシが最高でな。新鮮な海の幸がぎょーさん獲れる。もしオレの友達になれば、めっちゃ美味いマグロ食わしたるで」


人面犬「マグロ!?」



人面犬の尻尾が上に高く伸びる。



人面犬「マグロ……寿司屋近くのゴミ捨て場を漁っても滅多にありつけないご馳走……」


ポコポコ「マグロだけちゃうで。カツオにヒラメ、それから貝、カニ、エビ、なんでも獲れる」


人面犬「なんでも!?」



口から滝のようによだれを垂らす人面犬。



人面犬「あ、あれは獲れるんですか……?う、う、うううう……」


ポコポコ「ウツボ?」


人面犬「そうウツボ!」


ポコポコ「もちろん獲れるで。オレが何百匹でも獲ってきたる」


人面犬「その話乗った!なりますよ僕!アナタの、いやポコポコ様の友達に!」


サツキ「ウツボが決め手になった」


ポコポコ「よっしゃ!これで2人目の友達ゲット!人面犬、お前名前はあるんか?」


人面犬「樹騎矢じゅきやです」


サツキ「キラキラネームだ」


ポコポコ「樹騎矢やな。よろしゅう。島で仲良くスローライフといこうや」



樹騎矢はポコポコの左足に頬をこすりつける。



ポコポコ「この調子でバンバン広げるでぇ!友達の輪!」


サツキ「ここまで88体の怪異と会ってようやく1体……先が思いやられる……」



<友達作り-完->

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