目次
ブックマーク
応援する
2
コメント
シェア
通報

サド-1・コロシアム③

両手でさつまいもを3つ、お手玉のように宙に投げてはキャッチする芋爺いもじい



アヤコ「伏兵・芋爺ぃぃぃっ!超高温の焼き芋攻撃が炸裂だぁぁぁっ!」


芋爺「おっちゃんの焼き芋、いっぱいあるからよぉ。遠慮なく食べていきなよぉ」


シゲミ「あの焼き芋屋さん、只者じゃない……まさか怪異!?」


リオ「なんだと?」



リオは体の向きをシゲミのほうから芋爺のほうへと変える。



リオ「おいポテト野郎、お前、怪異なのか?」


芋爺「何言ってんだぁ?おっちゃんは芋を食べさせたいだけだよぉ。だからよぉ、おちゃんの芋食って、感想言ってくれよなぁ」


リオ「生きてる人間か怪異か……斬ればわかるぜ」



リオは回転するチェーンソーの刃を床に接触させながら芋爺に向かって駆け出した。刃と床がこすれ、火花が上がる。



芋爺「うれしいねぇ、最近お客さんがたーんと減っちまったからよぉ。おっちゃんの屋台に来てくれる子には、いっぱいご馳走したくなっちまうべなぁ」



芋爺が引いている屋台の煙突から、火山が噴火するかのように大量の焼き芋が天井へと噴き出した。



芋爺「マグマいもの雨だよぉ。たくさん食べてくれよなぁ」


アヤコ「芋爺特製のマグマいもが降り注ぐぅぅぅっ!逃げ場はないぞぉぉぉっ!」



リオは足を止め、空中に向けてチェーンソーを思い切り振った。体育館の中で突風が吹き荒れる。マグマいもは風に煽られリオとシゲミに当たることなく床に着弾した。1400度に熱されているはずだが、床は溶けない。



リオ「風で落下地点をずらすだけじゃなくてよぉ、口でフーフー冷ますみたいに冷却しちまえば、ただのさつまいもだよなぁ?」


芋爺「な、何を……いもを粗末にしくさってからに……」



再び駆け出すリオ。芋爺は「いもぉっ!」と大きな掛け声とともにマグマいもを投げるが、リオは頭を下げて軽々とかわす。


リオのチェーンソーが芋爺とリヤカーを縦に両断した。血が噴き出ることなく、その場で霧散する芋爺の体。



リオ「どうやら人間じゃなかったみたいだな」


シゲミ「隙ありよ、リオちゃん」



リオの背後にシゲミが音もなく接近していた。手榴弾の安全ピンを口で引き抜き、バクステップで下がる。爆発する寸前、リオは体を回転させ突風を生み出した。手榴弾は天井まで巻き上げられ、爆発。照明を破壊する。


向かい合うシゲミとリオの間に、壊れた照明が落下した。



リオ「さて、次はお前だ。爆弾魔シゲミ」


シゲミ「まずいわね……」



リオがチェーンソーの刃を回転させる。直後、シゲミから見て右手側、30mほど離れた壁が爆音を立てて崩れ始めた。崩れた壁の向こうから現れたのは巨大な戦車。上部のハッチから上半身を出した磯野いそのの声が響く。



磯野「これぞ私の秘密兵器!自衛隊から拝借した10式戦車だぁ!教頭先生とともに操縦技術は把握済み!この戦車で我々はサド-1・コロシアムを優勝し、孫にあげるお年玉として5万円を山分けする!」


シゲミ「……イカレているのか?」


磯野「教頭先生!44口径120mm滑腔砲かっくうほうの発射準備を!」



戦車の主砲が動き、シゲミとリオのほうを向く。



磯野「孫のためなら生徒の1人や2人死んでも構わんわ!ぇ!」



主砲から砲弾が超高速で飛び出す。シゲミとリオはそれぞれ後退してかわした。砲弾は体育館のステージに当たり、直径7mほどのクレーターを作る。



リオ「……面白い」


アヤコ「なんて破壊力だぁぁぁっ!武器は何でも使ってもいいと言ったがこれは反則臭いぞぉぉぉっ!それ以前に校長と教頭、生徒を砲撃するとは!コイツらは教育界から追放すべきじゃないのかぁぁぁっ!?」


校長「次弾装填!」



校長の言葉と同時に駆け出すリオ。戦車に向かって突き進む。



シゲミ「リオちゃん危険よ!」


校長「ぇ!」



主砲から次弾が発射された。しかし砲弾はリオのチェーンソーによって縦に真っ二つに切られ、体育館の左右の壁に直撃する。



校長「なんだと!?教頭先生!次の砲弾をぉぉぉあああぁぁぁっ!」



リオはチェーンソーを戦車の主砲に突き刺し、そのまま走り続ける。主砲を切り裂くと、本体の上に乗り2つに両断した。



校長「こんな……たわけたことが……」



戦車は爆発。乗っていた校長と教頭は戦車の外に吹き飛ばされ、床に仰向けに倒れて気を失った。


爆風に乗り、膝を抱えて空中で前転しながら飛び出したリオは、シゲミの眼前に着地。そしてチェーンソーを振り上げる。



シゲミ「ウソでしょ……」


リオ「ようやく邪魔者が消えたな、シゲミ」



シゲミはスクールバッグの中に手を入れる。しかし手榴弾は全て使い切っていた。



シゲミ「しまった」



シゲミの頭上からチェーンソーが迫るが、刃の回転がピタリと停止した。



リオ「クソッ、ガゾリン切れか」



リオの攻撃が一瞬止まったのを見て、シゲミは「参った」と大きな声で口にする。



シゲミ「降参するわ。リオちゃん、アナタの勝ちよ。お互い攻撃の手段を失ってしまったようだけど、アナタのほうが多く敵を倒してる。だからアナタの勝ち」


リオ「……」



リオはチェーンソーを下ろした。



アヤコ「シゲミ、まさかの棄権!これにて試合終了ぉぉぉっ!リオ the チェーンソーが本戦進出だぁぁぁっ!」



シゲミのもとに心霊同好会の3人が、リオのもとに茶道部の5人が駆け寄る。



カズヒロ「シゲミ大丈夫かー?怪我してないかー?」


シゲミ「ええ。なんともない」


サエ「超危なかったけどさぁ、正直ちょっと興奮したわ〜」



部員からタオルとスポーツドリンクを受け取るリオ。タオルを首にかけ、ドリンクを一気飲みしてペットボトルを投げ捨てると、シゲミに近寄った。



リオ「爆弾魔シゲミ、勝負はまた別の機会に預ける。だがもし次にり合うことがあったら、必ず息の根を止めてやるぜ」


シゲミ「……わかった。私も今度は最初から本気でいくわ」


リオ「1つだけ聞かせてほしい。お前の目から見て、アタシの強さはどうだった?」


シゲミ「怪異専門の殺し屋を本職にすることをおすすめするわ」



リオは小さく笑顔を浮かべ、茶道部員たちとともに体育館から去って行った。



トシキ「リオさん、シゲミちゃんのリップサービスに満足してくれたようだね。本来ならシゲミちゃんと戦って生きてるだけでも奇跡だってのに」


シゲミ「いいえ、あのまま戦っていたら死んでいたのは私よ。リオ the チェーンソー……あんなに強い生徒がいただなんて。ポコポコと戦うときに連れて行けば良かったわ」



<サド-1・コロシアム-完->

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?