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マンティノイド②

1時限目と2時限目の間の休み時間

転入生・青切あおぎり ツバサの席の周りは同級生たちで賑わっていた。抜群のルックスで、自己紹介の挨拶からウケを狙おうとする気概も持つ彼に興味を抱かない人間はまずいない。特に女子生徒が多く集まっていたが、おこぼれを狙おうとする男子生徒も数名混ざっていた。


女子生徒から「彼女いるの?」「芸能事務所にスカウトされたことある?」など質問攻めされるツバサ。初対面とは思えないほど切り込んだ内容ばかりだったが、1つずつ丁寧に答えていく様子も、女子生徒のツバサに対する好感度を高めていった。


あっという間にクラスの人気者になったツバサを、離れた席からにらみつける1人の男子生徒。名前はアキラ。ツバサが来るまで誰もが認める学年ナンバーワンのイケメンとして君臨していた。その座を揺るがしかねないツバサの存在が面白くないのである。



−−−−−−−−−−



昼休み

2年C組の教室は、自席で本を読むシゲミ以外誰もいなくなっていた。アキラがツバサに短距離走で勝負を挑み、観戦するべくグラウンドに集まっているためだ。


グラウンドの隅に横並びで立つツバサとアキラ。その後ろにC組の生徒が群がっている。



アキラ「陸上部だったんだろ?俺も陸上部で、短距離の選手だ」


ツバサ「そうなんだ。奇遇だね。俺も短距離だったんだよ」


アキラ「グラウンドの奥に1人立ってるヤツ、見えるだろ?ここからあそこまでが50m。同時に走って先にゴールしたほうが勝ち。いいな?」


ツバサ「オッケー。わかりやすくていいね」



女子生徒はほぼ全員が「ツバサくん頑張れぇ!」と応援している。男子生徒はどちらが勝っても構わないという雰囲気が漂っているが、自分たちにとって古参であるアキラを応援する者が多い。


男子生徒の1人がツバサとアキラの横に立ち、「位置について」と大きな声を出して右手を挙げる。片膝を地面に突き、クラウチングスタートの姿勢をとるツバサとアキラ。「よーい、スタート」のかけ声とともに男子生徒が腕を下ろす。2人は同時に駆け出した。


スタート直後からツバサが一気に距離を離す。ぐんぐんと差が広がり、アキラより3秒以上早くツバサがゴールした。



アキラ「バカな……俺の50mのアベレージタイム、5秒9だぞ……」



観戦していた生徒たちが「YEAHー!」と声を上げながらツバサを胴上げした。



−−−−−−−−−−



PM 4:05

授業が終わり、2年C組の生徒たちはそれぞれ帰宅の準備をする。ツバサの周りは相変わらず大勢の女子が囲み「一緒に帰りましょうよぉ」と迫る。ツバサは「今日は用事があるんだ。ゴメンね」と華麗にかわし、シゲミの席に近寄った。


教科書をスクールバッグに詰めるシゲミの背後から話しかけるツバサ。



ツバサ「爆弾魔シゲミさん、だよね?」


シゲミ「そうだけど、何かご用?」



シゲミは椅子から立ち上がりながらツバサのほうを向く。



ツバサ「屋上に来てほしいんだ。2人だけで話がしたい」


シゲミ「……まさか性的な要求?ならばやめておくことね。アナタのケツ穴に手榴弾ぶち込んで直腸を爆破してやるわ」


ツバサ「物騒だなぁ。別にスケベなことをしたいわけじゃないよ」



2人の会話を盗み聞きしていた周囲の生徒たちがちゃちゃを入れる。



男子生徒「おいおいおいおい転校生くんよぉ〜、足が速けりゃ手も早いのかぁ〜?シゲミィ、Fu🌑Kされないよう気をつけろよなぁ〜」


女子生徒「ツバサく〜ん!シゲミはガード固いからやめときなぁ〜!けどアタシならいつでもウェルカムだからねぇ〜!」



シゲミはピューマのような眼光をツバサに向けた。



シゲミ「ここではできない話?」


ツバサ「うん。ポコポコに関することなんだ」



ポコポコという言葉を聞いて、数秒黙るシゲミ。



シゲミ「わかった」



沸き立つ教室を抜け、シゲミとツバサは屋上へと向かった。



−−−−−−−−−−



PM 4:12

市目鯖しめさば高校 屋上

先にツバサが屋上に出て数歩進み、振り返る。3mほど後ろを歩いていたシゲミは立ち止まった。



シゲミ「アナタ、ポコポコのことを知っているの?」


ツバサ「少しね。ウワサによると、キミたちが捕まえたとか」


シゲミ「本当は仕留めるつもりだったけど、邪魔が入って捕まえることになった」


ツバサ「やっぱ本当の話だったのか。だとするとまずいな……」



ツバサは右手でアゴを押さえ、シゲミから視線を逸らして考え込む。



シゲミ「何のことを言ってるの?」



視線をシゲミの顔に戻すツバサ。



ツバサ「結論から言うと、俺の仲間っていうか一族がポコポコを解放し、人類を殲滅しようと計画している。近いうちに実行されるはずだ。それを阻止するため、シゲミさんに協力してほしい」


シゲミ「……もっと意味がわからないんだけど」


ツバサ「話を進めるには俺のを見てもらう必要がある。キミ以外の人に見られると騒ぎになるだろうから、2人きりの状況が必要だったんだ」



ツバサは左手で顔を覆う。手を離すと、整った甘いマスクが緑色のカマキリの顔に変わっていた。

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