PM 1:07
土曜日の短縮授業を終え、地下鉄『
ドアが閉まる寸前、4人と同じブレザーを着た男子学生が走って駆け込んだ。転入生で、シゲミと同じクラスの
ツバサ「追いついたぁ、ギリセーフ」
シゲミ「……ツバサくん、私たちを尾行してたの?」
ツバサ「尾行なんて怪しげな言い方しないでよ。普通にシゲミさんと話がしたくて追いかけてたんだ」
シゲミと親しげに話すツバサを、いぶかしげな表情で眺めるカズヒロとトシキ。
カズヒロ「シゲミの知り合いかー?」
トシキ「僕たちと同じ市目鯖の生徒?」
シゲミ「彼はツバサくん。この前、C組に転入してきた」
ツバサ「よろピクミン」
ツバサは左手の人差し指と中指を立てて、額に当てる。イケメンしか許されない決めポーズをしれっと行う姿を見て、カズヒロとトシキの表情がさらに曇る。
一方、目を細めニヤつくサエ。シゲミの脇腹を右
サエ「シゲミの彼ピ?ビジュ良すぎじゃね?顔面偏差値85!」
シゲミ「違う。全然私のタイプじゃない。私は手榴弾みたいな顔面で、C-4みたいな匂いのする人がタイプ」
サエ「それただの爆弾じゃ〜ん」
サエとの会話を止め、ツバサのほうを向くシゲミ。
シゲミ「で、何の用?ツバサくん」
ツバサ「シゲミさんに言われたとおり、怪異研究機関『
シゲミ「粘るって言ってなかった?」
ツバサ「粘ったよ。ここ3日で463回電話したし、メールは1213通送った」
シゲミ「アナタが危険そのものだと思われてるんじゃない?」
ツバサ「シゲミさんは『魎』とつながりがあったんでしょ?だったら内部の人と連絡取れたりしないかなと思ってさぁ」
シゲミ「『魎』とは手を切った。私は関わるつもりはない。それに、この話はまた今度にしてもらえるかしら?」
カズヒロたちは『魎』がポコポコを収容していること、そしてツバサが
ツバサも自身の素性をなるべく明かしたくないと考えている。「そうだね」とシゲミの提案に乗り、話題を切り替えた。
ツバサ「みんなはこれからどこに行くの?家の方向が同じってだけ?」
カズヒロ「心霊同好会の活動だよ。俺たちは……えっと……トシキ、何てところに行くんだっけ?」
トシキ「新潟県にある
ツバサ「へぇ」
カズヒロ「俺らはいつもこんな活動をしてる」
サエ「結局デマ情報で空振りになることも多いけどね〜」
ツバサ「面白そう。俺も一緒に行っていい?」
シゲミ「え?」
ツバサ「俺、転校してきたばかりで友達いないし、特に同じクラスのシゲミさんとは仲良くなっておきたいなと思ってさ」
カズヒロ「ほう。寡黙で自分のことを隠すシゲミに目をつけるとは、なかなか見所があるな」
ツバサと握手をするカズヒロ。
サエ「私は賛成〜!イツメンも悪くないけど、ずっと代わり映えしないのもどうかと思うんだよねぇ〜!しかもイケメン新メンバーなら大歓迎〜!」
シゲミ「けどツバサくん、私たち1泊する予定よ。荷物は?新幹線にも乗るし」
ツバサ「足りないものは現地調達すればいいじゃん。それに新幹線代くらいは持ってるよ」
シゲミ「ああそう。なら私は別に構わないけど」
ツバサの同行に前向きなカズヒロ、サエ、シゲミ。しかしトシキだけは反対する。
トシキ「僕の予想ではあるが……ツバサくん、キミはシゲミちゃんの貞操を狙っている。そうだろう?恋だの愛だのに関心がないシゲミちゃんを甘いマスクで
ツバサ「いや違うよ」
トシキ「口では何とでも言えるさ。キミみたいなイケメンどもは
ツバサ「そんな……偏見だよ。あっ、ゴミがついてるよ」
ツバサは右手でトシキの左肩を払う。
トシキ「……なんだぁ、素晴らしい好青年じゃないかぁ。今までの発言は撤回するよ。申し訳なかったね。一緒に蔵毛村へ行こう」
ツバサ「どうも!じゃあ決まりだね」
シゲミ「……トシキくん、偏見を完全に捨てるか、もう少し自分の発言に信念を持つかしたら?」