PM 5:15
新潟県内にある『
サエ「意外と栄えてるんだね〜」
トシキ「違和死駅の近くはね。でもほんの少し外れると畑と山ばっかりらしいよ」
カズヒロ「で、どのバスに乗るんだ?まだ2時間近くかかるんだろー?早くしないと最終バスがなくなっちゃうかもしれねー」
トシキ「いま調べてるけど、僕も初めての場所だからどこがどこやら……」
ツバサ「誰かに行き方を聞こうよ。それが手っ取り早い」
カズヒロ「そうだなー」
バスターミナルの1番乗降口のすぐ脇にあるベンチに老爺が座っているのを発見した5人。年齢は80歳近い。荷物はなく杖しか持っていないことから、この近くに住んでいて土地鑑がある人物だと予想した5人は老爺に近づく。そしてカズヒロが声をかけた。
カズヒロ「あの、すみません」
老爺「なんじゃ?オヤジ狩りか?」
カズヒロ「いえ違います。俺た……僕たち蔵毛村に行きたいんですけど、迷ってしまって。どのバスに乗れば良いかご存じですか?」
目を開けているのか閉じているのかわからないほど細目だった老爺のまぶたが、大きく吊り上がる。
老爺「蔵毛村!?お前ら蔵毛村に行くつもりなのか!?」
カズヒロ「ええ、そうですけど……」
老爺「悪いことは言わん。あの村にだけは行くな。
カズヒロ「そんな……」
老爺「お前ら学生じゃろ?明るい将来が待っとるやもしれん。あの村に行って、その将来を捨てるような真似しなさんな」
カズヒロ「蔵毛村……一体何があるんですか?」
老爺「この世には知らんほうがええこともある」
口を真一文字に結ぶ老爺。「どうするよ?」と、カズヒロはシゲミたちのほうを見る。
シゲミ「おじいさんの口ぶりから、何らかの危険がある村だという予想はつくわ」
トシキ「どんな村か気になるけど、僕は怖い目に遭うのはイヤだなぁ」
サエ「じゃあ行くのやめとく〜?」
ツバサ「時間とお金は無駄になっちゃうけど、命には代えられないからね。この近くを観光して帰るってのも悪くないんじゃないかな?」
カズヒロ「だよなー。危ないところだとわかってて自分から飛び込むなんて、愚か者がやることだ」
老爺のほうに向き直るカズヒロ。
カズヒロ「おじいさん、ご忠告どうもありがとうございました。僕たち、蔵毛村に行くの諦めます」
老爺「……行けよ」
カズヒロ「え?」
老爺「何を潔く諦めとるんじゃ。こんな老いぼれの言うことは無視して行け!お前らみたいな若者は老人に何と言われようが禁足地に行く!それがセオリーじゃろうが!怪談読んだことないんか!?」
カズヒロ「でもおじいさんが
老爺「この場合、ワシが言う『行くな』は『行け』ってことじゃ!それくらい理解せい!この世間知らずども!」
カズヒロ「なんだこのジジイ」
老爺「蔵毛村へは、10分後に3番乗降口に到着するバスに乗って終点まで行き、そこから徒歩30分で着く。お前らがバスに乗るまでここで見張っとるからな。乗ったふりをして逃げようとしても無駄じゃぞ」
カズヒロの背後からツバサが、老爺に聞こえないよう小さい声で語りかける。
ツバサ「とりあえずこのおじいさんに従って行ってみない?口論になるのも面倒だし」
カズヒロ「だな。最初の目的通り行き方は教えてもらえたわけだから、行くか」
老爺に「ありがとうございました」と言い、カズヒロたちは3番乗降口へ向かった。10分後、老爺の行ったとおりバスが到着。5人はバスに乗り、最後尾の席に横並びで座った。
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PM 6:45
夕日が沈み、車窓からは所々建つ民家の灯りが
乗客はカズヒロたちの他に、紺色のスーツを着た30代後半くらいの男性のみ。3列前の座席でうなだれるように座っている。
終点に到着し、バスを降りる。バスの扉が閉まり発車したと同時に、男性がカズヒロたちに声をかけた。
男性「キミたち……蔵毛村に行くんだろ?でなきゃこんな
カズヒロ「そうですけど」
男性「僕もキミたちと同じ目的で蔵毛村を目指している。けどここから先は山道を歩かなきゃならないらしい。もう暗いから、遭難する可能性がある。クマやイノシシが出るかもしれない。だから一緒に行動させてもらえないかな?」
サエ「構いませんよ〜。ウチらには心強い味方がいるんで、クマでもイノシシでもドラゴンでもぶっ倒しちゃいますから〜」
トシキ「それって僕のこと?」
サエ「トシキには何も期待してな〜い」
男性「ありがとう。僕の名前は
カズヒロたちと四ノ宮は、蔵毛村がある山の中へと足を踏み入れた。