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番外編:リオ the チェーンソー

番外編:リオ the チェーンソー①

AM 0:23

東京都内 某繁華街の裏通り

人気ひとけのない路上で尻もちをつく灰色のスーツを着たバーコード頭の中年男性。バーコードを囲むように3人の若いチンピラ男性たちが立っている。



チンピラA「おじさんさぁ、ちゃんと前向いて歩かなきゃダメでしょ?俺の友達、怪我しちゃったじゃん」


チンピラB「いってぇ〜、確実に脱臼してるわぁ」



チンピラBは左手で右肩を押さえる。



チンピラC「おっさん、酒臭ぇなぁ。酔っ払って若者に暴力とか、何やっちゃってるわけ?こんなことが人様にバレたら、社会で生きていけないよ?」


バーコード「ぶ、ぶつかって来たのはキミたちのほうだろ!それにちょっと体が触れ合っただけで脱臼するわけがない!」


チンピラA「俺たちゆとり世代は体育の授業が少なかったから体が弱いんだよぉ。それもこれも全部、ゆとり教育なんて始めたおじさん世代の責任だよなぁ?違うかぁ?」


チンピラB「あー、これダメだわ。マジで肩外れちゃってる。全治2カ月」


バーコード「そんなわけないだろ!私を脅すつもりか……お前たちただじゃ済まさんぞ!訴えてやるからな!」


チンピラC「別にいいけど?もし裁判になったとして、裁判官は酔っ払ってたおっさんとシラフの俺ら、どっちの意見を信じるかなぁ?」


バーコード「ぐっ……」


チンピラA「裁判なんかやってもろくなことないよ?問題を起こしたことがおじさんの家族にも会社にも伝わっちゃうしさぁ」



ひたいから大量の汗を流し、地面に両膝と両手をつくバーコード。



バーコード「それだけは……お願いです!どうかここは穏便に!金なら払います!」


チンピラB「金じゃねーよ、ビッグカツ出せよ。肩治すのに栄養が必要だろうが」


バーコード「ビ、ビッグカツ……?」


チンピラA「早くビッグカツ出せよ」


チンピラC 「いい歳してビッグカツも持ってないの?恥ずかしくねーのかよ?」


バーコード「も、持ってません……」


チンピラB「コイツ、隠してやがるな」


チンピラA「身ぐるみ剥がすか」



チンピラたちはバーコードを立ち上がらせ、無理やりスーツを脱がそうとする。「助けてぇぇぇっ!」と叫ぶバーコードのみぞおちをチンピラAが殴った。膝をつき、前屈みになったバーコードの背中を、3人が足で踏みつける。


「モ……モ……モ……モ……」という野太い声が背後から聞こえ、蹴るのを止めるチンピラたち。振り向くと、横も縦も彼らの2倍近い大柄の女性が立っていた。長い金髪に黒いマスクをし、白い特攻服を着ている。



女性「モ……モ……モ……モ……」


チンピラA「何だコイツ……?」


チンピラB「でけぇ……」


チンピラC「NBAの選手か……?」



女性は「モッ」という掛け声とともに、右腕でチンピラAの側頭部にフックを見舞う。チンピラAの頭が首から千切れ、5mほど離れた電柱に当たりはじけ飛んだ。うつ伏せで倒れるチンピラAの体。



チンピラB・C「うわぁぁぁぁぁぁっ!」



叫ぶチンピラBとCの頭を左右の大きな手で鷲づかみにする女性。そして「モッ」と言いながらミカンのように軽く握りつぶした。女性はチンピラBとCの体を放り投げると、四つん這いになっているバーコードに近づく。



バーコード「ど、どどどどなたか存じ上げませんが、助かりましたぁ!柄の悪い若造どもにカツアゲされそうになってまして」



バーコードの頭を女性の右足が踏み潰す。女性が着る特攻服の背中に金色の糸で大きく刺繍された「喧嘩両成敗」の文字が風になびいた。


「モモモモモ」とつぶやきながら立ち去ろうとする女性。その10m先、ブレザーを着た女子高生が立ち塞がった。左肩にチェーンソーを担いでいる。



リオ「ヒマだったからチンピラ狩りをしようと思ってたんだが、横取りされちまったか。困るなぁ、人の狩り場を荒らされちゃあ」


女性「モモモモ……」


リオ「けど、大目に見てやる。代わりにお前を狩ることでな。その巨体に、素手で人間の体を破壊するパワー……お前、怪異だろ?」


女性「モモ……モモモ……」


リオ「名前はあるのか?」


女性「モモモ……人に名前を尋ねるときはまず自分から名乗るべき……」


リオ「喋れるのか。アタシはリオ the チェーンソー。で、お前は?」


女性「……十尺様じっしゃくさま


リオ「十尺?八尺様はっしゃくさまなら聞いたことあるが」


十尺様「……八尺は……恵まれたフィジカルがあるのに……それを使わず……呪いの力に頼る……甘ちゃん……私はアイツよりデカいから……強い……」


リオ「お前は殴り合いに特化してるってわけか。八尺のことが気に食わないようだが、アタシはお前のほうが気に食わない」


十尺様「モモモ……」


リオ「理由はアタシのシマで無断でチンピラ狩りをしかたら……じゃねぇ。そんなことより気に食わないのは、テメーが自分のことを『十尺様』と『様』づけで呼んだことだぜ」



チェーンソーを肩から下ろし、ストラップを引いてエンジンをかけるリオ。十尺様はリオが臨戦態勢に入ったのを見て、すぐ右脇にある商業ビルの壁を殴る。ビルの頂上、6階までヒビが入り、大きな音と噴煙を立てながら崩壊した。


十尺様に負けじと、リオは自身の左横にある7階建ての商業ビルに向かってチェーンソーを一振りする。ビルの下から3分の1ほどが斜めに切れ、上3分の2が横に倒れて隣のビルに突き刺さった。

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