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番外編:リオ the チェーンソー②

右拳を振り上げながら前進し、リオに殴りかかる十尺様じっしゃくさま。リオがバックステップで回避したことで拳はコンクリートの地面に当たった。周囲20mにひびが入る。


リオはすぐさま十尺様に接近し、チェーンソーを下から上に振る。体をのけぞらせ、刃をかろうじてかわす十尺様。チェーンソーの軌道に沿って、十尺様の背後に建つ商業ビルが斜めに切断された。


2人の攻防により、繁華街のビルが次々に倒壊していく。夜の街に繰り出していた人々が逃げ惑う。


戦いながら表通りに出たリオと十尺様。リオの背後からクラクションを鳴らしながらシルバーのセダンが突っ込んできた。高くバック転をして車の追突を避けるリオ。車は十尺様に向かう。十尺様は両手の拳を振り下ろし、ボンネットを押しつぶした。運転手の男性が車から降りて逃げていく。


黒い煙を上げる車の下に両手を入れた十尺様は、ちゃぶ台のようにひっくり返す。浮き上がった車が、斬りかかろうと十尺様に接近していたリオに降りかかる。リオはチェーンソーを頭上で振り回し、宙を舞う車をバラバラに切り裂いた。


車のパーツが降り注ぐ中、正面を向き直るリオ。だが十尺様の姿がない。直後、リオの右横から衝撃が加わり、すぐ脇にある飲食店のシャッターに激突した。リオの注意が車に向いていた隙に十尺様は右側の死角に回り込んでいたのだ。



笑っているかのように「モモモモモ」と繰り返す十尺様。その左腕がひじの辺りからズルリと切れ、そでと一緒に地面に落ちた。



十尺様「モ?」



よろめきながら立ち上がるリオ。チェーンソーの刃を十尺様に向ける。



リオ「殴り飛ばされる瞬間、カウンターを入れさせれもらったぜぇ。切れた腕じゃ、100%のパワーは発揮できなかったようだな。軽いパンチだ」



十尺様は落ちた左腕を右手で拾い上げると、切断面を合わせる。右手を離すと傷口が治り、左腕がつながった。切れた袖も元に戻る。



十尺様「モモモモモ……ムダムダ」


リオ「その程度、傷のうちには入らねぇってわけか。ならよぉ!」



リオは左斜め前方に立っている街灯の根元をチェーンソーで切りつけた。十尺様に目がけて倒れる街灯。十尺様は治ったばかりの左腕で街灯を払いのけた。



リオ「これならどうよ!」



音もなく十尺様の背後に回り込んだリオ。チェーンソーを十尺様の背中から腹部へと貫通させる。そして思い切り刃を振り上げ、腹部から頭までを両断した。


半分に割れた十尺様の上半身。だが下半身だけが動き、リオに右足で回し蹴りを見舞う。チェーンソーでガードするも、リオの体は道に沿って50mほど飛ばされた。


リオが着地し、体勢を整える。その間に、両断された十尺様の胴体と特攻服はつながり、再生していた。



リオ「……怪異の体の仕組みはよくわからねぇけどよぉ、生物の細胞分裂みてぇに傷が治っちまうようだな。しかも超高速で……」


十尺様「モモモモモモモモモ……ムダムダムダムダ」


リオ「戦いが長引けばこっちが不利……だったら次の攻撃に全てを賭けるぜぇ」



リオは左足を前に出して体の後ろにチェーンソーを構え、十尺様のほうへ走り出した。回転するチェーンソーの刃と地面のコンクリートが擦れて火花を散らす。



十尺様「モモモモモモモモモモモ」



十尺様は両手を広げた。リオの攻撃を受けきるつもりである。


十尺様との距離を一気に詰め、チェーンソーを振り上げるリオ。しかし刃は十尺様の手前で空を切った。



十尺様「モモモモモ……当たってない、当たってないよ」


リオ「いや、これでいいんだぜ。アタシは間違いなくテメーに攻撃したんだぜ」



チェーンソーの刃の軌道をなぞるように火花が飛び散り、十尺様の体にかかる。白い特攻服が燃え上がった。炎は瞬く間に十尺様の全身を包む。



十尺様「モモモモモモ?」


リオ「テメーが細胞分裂して再生してるならよぉ、細胞を燃やして壊死させちまえば、もう再生できねぇよなぁ?」


十尺様「モモモモモモモモモモモ!?」



地面を転がる十尺様。しかし炎の勢いは収まらない。やがて全身が燃え尽き、巨大な炭の塊になった。リオはチェーンソーで炭化した十尺様を切り刻む。ボロボロと崩れた十尺様の体は、再生することはなかった。


チェーンソーのエンジンを切り、左肩に担ぐリオ。



リオ「……もっとだ。もっと強い怪異と戦わなきゃ気が済まねぇぜ」



リオは歩き出し、混乱する夜の街の中へと消えていった。



<番外編:リオ the チェーンソー-完->

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