PM 5:23
学校での授業を終え、帰宅途中のツバサ。最寄り駅で電車を降り、自宅へと向かう。普段通る、
女性「
ツバサ「そうですが、何か?」
女性は左手で顔を覆い、手を離した。顔がカマキリに変貌する。
女性「明朝、
眉をひそめるツバサ。女性は続ける。
女性「急な話で不審に感じるのも無理はない。だが避難しなければポコポコ様が解放され、日本は焦土と化すだろう。キミも無事ではあるまい」
ツバサが想定していた以上に作戦は急ピッチで進行していた。万が一の事態を考えてシゲミに連絡を入れたいところだが、マンティノイドが
ツバサ「……シェルターの場所だけ教えてもらえますか?一度家に帰って準備をしたいので」
女性「必要な物資、設備はシェルター内に完備している。着の身着のままで問題ない。非戦闘員のマンティノイドの安全が確保できない限り、攻撃もできないのでね。協力してもらおう」
誤魔化すことは無理だと感じたツバサ。戦って女性を始末することも考えたが、ポコポコによる攻撃を主導しているマンティノイドの仲間である場合、軍事訓練を積んでいる可能性が高い。ツバサでは返り討ちにされてしまう。
ツバサ「……わかりました」
女性「では行こう」
女性は右手で顔を覆い、人間に戻る。そしてツバサの右横を歩いて通り抜けた。ツバサは振り返り、女性の後を追う。
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翌日 AM 9:07
怪異研究機関「
長机に横並びで用意された席に座る、5人の男性理事。彼らの正面、2mほど離れて向かい合うようにパイプ椅子に座るブレザー姿のリオ the チェーンソー。リオの足下には御用達のチェーンソーが置かれている。
理事の1人が口を開いた。
理事A「時間をとってくれて礼を言うよ、リオ the チェーンソー……ぜひキミと我々『魎』とで協力できればと考えていてね」
理事B「キミのウワサは聞いている。最近、あらゆる地に赴いては怪異を斬り殺しているとか」
リオ「まぁな」
理事C「『魎』の主な活動は怪異の捕獲と研究だが、危険な怪異はその場で駆除することもある。しかし現状では戦力不足感が否めない。そのため怪異専門の殺し屋の力を借りざるを得ない場面が多いのだ」
理事D「けれど、これまで我々の仕事を引き受けてくれていた殺し屋とのコネクションがなくなってしまってね。新たな人材を探していたところ、キミの情報が耳に入ったというわけなのだよ」
リオ「つまるところ、アンタらの仕事を手伝えと?」
理事E「そうなる。駆除したい怪異の情報をキミに渡し、キミはお得意のチェーンソーでターゲットを始末する。完了したら報酬を支払う。シンプルだろう?」
リオ「……実際に怪異殺しを始めて感じたのが、怪異を探すのにはかなりの手間がかかるということだ。アイツら、上手く身を隠してやがる。アンタらが怪異の捜索をしてくれるというのなら、悪くない話だな……いいだろう。乗るぜ」
理事A「助かるよ。互いにとって良い関係性を築いていこうじゃないか。口約束では不安が残るだろう?諸々の条件をまとめた契約書を用意している。内容を読み、サインしてくれ」
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AM 9:19
「魎」本部ビルから200mほど離れた市役所の屋上。迷彩柄の戦闘服を着た男性が7人、女性が1人。若い男性が金網越しに、双眼鏡で本部ビルを覗く。
若い男性「職員たち、頑張って仕事してますねぇ。このあと殺されるとも知らずに。死ぬ直前まで仕事だなんて、俺は絶対に
若い男性の隣に立つ、リュウジと呼ばれた40歳前後の男性が答える。
リュウジ「俺たちは兵士。死ぬならば仕事をしている最中であるべきだ。お前も兵士なら、死ぬ覚悟をもって仕事に臨め、ケンヤ」
ケンヤ「うわぁ真面目っすね。さすがリュウジさん。我らがリーダー」
リュウジ「だが俺たちが死ぬのは今日ではない」
ケンヤ「かっけー」
リュウジ「イリナ、攫い屋からの情報を改めて整理し、読み上げろ」
イリナと呼ばれた女性はスマートフォンを右手に、口を開く。
イリナ「『魎』本部にはおよそ800名の職員が在籍。そのうち、重装備をしている特殊部隊『
リュウジ「全員、頭に叩き込んでおけ」
ケンジ他6人の男性が「はっ」と返事をする。
ケンジ「でもやることってそんなに複雑じゃないっすよね?」
リュウジ「ああ。『魎』の職員を残らず殺し、ポコポコ様を解放する。それだけだ」
ケンジ「了解っすー」
8人が一斉に両腕の
リュウジ「攻撃開始だ」