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攻撃開始②

AM 9:25

怪異研究機関「りょう」本部 1階 受付ロビー

入口のガラス扉を突き破り、戦闘服を着た8体のマンティノイドが侵入。ロビーにいた受付係や警備員、その他職員を、鋭く尖った両腕で次々に切り刻む。


30秒足らずで1階を制圧。そしてマンティノイドのリーダー・リュウジが大声で仲間たちに指示を出す。



リュウジ「ケンヤとイリナは俺と地下へ向かい、ポコポコ様を救出する。残りは上階へ行き陽動だ。見つけた職員は全て殺し、増援を上階へ集めろ。皆殺しにしたら地下に来い」



マンティノイドたちはロビーの奥にある階段で二手に分かれた。



−−−−−−−−−−



「魎」本部ビル 20階 役員室

パイプ椅子に座り、バインダーに貼りつけられた契約書にボールペンでサインをするリオ。書き終わったと同時に、役員室にけたたましいサイレン音と、『侵入者あり。研究員、調査員は避難。百鬼ひゃっきは迎撃準備』という女性のアナウンスが流れた。



リオ「あぁん?」



男性理事の1人がスマートフォンをスピーカー設定にして電話をかける。



理事A「何があった?」



スマートフォンから銃声と慌てる男性の声が響いた。



男性「何者かに攻撃されています!カマキリの頭をした……う、うわぁぁぁっ!」



男性の叫び声を最後に通話が切れる。



理事A「緊急事態のようだ」


理事B「何者だ?」


理事A「わからん。とにかく我々も避難を」


リオ「あのさぁ、その侵入者、アタシが殺してやろうか?」



リオはパイプ椅子から立ち上がり、理事たちの机に契約書を置く。



リオ「もう契約済みなんだから、アタシが動いても問題ないだろ?」


理事C「たしかに……」


理事D「……頼めるか?」



リオはパイプ椅子に戻り、床に置いていたチェーンソーを拾い上げる。



リオ「カマキリの頭をしたヤツって言ってたな?」


理事A「ああ。今のところわかっていることはそれだけだ」



チェーンソーのストラップを引っ張り、エンジンを掛けるリオ。



リオ「害虫駆除だぜ」



−−−−−−−−−−



「魎」本部ビル 地下30階 監視室

警報を聞き、理事の1人である駒野こまのと白衣を着た男性研究員4人が動揺する。



研究員「駒野さん、ポコポコを支部へ移送しますか?」


駒野「いや、私たちだけでは手が足りん。迂闊にポコポコを動かせば本部がさらに危険にさらされるだろう。それに侵入者がいたとしても、ここのセキュリティを突破できるとは思えん……が、万が一の事態を想定すると……」



監視室の入口扉が外から切断される。マンティノイドのリュウジ、ケンヤ、イリナが入ってきた。



研究員「何だ貴様らは!?」


リュウジ「邪魔するよ」


駒野「カマキリ……人間……?」



ケンヤとイリナは、立ち上がって懐から拳銃を取り出そうとした4人の研究員の首をね飛ばす。研究員たちの首元から彼岸花が咲くかのように血が噴き出し、監視室内を真っ赤に染めた。


ケンヤが、血が飛び散った監視室のマジックミラーを指さす。



ケンヤ「リュウジさん、いましたよポコポコ様。隣の部屋で拘束されてるっぽいっすね」


リュウジ「よし。ポコポコ様とは俺が話す。イリナ、ポコポコ様がいる部屋のドアを開けられるか?」


イリナ「やってみます」



パソコンの前に置かれた椅子に腰掛け、操作するイリナ。


部屋の奥で頭を抑えてうずくまる駒野にリュウジが近づく。駒野は降参の意を込めて、両手を頭の上に挙げた。



駒野「私は武器を持っていない!反抗する気もない!だから見逃してく」



リュウジは右足で、命乞いをする駒野の頭を踏み潰した。トマトのようにぐちゃぐちゃになった駒野の頭から、大量の血が流れ出る。



ケンヤ「あらー、容赦ないっすね、リュウジさん。丸腰のおっさん相手だってのに」


リュウジ「たとえ戦闘能力のない者だとしても、復讐という感情を持たれるのは厄介だ。戦場で非武装の民間人を見逃した結果、報復された兵士を俺は大勢知っている。0.1%でも危険性があるなら即排除。それが俺のやり方だ」


ケンヤ「マジかっけー」


イリナ「扉、開きました」



−−−−−−−−−−



「魎」本部ビル 地下30階 ポコポコ隔離室

真っ白な部屋の中央、床に設置された電気椅子に縛られうなだれるポコポコの鼓膜を、足音が揺らした。音のする方向へゆっくりと顔を向けるポコポコ。リュウジが隔離室に入り、ポコポコと対面する。



ポコポコ「……誰や?」


リュウジ「私はアナタに忠誠を誓う怪異です。ポコポコ様、お迎えに上がりました。ぜひ我々マンティノイドとともに人類を滅ぼしていただきたい。まずはこの『魎』という組織の破壊から」


ポコポコ「……突然けったいな提案やなぁ。人類を滅ぼすなんて、スケールがデカ過ぎる。ちょっと考えさせてくれ。せやけど、この拘束を解いてくれたら『魎』の破壊には協力するで。俺、コイツらにはかなり腹が立っててん」



リュウジはポコポコに近づき、尖った腕で、ポコポコの体を縛り付けている電気椅子のベルトを切り裂いた。立ち上がり、首を左右に倒すポコポコ。



ポコポコ「体動かすの、何週間ぶりやろ。かなりなまっとるわ。それに邪気が足りてへんし、傷も全然治ってへん」


リュウジ「ご無理をなさらず。私の部下がすでにこのビルを制圧中ですので、ポコポコ様の力がなくてもじきに」


ポコポコ「気ぃ遣わんでええで。この施設、俺みたいに捕まっとる怪異がぎょうさんおるみたいやわ。上の階から邪気を感じる。ソイツらを食って邪気を補給すれば、ほぼ完全に回復できそうや」


リュウジ「そうですか。では早速」


ポコポコ「待った。ここのどこかに俺の友達がおるはずやねん。サツキちゃんっていう人間の女の子と、人面犬の樹騎矢じゅきや。ソイツらには手を出さんよう注意してくれ」


リュウジ「わかりました。部下に伝達しておきます」

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