「――思えば、私は最初から道を間違えていた。あの子たちを育てることは別に何ということではないけれど。結局は汚れた金であの子たちを育てていた。自分の欲求のままに。情けないわ……本当に」
すすり泣く富士宮のもとに駆け寄り、力強く抱きしめるエヴァ。多くのことを他社のために諦めてきた不幸のそこにいる女を、見捨てることは出来なかった。たとえ敵であったとしても、かける情くらいはあった。
「――争いがなくなれば、それは抱いてもいい幻想。それを叶える術が……現状人類がいなくなること、という部分はさておき。足を洗うのに、早いも遅いもありませんよ」
彼女が犯した罪は、まだ『教会』未信仰時代の夫を殺害した一件のみ。しかも罪の意識があるのなら、外に出られるのもそこまで遠い未来ではない。
「……本当、もう少し早く貴女のような存在に出会っていれば。恋に落ちていたかもしれないわね……歪みなどは残るけれど……あの子たちを見捨てるなんてことはしないけど……残された人生の内――――欲に正直に、少しくらいまっとうな人生を歩んでみたいわ」
「――しっかり服役して、
そのエヴァの慈しみがこもった言葉に、我慢することなく大粒の涙を流し始める富士宮。彼女の心の闇を、少しでも晴らすことが出来た自覚が芽生えたエヴァもまた、静かに涙を流すのだった。
これにより「『教会』埼玉支部兼壇之浦銀行次長、ストリップ劇場『竜宮城』オーナー」富士宮えりと、「『武器の匠』兼英雄学園東京本校武器科二年一組所属」エヴァ・クリストフの戦いは、戦闘要員ではない富士宮がエヴァを無力化に動くも、彼女の内に秘められた、歪んだ優しさがほつれとなり、彼女が抱えた優しさゆえの闇を晴らした、エヴァの勝利となった。