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第百十六話

『生徒諸君、大勢の君たちにとってちょっと久しぶりな不破学園長だよー!』

 殺伐とした空気感をぶち壊す、能天気な学園長の声。虚偽の情報に踊らされているタッグたちをはじめ、礼安・信玄タッグをはじめとしたそれぞれの年次の最強格は静かに耳を傾けるのみであった。礼安だけは例外で、「パパ!」と飼い主が帰ってきたときの、甘えん坊の子犬のような、英雄らしからぬ反応をしていたが。

『君たち、さっきウチの娘と信玄君が特別ゲスト、だなんて虚偽の情報に……まさか、まさか踊らされていないよねえ?? 踊らされていなかった生徒諸君にはあとで学園長から直々に、学内通貨のお小遣いがありますので、そのつもりで……虚偽申告は絶ッ対に許さないよ~??』

 教師陣から「ふざけ始めたな」と言いたげな視線が突き刺さってきたため、肩をすくめながら反省しつつ、高らかに『第二ラウンド』を宣言する。

『まあまあ場が混乱してきたし、とっ散らかってきたし! そして面子も用意していた仮想敵も少なくなっちゃったので……予定よりちょっぴり早い気がするけど、第二ラウンド――――『タッグ対抗戦』を行いまーす!!』


 タッグ対抗戦。ルールは以下の通り。

 〇英雄&武器サイド、『教会』サイドに分かれポイント争奪戦を行う。

 〇最長二週間の試合ゲームを翌日より行う。予備日として今日と二週間後の一日が当てられる。予備日は休息や修行等に使って良し。

 〇そのチーム内に双方存在する、『大将』格をどちらか先に戦闘不能にさせれば、問答無用でそのチームの勝利。

 〇戦闘不能以外にも、デバイスの破壊もポイントの移行対象となる。一方のデバイスが破壊された時点でポイントは移行される。

 〇なお、その場合破壊された人物はその後戦闘に参加できない。一方がリタイアの場合は双方戦闘資格を失う。

 〇同士討ちは絶対に禁止する。即刻ルール違反とし、学園長直々に『罰』を執行。

 〇仮に『大将』格が陥落せず、勝負が長引いたらその時点でポイント獲得量が多いチームの勝利。

 〇英雄&武器サイドが勝利した際、そのチーム内で最もポイントが多いチームに褒賞を与える。逆もしかり。

 〇複数タッグで協力し、敵タッグや『大将』格を陥落させた場合、タッグ同士でポイントが均等分割される。

 〇フィールドは相変わらず東京二十三区を模した屋内実習場。それ以外は認めない。

 〇タッグ同士、離れて移動することは可能。

 〇試合は翌日から開始。午前九時から午後七時までの時間、最長二週間行う。夜襲は禁止。

 〇逐次、バランス調整のためにルール追加する可能性あり。


『そしてそれぞれの総大将は、こちらで既に決めさせてもらったよ! デバイスに連絡が行くか、仮想伝書鳩が飛んで行って伝達されるからね!』

 大将格は、そのタッグメンバーしか知らないことになる。故に、裏切ろうと画策する者も迂闊に動けない、そんな状況をチーム内にも生みだすことのできる、それぞれが監視役となれる体制となるのだ。

 そして、それぞれの大将となる存在は。

「――まあ、当然だろうな」

 教会サイド、瓜二つの男。傍にいた屈強な男は、静かに笑むばかり。

「茨城支部の支部長が総大将、な。まあ妥当だろうなあ」

「問題は、あちら側の総大将が誰か、ということになる。――早々に終わってはつまらないからな」

「逆に思考するならよ、大将がバカ凸しまくる、なんて無謀犯すわけないから……攻めていない奴こそ総大将、って考え方は出来ねえのかい?」

 瓜二つの男は、「どうだろうな」と漏らしていた。

 一年次、二年次それぞれ。最強格と称される六人の誰かに割り振られるのは大いに分かるだろう。しかし、その中で最も強い存在に割り振られたとしたら。それが誰なのかは六分の一。流石に事前情報が足りない中特攻するにはリスキー。

「――あくまでも予想だが。ここの学園長は実にエンターテイナーな面を持つ。そう言ったことを考えれば……炙り出せそうな気はするが」

 だが、現状だと判断するうえでの証拠が足りない。どうも分からないままのため、試合開始のタイミングを待つのみであった。


 所変わって、英雄サイド。

 ある意味、「学園長はエンターテイナ―気質がある」という発言その通りとなった。

「……森ししょー、私……『総大将』に任命されちゃった」

 礼安に対し、総大将のジョブを割り振ったのだった。


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