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201.閑話・ある兎たちの受難:Re

 我輩は兎である。名前はもう諦めた。

 我輩の種族はジャッカロープなのである。普通はビッグホーンラビットとかアルミラージとかなのに、我輩はジャッカロープに進化したのである。

 後輩にヴォーパルバニーから進化したヴォーパルキラーがいるのである。もう一体いたのであるが、そいつはレギオンに食べられていなくなった。南無南無。


「きゅきゅう、きゅきゅっきゅ(日に日に序列が低くなってるのだ)」

「ふんす(とんでもないやつが入ってきたんだから当然だろう)」

「きゅきゅきゅう!(今度こそ下克上してやるのだ!)」

「ふんす(敵うわけないのである)」


 そして、この後輩は飽きること無く下克上を企んでいるのだ。契約で縛られてるから無意味だし、あの恐ろしい存在に勝てるはず無いのである。


 ラーネはぼーっとしてるけど、弱いわけじゃないのだ。植物のくせに我輩を噛み砕けるような大きな口と牙を持っているのである。おやつと称して召喚した虫をボリボリ噛み砕いて食べているのである。

 ナーイアスとイルメェイは根本的に我輩らより格が違うのである。しかもイルメェイは、「セナー、これ非常食?」なんて言ってたのである。我輩たちのことを非常食としか見てないのである。怖いのである。たまに寝言で兎肉とか呟いてるからなお怖いのだ。


 我輩が一番の先輩なのに、後輩から舐められて悔しいのである。訂正、悔しくないのだ。反骨心なんて持ってたらもっと酷い目に遭わされるのである。


「…………」


 だが今も昔も、一番怖いのはレギオンなのだ。

 前は二体だったのに、恐ろしいドラゴンの住む山を離れたあと、いつの間にか三体に増えていたのである。

 腕が四本もあるこのレギオンが一番恐ろしいのである。


 こいつだけ何を考えてるか分からないのである。表情も変わらないし、気まぐれで掴んだり握ったりするのは勘弁してほしいのだ。我輩の角が折れてしまうのである。


「きゅっ!?(うわああああ!?)」


 嗚呼、また可愛がりが始まったのだ。憐れである。せめて足を引っ張ったりぶんぶん振り回すのはやめてあげてほしいのだ。


「憐れなり」


 ナーイアスよ……そう思うなら止めて欲しいのである。あ、こっちは仲間じゃないほうのナーイアスだったのである。こっちは表面上は穏やかなのにどことなく殺伐としてるのだ。


「……飽きた。マスター、構って」


 あ、ヴォーパルキラーが投げ捨てられたのである。捨てられた先が泉で良かったのである。

 いや全然良くないのである。我輩らは先輩なのだからもっと丁重に扱うべきなのだ。でも言ったところで「生意気」とか言われるに違いないのである。


「きゅ、きゅ……きゅきゅう……(覚えてろ……いつか絶対下克上してやるからな……)」

「ふんす(地面の染みにならなかっただけマシなのだ)」

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